せんごく けいいち:同研究所 代表社員。日産自動車にて物流IEとして新工場・新ラインの物流設計業務、その他輸送や構内物流、荷姿の効率化に携わる
下請け物流からの脱却
多くの工場で、工場内物流の仕事の仕方が“受け身”になっていると感じる。生産工程から部品を持ってきてほしいといわれれば、そのとおりに部品を届ける。製品が完成したので回収してほしいといわれれば、すぐに製品を取りに行く。これを下請け物流という。それの何が悪いのか、という声が聞こえてきそうだ。この意見に対して、以下の点を指摘したい。
1 つは、前回も書かせていただいたが、生産工程が生産計画に則った仕事の仕方をしていない可能性があることだ。仮に生産計画と異なる製品を生産するために部品を要求したとして、物流がそれに気づかずにいわれたとおりに部品供給することは望ましくない。いわれたとおりに部品供給するということは、その仕事が正しいのか否かの判断をしていない、思考停止状態のまま動いているということだからだ。
もう1 つは、工場内物流自体の生産性への影響だ。物流作業者はある工程から呼ばれたらその工程に行って要求を聞き、物流エリアに部品を取りに行く。当工程にそれを届けたら次に工場の真反対にある工程に要求を聞きに行き、同じ動作を繰り返す。このパターンで仕事をしていると、物流生産性はまったく向上しない。ムダな移動が多すぎるからだ。工場内物流が効率的に仕事をこなすためには、一定のリズムを持つことが重要である。たとえば、ダイヤ供給(回収)だ(図1)。工程に行くタイミングはバスの停留所のようにダイヤを決めておく。そしてそれに従って動くのだ。
工場内物流はこのようにもっと主体的に動きたい。受け身的な仕事の仕方からの脱却を目指そう。
生産管理機能を持つ工場内物流
工場内物流の機能を定義するとしたら。皆さんだったらどのように定義するだろうか。「運搬機能」それとも「保管機能」と考えるだろうか。ここで、工場における物流の機能を定義しておこう。それはズバリ「生産管理」だ。これを聞くと意外だと感じる人もいることだろう。なぜなら物流=運搬とか、物流=保管といったイメージが強すぎるから。
では、なぜ物流が生産管理なのかについて解説していこう。工場では生産計画を生産管理部署が立案し、それを製造現場に展開する。その計画をもとに生産工程はものづくりを実施する。では、その計画どおりの実行を誰が統制しているだろうか。生産管理スタッフが随時現場にきて進捗確認をすることは稀かもしれない。原則として、生産計画提示後の運営は生産現場が自律的に実行している。これはある意味望ましい姿だ。しかし、必ずしも計画に忠実に動いている現場ばかりとは限らない。一例を示そう。
ある工程でX という製品を生産しているとする。当工程ではX 以外にも複数製品を機械を切り替えながら生産している。生産管理部署からは各製品ごとに日々出荷する分だけの生産指示がかかっている。それは在庫を適正化するためだ。一方、生産現場の担当者は機械の切り替えを億劫がって2日分あるいは3 日分をまとめ生産し、その在庫の中から出荷しているケースがある。これでは生産管理部署が目指す適正在庫とはならない。このようなまとめ生産を生産管理スタッフが気づいていない可能性もある。
このような事象を避けるために、工場内物流が部品供給を通して計画を遵守させる方法を考えよう(図2)。ここまで書くと皆さんも想像がつくと思う。そう、物流はその日の計画分に相当する数の部品だけを供給する。生産計画上の生産開始のギリギリ前に。同時に、完成品を入れる容器も必要数分だけ供給する。これで生産担当者の勝手生産を防ぐことができる。製品も生産終了計画時刻の少し後に回収に行く。この動きを繰り返すことで、正しい生産統制が実行される。まさに物流を通した生産管理の実現だ。
顕在化されていない物流ロスをなくす
上記のような動きを物流ができれば、物流上の見えにくいロスも解消できる可能性がある。1 つは、勝手生産による容器不足と保管場所不足の解消だ。勝手生産の結果、本来計画どおりの生産であれば足りていた容器が不足することがある。不足すると原則として物流が臨時荷姿を作成し、出荷時に正規荷姿に入れ替えるという作業を実施している。多くの工場管理者が気づいていないであろうロスが発生しているのだ。
もう1 つが、計画以上の在庫が発生することによる保管場所の不足だ。置き場所が不足すると、物流担当者は 工場内を駆け回りスペースを探す。正規の保管場所でない場所に一時保管することになるので、そこまでの運搬と正規置き場への戻し運搬という不要なロスが発生する。これも工場管理者が気づくことなく何とか物流がやってしまうので、顕在化されることは少ない。
このようなロスはものづくりの結果のみならず、購買部署による不要な部品などの調達の結果発生する在庫でも起きている現象だ。目立たないかもしれないが、確実に工場の生産性を低下させるロスは生産管理機能を持たせた物流で解消していきたいものだ。
今回のまとめ
①多くの工場で工場内物流の仕事の仕方が“受け身”になっていると感じる。その結果発生する悪さを、物流が主体的に動くことで解消していこう
②工場内物流の機能は「生産管理」だ。供給作業と回収作業を生産計画どおりに実行することで、秩序あるものづくりに貢献しよう
③工場内には物流が気を利かせて動くことで顕在化されないロスが発生している。物流の仕事の仕方を変えることで、これらのロスの撲滅を図ろう