カシキ(大阪府柏原市、072-972-3301)は、旋回ベアリングの設計、製造、販売を手がけている。サイズは内径φ50 mm~外径φ3000 mm超、歯車は内歯・外歯・歯なしの3 タイプに対応する。少数のオーダーから受け付け、顧客の要望に合わせた条件で設計・製造できる体制が強みだ。納入先は建設・土木機械、産業用ロボット、半導体製造関連機器、設備機器、医療機器、娯楽施設関連など幅広い。旋回ベアリングの利点を訴求し、顧客層のさらなる拡大に力を注いでいる。
特徴を活かして多様な製品に採用される旋回ベアリング
旋回ベアリング(旋回軸受、旋回座などとも呼ぶ)は、主に大型の旋回構造を持つ機械の旋回部分を支えるベアリングとして用いられる。同社は1946 年に創業し、1970年代に光洋精工(現・ジェイテクト)の協力工場として旋回ベアリングに携わって以来、50年以上にわたり旋回ベアリングの設計・製造・販売を行っている。
1980年代からは自社ブランドを強化するとともに、同業他社の事業を引き継いだり、統合したりして、対応品目や顧客層を広げてきた。「量産ではなく、個別の用途に応じた受注生産を行うことで他社との差別化を図っている。特殊な形状や大型寸法などでも1個から受け付けているので、多様な業種の製品に納入実績があり、近年はベンチャー企業からの依頼もある」と西忠夫社長(写真1)は語る。
写真1 (左)営業・設計担当の西紘平氏、(中央)西忠夫社長、(右)製造技術部品質保証課の西勇哉課長
同社が手がける旋回ベアリングの形式は単列ボールタイプの4 点接触アンギュラスラスト玉軸受で、大きくは外輪、内輪と単列に配列された鋼球(転動体)で構成されている(図1)。特徴は1つのベアリングで、アキシアル(スラスト)荷重、ラジアル荷重およびモーメントなどの合成荷重を受けられること、外輪または内輪のいずれかに直接歯車の加工を施しているので、旋回部の構造を簡素化できることだ。それらは部品点数・管理の削減、設計自由度の向上につながる。また、外径φ3000 mm超の大型サイズまで対応しているため、より大きな負荷に対しても、低トルクで旋回運動を得ることができる(写真2、写真3)。
写真2 (左)大型外歯 KSO-2830(外径φ3276 mm)、(右)大型内歯 KSI-1984
外輪・内輪には一般的に機械構造用炭素鋼鋼材(S48C)を使用しているが、大型サイズや使用条件によっては、より強靱な機械構造用合金鋼鋼材(SCM440)を使用している。内外輪の軌道面には重荷重に耐えられるように高周波焼入れ後、精密加工を行い、十分な強度、耐摩耗性および優れた回転精度を持たせているという。外輪および内輪にはベアリング取付け用の通し穴またはタップ穴が加工されているので、ベアリングの組付け、取外しが容易といった利点もある。
旋回ベアリングは規格化されていないため、内歯・外歯・歯なしの3 タイプいずれも、目安としての型式・参考寸法表は用意しているが、多くの場合、顧客の設計や仕様に合う製品を設計・製造する。営業・設計担当の西紘平氏は「外径・内径の寸法や歯車諸元、取付け穴の形状など、使用条件に合わせて柔軟に変更できる。めっきや歯面へのレーザー焼入れにも対応する」と話す。同社では関連業務としてギヤ部品の加工も請け負っている。
なお、旋回ベアリングは外歯タイプが一般的で、産業機械全般に使われる。内歯タイプは外部から汚れなどが入りにくいため、建設機械に使われるケースが多いという。
旋回ベアリングのユーザーをトータルサポート
「困っている顧客を大事にする」という方針を掲げている同社。西忠夫社長、西紘平氏ともに営業と設計を兼務しているので、顧客の要望を聞き出し、より適した製品をすばやく提案することが可能だ。「過去には液晶工場の生産設備で、旋回ベアリングを使った構造に変更することでトラブルを大幅に削減した実績もある」と西忠夫社長は話す。ほかにも、古い機械や設備に使われている他社製の旋回ベアリングの修理、オーバーホールや交換用品(代替品・相当品)の製作も請け負うことで、旋回ベアリング全般に関して顧客をサポートしている。
一方で、西紘平氏は「機械要素部品として旋回ベアリングの存在を知らない設計者が多い。旋回ベアリングという言葉を知らないと検索などでも調べようがない。知名度を高めるための取組みを実施していきたい」と考えている。1 つは全国の販売代理店の営業担当者への周知徹底だ。旋回ベアリングは規格品ではないので、営業担当者からすると顧客への説明や販売をしにくい商品ではある。そこで、従来のカタログなどを見直して、わかりやすく、かつ興味を引くようなものに変更し、顧客に提案してもらえるようにする。併せて、同社ホームページ上でも旋回ベアリングについてわかりやすく紹介した情報を発信していくことで知名度向上に努めていく。
また、高品質な旋回ベアリングを提供していく中での要となる製造現場では、納期短縮や管理項目の増加への対応が課題となりつつあり、工程や品質を管理しやすくするためのIT ツールの導入も視野に入れている。
「旋回ベアリングに対する顧客からの要求が高まる中で、品質と値段に納得していただける顧客を大事にし、より良い製品を提供していきたい」と西忠夫社長は語る。