航空宇宙や医療、エネルギー、自動車など多様な分野で活用が進む金属3D プリンタ。従来工法では難しかった形状や機能の付与、部品の一体化などが可能だが、国内では冷却水管内蔵金型の製造といったごく限られた用途でしか普及していないのが現状だ。そうした中、オリックス・レンテック(東京都品川区)は金属3D プリンタが抱える「量産には使えない」、「コストが高い」などのイメージを払拭するため、中国・ Xi’an Bright LaserTechnologies(以下、BLT)の金属3D プリンタや同機による造形サービスを訴求している。
年間数百万個の量産も可能に
BLT は金属3D プリンタや材料、ソフトウェアなどAM(金属積層造形)関連製品を製造・販売するほか、造形サービス、導入支援サービスを展開する。オリックス・レンテックでは2023 年6 月にBLT 製品の販売・レンタルを開始。3D プリンタ体験拠点「Tokyo 3D Lab.」(東京都町田市)にBLT の「S320」(図1、パウダーベッド方式、最大造形サイズ250×250×400mm)1 台を導入し、操作方法のトレーニングや造形ノウハウの提供も行っている。
図 1 中国BLT の金属3D プリンタ「S320」
オリックス・レンテックの袴田友昭3D プリンター事業推進チームリーダーは、「従来の金属3Dプリンタが抱えていた、いろいろな困りごとを解決できるところにBLT の強みがある」と話す。その1 つが量産体制だ。BLT は社内で550 台の金属3D プリンタを保有し、量産や試作を請け負っている。「これまで金属3D プリンタでは無理だと思われていた、民生品の量産に対応できる」(袴田氏)といい、実際に圧力なべのノズルや折りたたみスマートフォンのヒンジなどで、年間数百万個の量産に対応しているという。
コストも魅力だ。装置自体が安くランニングコストも低いため、新規で金型を製作するより部品1 個当たりの費用を抑えられるケースが出てきた。先述のノズルの造形コストは1 個約300 円。さらに縦1,500×横1,500×高さ1,500mm や縦800×横800×高さ2,500mm の大型造形が可能で、対応できる部品の種類が広がりつつある。BLT はエアバスの認定を受けた部品サプライヤーであり、複数部品を1 度に造形する際のばらつきを最大±0.05mm に抑えられるなど、金属3D プリンタの使い方にも精通する(図2)。品質とコストを両立したことで、オリックス・レンテックを通じて、日本の顧客がBLT に量産・試作を依頼する例が出始めている。
オリックス・レンテックは2015 年から金属3Dプリンタ関連の事業をスタート。造形サービスや装置販売に加え、導入支援に力を入れている。Tokyo 3D Lab. にはBLT のほか独・EOS の金属3D プリンタを設置。専任の技術者の助言を受け、ユーザー自ら持ち込んだ粉末材料を使って造形し、それぞれの性能を比べることが可能だ。造形時の作業環境や安全対策についても学ぶことができる。