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機械設計 連載「B to B向け機械設計のポイント」

2026.03.09

第5回 設計開発者に大切な知財スキル、他社の特許に対する侵害判定

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技術力向上カウンセリングオフィス 布施 裕児

ふせ ゆうじ:代表 1989 年4 月、旭硝子(現・AGC)入社、パソコン用ハードディスク向けガラス基板の加工技術開発、営業などに従事した後、液晶用のガラスを扱う事業部に異動となり、液晶用ガラスの梱包容器/ 梱包材料の設計開発を17 年以上担当。途中、1 年半ほど知財部兼務となり、特許戦略構築、出願推進活動も経験。2023 年4 月、同社を早期退職。現在は中小企業の技術支援や組織改革支援、セミナー講師として活動中。(一社)製造業総合支援 副代表。資格:上級心理カウンセラー[(一社)日本能力開発推進協会]。

はじめに

 自社で開発を進める以上、特許問題は避けられない。そもそも、開発品が他社の特許を侵害していれば、世の中に出した瞬間に特許侵害で訴えられる可能性があり、見直しを迫られる可能性が出てくる。

 開発品の内容は設計開発者が一番詳しいので、開発品が他社特許を侵害しているか否かは設計開発者が判断する必要がある。ところが、設計開発者の中で他社特許を侵害しているか否かをしっかり判定できる人は思いのほか少ない。ついつい余計なことを考えてしまうのが原因であることが多い。例えば以下のような場合である。

 1. 同じこともやっているが、自社ではそれ以外の工夫もしている
 2. 請求項の中に書かれている内容はおおむね同じだが、1 カ所だけ異なる
 3. 請求項には該当するが、明細書記載の条件では実施していない
 4. 当たり前のことしか書かれていない。どこに特許性があるのかわからないので判断できない
 5. 請求項記載の文言があいまいで、侵害しているかどうか判断できない
 6. 請求項で用途が限定されている。自社では用途は違うが同じ技術を使っている

 少しでも似たような悩みがある方は今回の記事を読むことで悩みが解消すると思われる。

公開特許公報と特許公報

 特許は出願すると自動的に1 年半後に一般に公開される。このとき公開される特許情報を公開特許公報(あるいは単に公開特許)と呼ぶ。公開特許は出願された申請書が受理されれば自動的に公開されるもので、特許審査は行われていない。

 一方、出願人が特許審査を受けたいと申請すれば審査が行われる。特許庁が「あなたの発明は特許に値する」と認めた場合に発行されるのが特許公報である。なので、他社の特許を自分が開発している技術が侵害しているか否かを判定するには当然特許公報で確認する必要がある。

特許権の範囲(請求項、独立項/従属項)

 特許権は【特許請求の範囲】の中の請求項で文言により権利範囲が示される。図1 に、ある「吸引装置及び異物回収装置」の特許請求の範囲を示す1)。どんなに複雑な機械であっても権利として主張したい範囲は図1 に示したように請求項として、文言で記載する必要がある。また請求項にはそれだけで独立している独立項と、それよりも前の請求項をさらに限定した従属項の2種類がある。
図1 「吸引装置及び異物回収装置」の特許請求の範囲 1)

図1 「吸引装置及び異物回収装置」の特許請求の範囲 1)

 図1でいえば請求項1が独立項、請求項2と請求項3が従属項となる。従属項は図1の請求項2、請求項3 のように「請求項○○に記載の」といった文言が必ず入っている。独立項と従属項の権利範囲と自社開発品の関係のイメージを図2 に示す。従属項はそれより前の請求項をさらに限定して権利範囲を狭くするので、権利範囲は独立項が一番広く、従属項の権利範囲はそれよりも狭くなる。したがって、他社の特許権を侵害しているか否かは、独立項の広い権利範囲の内側に自社の開発品があるのか、それとも自社の開発品が独立項の権利範囲の外側にあるのかを判定することにほかならない。
図2 他社の特許権の範囲と自社開発品の関係

図2 他社の特許権の範囲と自社開発品の関係

 また、権利範囲は文言で記載されているため、自社技術が他社の権利範囲の内側にあるのか外側にあるのかについては、請求項に記載されている文言に自社の開発品が当てはまるか否かを一つひとつ確認していくことが必要になる。
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