プレス技術 連載「キラリ光る!塑性加工分野のモノづくり力」
2026.04.23
第19回 極薄材料のプレス成形技術で先進材料にも挑戦する─山田製作所
プレス・鍛造加工で独自・個性的な技術を駆使してモノづくりに挑む企業、各種研究・開発団体をレポートする。(『プレス技術』編集部)
山田製作所(愛知県刈谷市)は、ベークライト(フェノール樹脂積層板)や紙、フィルムなどの非金属と銅、アルミなどの非鉄金属をプレス成形するメーカーで、電装部品や高電圧部品などの絶縁体、モータの摺動品、センサやカメラのスペーサ、シール、パッキンなどを製造する。その用途は自動車や住宅設備、フォークリフト、燃料電池と多様だ。
取り扱う材料は、紙繊維、布繊維、ガラス繊維をそれぞれ基材とする各種ベークライトとガラスエポキシ樹脂積層板、PVC、PET 板、PC などの樹脂、PP やPET などのフィルム、POM、PAなどのエンジニアリングプラスチック、そして紙、非鉄金属、CFRP(炭素繊維強化熱硬化性樹脂)、CFRTP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)などの複合材、マイカ(雲母)、両面テープ、不織布とかなり幅広い(写真1)。そして厚みの薄い材料が圧倒的に多い。
写真1 自動車用モータの絶縁体やインバータなどの部品をベークライト、ガラスエポキシ樹脂積層板などの薄板でプレス成形する(オリジナル形状サンプル)(写真提供:山田製作所)
「基本的に事業は金型を用いたプレス成形を主体としています。また、一部トムソン型による打抜きも手がけています」(山田慎一郎社長)
プレス成形は、製品の仕様に応じて順送とて単発(総抜き)を使い分けるが、主体は順送プレスだ(写真2)。そして試作などの少量品や自動化が難しい仕様の製品はトムソン型で成形する。金型はすべて自社で設計・製造し、プレス成形で加工油を使用しないことが特徴だ。また、プレス成形以外にも一部で切削加工、ラミネート加工、切断、加飾(TOM 成形:立体形状の基材に真空を利用してフィルムを密着させる工法、写真3)も手がける。加飾では意匠や機能(防水性、耐候性、絶縁性など)などの付加価値を付与する。
写真2 薄い材料を仕様に応じて単発・順送でプレス成形する
量産に向けたアイデアは付加価値でもある
「薄い材料の成形が得意なため、量産や工法検討の初期段階の試作、また研究開発段階でお客さまに提案もしています」(山田社長)
既述のように同社が扱う材料は薄いものが多い。そのため、例えば薄材ゆえのリスクであるクラックを避けるため、穴の径や形状、位置の変更など量産を視野に入れた改善を積極的に提案する。それは量産に向けたアイデアであるとともに、同社のノウハウに基づく付加価値の提供とも言える。
顧客への提案のみならず社内の生産性を上げるためのノウハウも多々ある。例えば、プレス成形で順送と総抜きの使い分けとして、搬送時の位置ずれやたわみなどから順送が難しい材料、また、同軸度(中心軸の位置ずれ)が精密に指定されている製品などは総抜きを選択して成形する。さらに総抜きではプッシュバック方式の金型にすることで自動搬送を実現している。
材料の特性に応じた工夫も多々ある。例えば、紙基材と布基材のベークライトは成形前の加熱(200 ~ 300℃)が必要であり、その温度コントロールが肝要となるため季節によって微妙に加熱温度を変える。それによって材料を打ち抜いたとき、抜き穴にクラックが生じたり、かすが排出されず穴に詰まったりすることを防ぐ。また、紙やマイカも取扱い環境によっては吸水・乾燥してしまうため、除湿剤を用いて保管する。
材料の歩留まり向上へのアイデア
製品は主にリンクモーションプレス機で成形する。160 ~ 170spm で高速成形できるからだ。
プレス成形ではさまざまな工夫を凝らす。例えば、ガラス基材のベークライトでは、近接した穴を打ち抜いた後にクラックが入らないように穴同士の位置を製品仕様より少し離したり、一発で打ち抜かずに初回に小径の穴を抜いてから2 回目に仕様通りの穴を打ち抜くことで材料への圧力を減らしたりする。それでも打ち抜くのが難しかったり高い面粗さを求められたりする場合は、切削で穴あけ加工することもある。
さらに、フィルムを打ち抜く場合は、材料の厚み(20μm ~ 0.5mm)と材質によって刃が入る際にフィルムが動いてしまうことがある。それを防ぐため金型のストッパプレートだけでなく、金型の外側でもフィルムを固定する工夫を施している。いずれにしてもどの材料でもプレス成形では歩留まりを高くすることを基本としている。
CFRP、アモルファス合金のプレス成形に挑む
薄い材料のプレス成形を得意とする同社は、今後、付加価値が高く優位性を発揮できる製品の成形技術を積極的に開発していく。例えば、厚み0.05mm の超極薄遮光フィルムを1 ショット=0.5 秒の高速テーパ加工で断面に斜面形状を施して、カメラモジュールの遮光フィルムに反射防止機能をもたせることで、コンピュータ制御の誤動作の抑止につなげる。
また、今まで扱ってこなかった材料の成形にも積極的に取り組んでいく。実際、航空機関係の部品でCFRP(1.3mm)の高速・高精度な打抜き技術、また、アモルファス合金箔(25μm)の高速・精密な打抜き技術を開発している(写真4)。「モータコアのプレス成形に必要な整列・積層・固定のうち整列については実績があるため、今後は積層・固定の技術の取得を目指していきます」(山田社長)
写真4 板厚25μm のアモルファス合金箔の打ち抜き技術(写真提供:山田製作所)
薄板材料のプレス成形で蓄積してきた技術、ノウハウを活かし、CFRP やアモルファス合金など先進材料のプレス成形にも果敢に挑戦していくようだ。