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プレス技術 連載「EV化を再検証する」

2026.04.20

第2回 EV化の動向予測

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裾野産業アドバイザー 前川 佳徳

まえかわ よしのり:1971 年同志社大学大学院工学研究科、1996 年同大学院神学研究科修了。工学博士、神学修士。大阪府立産業技術総合研究所(現・大阪産業技術研究所)研究員、大阪産業大学デザイン工学部情報システム学科教授などを経て、2015 年よりモノづくり企業を支援するアドバイザーとして活躍。元型技術協会会長、名誉会員。
 本連載の主目的の一つが、世界の主要自動車生産国(中国、米国、日本、ドイツ)において、今から10 年後の2035 年までにEV 生産がどうなるかを予測することである。まずEV を表1 のように定義して今後の議論を進める。一般にEV =BEV + FCEV + PHEV として示すことが多いが、EV = BEV の場合もある。また、FCEV をFCV、PHEV をPHV と示す場合もある。
表1 EV の定義

表1 EV の定義

 プレス部品メーカーにとっての関心は、将来の新車生産においてすべてがバッテリー式電気自動車(BEV)、あるいは燃料電池車(FCEV)になるのかどうか、すなわち「エンジン搭載の車がなくなるのか?」ということの予測だろう。EV 化動向については、これまでに多くの予測がなされている。考慮すべき要因には、①技術課題のイノベーション状況、②ユーザーニーズの変化、③国際社会での課題、④各国政府の支援や規制などがある。

 そもそも今、EV 化を進めなければならない大きな要因が、環境問題、特に地球の温暖化対策(CO2 削減)である。今年(2025 年)は世界規模で猛暑や豪雨災害などの気候変動が大きな問題となった。温暖化対策が最も大きな問題となると、「EV 化は進めなければならない」という声が大きくなる。

 一方、欧州では2022 年2 月に始まったロシアによるウクライナ侵攻で発電エネルギーの高騰が起こり、EV 化にはマイナス要因として働いた。さらに2025 年1 月に就任したトランプ米国大統領による輸入する自動車への高関税、再生可能エネルギーやEV からの撤退宣言が、EV 化の停滞、失速に今後影響を及ぼしていくと思われる。このような背景を考慮して、EV 化動向を予測するとなると、トランプ米国大統領就任の2025 年1 月以降の状況を考察しなければならない。

 そこで、2025 年1 月以降に公開されているEV化について考察した以下の3 つの資料を紹介し、それらへの筆者の見解を述べることから始める。

 資料①:「自動車をとりまく国内外の情勢と自動車政策の方向性」、経済産業省製造産業局自動車課、2025 年3 月12 日

 資料②:「世界電気自動車(EV)市場の現状と展望 EV 化に足踏み感」、㈱丸紅経済研究所 李雪連、2025 年4 月30 日

 資料③:「EV の普及率はどのくらい?日本と世界のEV 事情を解説」、EV DAYS(東京電力)桃田健史、2025 年6 月30 日

「自動車をとりまく国内外の情勢と自動車政策の方向性」について

 同資料では、1. 自動車産業(電動化)をめぐる国際的な状況、2. 日本の脱炭素化に向けた取組みがまとめられている。

 1. の中で、主要国の自動車電動化等の目標が表2 のように紹介されている。これからわかるのは2035 年以降の新車販売でエンジン搭載車を排除する目標が多いことである。一方、EU や米国で目標の後退が始まっていることも示されている。
表2 主要国の自動車電動化などの目標(出所:経済産業省作成(EV 名称は表1 に合わせて筆者が変更))

表2 主要国の自動車電動化などの目標(出所:経済産業省作成(EV 名称は表1 に合わせて筆者が変更))

 次いで世界のBEV 市場動向が「BEV 販売比率の推移」として図1 のように紹介されている。線図がジグザグで全体の傾向が掴みにくいが、資料②には傾向が把握しやすい線図があり、Web上で公開されているので参照してほしい。
図1 世界のBEV 販売比率の推移(2019 ~ 2024 年)(出所:Marklines から経済産業省作成。欧州は英仏独の3 カ国。( )内に示したのは2024 年の販売台数で筆者が付加)

図1 世界のBEV 販売比率の推移(2019 ~ 2024 年)(出所:Marklines から経済産業省作成。欧州は英仏独の3 カ国。( )内に示したのは2024 年の販売台数で筆者が付加)

 図1 の補足として図2 を示す。世界のBEV 販売を販売比率ではなく販売量で示したものである。図2 ではPHEV も加え、中国、欧州、米国、各国での販売量も示した。これから、世界のBEV+PHEV 販売量は2020 年から急速に成長していることがわかる。それを支えているのは中国市場で、中国政府が自動車大国から強国になるため、強力な政策支援をした結果である。
図2 世界のEV(BEV+PHEV)販売台数の推移(2014 ~ 2024 年)(出所:IEA「Global EV Outlook 2025」)

図2 世界のEV(BEV+PHEV)販売台数の推移(2014 ~ 2024 年)(出所:IEA「Global EV Outlook 2025」)

 では、中国、米国、ドイツの個別でのBEV 販売がどうなっているのかを見るため、それらの国別EV 販売量推移を図3 に示す。中国は2022 年から成長率で低下したものの依然高成長している。米国では2023 年から鈍化、ドイツでは減少している。なお、図3 の2025 年の販売量は筆者の予測値(保証なし)で、中国も含めBEV 販売は落ち込むと見ている。
図3  中国、米国、ドイツでのBEV 販売台数推移(2021 ~ 2025 年)(出所:IEA「Global EV Outlook 2025」より筆者作成)

図3  中国、米国、ドイツでのBEV 販売台数推移(2021 ~ 2025 年)(出所:IEA「Global EV Outlook 2025」より筆者作成)

 資料①ではEV 化動向の結論は示さず、有識者のコメントを紹介している。「足許でEV 市場は停滞」としているが、「中長期的にはEV シフトが進展」とし、その見通しとして以下の項目を挙げている。

① 2027 年頃から全固体電池や液系のリチウムイオンバッテリーをはじめとした性能向上と価格低減を実現したバッテリーが十分に供給されるため、BEV の航続距離が伸びるなど商品力が向上するとともに、リセールバリューも向上すると予想される。

② すでにバッテリー投資は実施されており、投資の後ろ倒しの可能性はある一方で、EV 生産の中止は考えにくい。

③ 次に買う車としてEV を望む消費者が一定数いるとの調査もあり、中長期的にEV シフトには大きな変化がないという見方が大半である。

 筆者は①については実現の可能性が低いと予測、③の「中長期的にEV シフトには大きな変化がないという見方が大半」については否定的である。最後に述べるが、BEV は今から2035 年に向かって失速すると予測している。
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