プレス技術 連載「キラリ光る!塑性加工分野のモノづくり力」
2026.10.19
第24回 AM で形成した突起を活用した新しい異種金属接合技術─大阪産業技術研究所
プレス・鍛造加工で独自・個性的な技術を駆使してモノづくりに挑む企業、各種研究・開発団体をレポートする。(『プレス技術』編集部)
大阪産業技術研究所(大阪府和泉市)の田中努・金属材料研究部微細構造評価研究室長らは、付加製造(AM: Additive Manufacturing)した突起(凹凸)のアンカー効果を活用した新しい異種金属の接合技術を開発した。
温暖化対策や脱炭素社会の実現に向けて自動車などの輸送機器では構造体の軽量化が求められている。それに対して高張力鋼板のプレス加工や超大型のアルミダイカスト(ギガキャスト)など先進的な加工技術が開発され、また、異なる材料を適材適所に用いるマルチマテリアル化も徐々に進められている。田中室長が開発した接合技術は、異種金属同士もしくは金属と樹脂などの異種材料などさまざまなマルチマテリアルをつくりだす技術だ。
さまざまな突起の形状をつくれる
「摩擦撹拌接合法(FSW:Friction Stir Welding)で嵌合的に接合する研究ではすでにいくつかの論文がありますが、嵌合させる箇所の形状についての研究はあまり見かけませんでした」(田中室長)
これまでに溝(嵌合部)を機械加工で設けてFSW で異種金属同士を接合する技術は研究されていたが、機械加工では嵌合部の形状に限度があり、嵌合部の形状とそれによる結合の強さについての研究と論文も見当たらなかった。そこでそれに着目して田中室長は研究を進め、嵌合部の突起を付加製造するアイデアを考案した。従来の突起は切削などの機械加工で形成していたため、出来上がる形状などに限度があった。それに対して付加製造はさまざまな形状の突起をつくりやすい。そのメリットに着目した。
異種金属の接合の強さ
AM で造形した突起(嵌合部)を活用したFSW の異種金属接合は図1(a)のように、鋼(SS400 など炭素鋼)の表面にマルエージング鋼の複数の突起を粉末床溶融結合法(PBF:Powder Bed Fusion)で付加製造する〔図1(b)。図中のd1 は突起の根元の直径、θは傾斜角度、P は突起の中心間の距離〕。そして、突起面とアルミ合金板(A5052)を突き合わせ、FSW のツールプローブを突起に接触しない位置に挿入してFSW することで、付加製造した突起の間にアルミ合金を隙間なく流入させる(図2)。この鋼の突起間にアルミ合金を充填させることによるアンカー効果で高品位な接合ができるのである。
図1 付加製造で鋼の表面に形成した突起(a)と突起形状の模式図(b)(画像提供:大阪産業技術研究所)
図2 接合材の外観と接合の模式図、接合界面の電子顕微鏡写真(画像提供:大阪産業技術研究所)
また、鋼+アルミ合金のFSW の接合では、突起表面にめっき(ニッケル、銀)を施すと接合強度を1.5 倍高められる。実験では、突起の表面にそれぞれニッケルめっき、銀めっきを施してからFSW で接合した結果、図3 のような効果が得られた。突起の根元の直径を同一にして傾斜角を45°、70°、80°の3 パターンで実験した結果、3パターンともめっきした突起の強度はめっきなしよりも高かった。
図3 各突起の形状と各めっき処理による接合強度(画像提供:大阪産業技術研究所)
これは、ニッケルめっきの場合はニッケルとアルミとの間で材質的な反応が促進され、銀めっきの場合はFSW 時の熱とアルミの塑性流動により銀が鉄素地から分離・分散することで鉄とアルミとの間で材質的な反応が促進されたことにより、結合の強さを高めたという(図4)。
図4 突起の表面にニッケルめっきした後にFSWした接合面(a)と銀めっき後にFSW した接合面(b)(画像提供:大阪産業技術研究所)
多様な材料・工法の可能性
田中室長が開発した異種金属接合技術は、鋼に突起を設け、それに基づくアンカー効果を活用して異種材を固相接合させる技術だ。突起の最適な形状や配置についてのシミュレーションと実験の一例として、鉄鋼とアルミ合金(A5052)を突き合わせてFSW で接合した場合、高さ1mm の逆円錐台形状の突起では、根元部が1.1mm 以上、傾斜角70°、突起同士の中心間の距離は1.5mmで引張応力が最大になる傾向を明らかにした。
開発した接合技術では、注目度の高い鋼とアルミ合金の異種金属を対象としたが、金属同士ばかりでなく金属と樹脂の異種材料も接着剤などを用いずに高品位に接合できる。実際、田中室長も炭素繊維強化樹脂(CFRP)やエンジニアリングプラスチック(PPS、PPT など)でも鋼と接合する実験を進め、従来技術よりも高強度の接合材を作製できているという。今後の実用化を想定すると金属と樹脂のマルチマテリアル化は不可欠であり、潜在需要も大きいと予測されるからである。
さらに、材料の突起のアンカー効果を活用して異種材を接合する独自技術は、金属、樹脂、セラミックスなど多様な材料へ応用できる。また、接合させる工法もFSW だけでなく、プレス加工や鋳造などほかの技術も活用できるという。
材料の突起のアンカー効果を活用し、それを付加製造で成形するという新しい接合技術は、マルチマテリア化へ向けて材料と工法の両面でその可能性を高めていけるようだ。