icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc
SEARCH

型技術 連載「中国の金型業界のリアル」

2026.04.16

第10回 展示会から見た中国金型業界

  • facebook
  • twitter
  • LINE

杭州谷口精工模具有限公司 小方 暁子

おがた あきこ:薫事長、OISHIエンジニアリング㈱代表取締役 神奈川県川崎市出身。留学経験後、日本と海外の文化や交流に興味をもち、旅行専門卸業勤務を経て、中小企業向け業務システム会社を立ち上げ。中国浙江省・杭州市にて業務経験ゼロから金型メーカーを事業承継。日本では金型商社事業と工業・農業系地方創生・海外ビジネス交流事業も手がける。
 「第24 回中国国際金型技術と設備展示会」(以下、DMC)が今年6 月4 日~7 日に開催されました。中国では、金型メーカーはもちろんのこと、金型ユーザーからもよく知られる業界最大級の金型関連展示会です。会期前日に業界セミナーも開催されました。まず、「金型の輸出先国の第2 位はインドである」という韓国の金型工業会会長の発表に驚きました。また、向けられるカメラの数が海外発表の中で最も多かった日本金型工業会会長の発表を見ることもできました。「インターナショナル」を意識した2025 年DMC の幕開けです。

中国の展示会の近年傾向

 DMC やCHINAPLAS(中国最大級のプラスチック・ゴム材料展)のように歴史ある展示会をはじめ、低空経済(地上およそ1,000 m 以下の低高度空域を利用するドローンや小型航空機の関連産業の総称)や環境エネルギー関連など、比較的新しい分野の展示会も増え、2027 年までには製造業関連だけでも1,300件以上になると予測されています。製造業関連の展示会では、EU の炭素国境調整措置を意識したカーボンニュートラル分野の展示会の共催を行ったり、IoT やAI を活用したシミュレーション技術などを紹介するエリアを積極的に設置したりするなど、国際化に対応するとともに中国の新技術を積極的にアピールしています。

 ここ数年は、二足歩行ロボットが会場内を歩き回ったり、TikTok でライブ中継をする専門ブースがあったりと、流行を取り入れて注目度を高める取組みも積極的に行われています(図1)。また、ロボット関連展示会での子供向けイベント、介護やペット産業展示会での一般来場者への即売会など、BtoB の展示会への新しい客層の取り込み、ブランド力を高める取組みも進んでいます。
図1 電子部品関連展示会で歩き回る二足歩行ロボット

図1 電子部品関連展示会で歩き回る二足歩行ロボット

2025 年DMC は海外PR の機会

 中国国内で「規上企業」(年間売上2,000 万元以上の企業)と呼ばれる中小企業の中でも、技術研究・開発などに優れ、今後有望な企業として認定されている中小企業の出展が目立ちました。

 数年にわたって出展し続けているキャップ専門の金型メーカーは、業界外の方は特に目を止めなくても、同業者は思わず足を止めてしまうような製品を展示していて、その技術や経験値を惜しみなく説明しているシーンが印象的でした。専門分野に集中・特化することで、ピンポイントで顧客に訴えかけ、技術と経験で魅了し顧客を離さない、好循環企業の見本となっていました。そのほか、海外有名部品メーカーの製品を主要部品として採用している中国設備メーカーや、完全中国生産のドイツ加工機メーカーの出展もありました。

 中国の加工機メーカーは地元の小規模金型企業と太い協力体制をもっており、地元の口コミで市場を拡大しながら、現場の声をスピーディに新製品に反映させていると言います。成形機メーカーは金型メーカーと協力して金型と成形機をセットにして海外に販売するなど、新しいビジネスモデルを創造しているそうです。今後、金型メーカーが加工の安定性や操作性、高効率を兼ね備えたコストパフォーマンスを重視する中で、加工設備の選択肢が広がることは金型業界全体にとって良い効果をもたらすでしょう。

 また、3Dプリンタで製作された金型部品のソリューション(上海毅速激光科技)や複雑形状品の高精度・高品質を保証するレーザー微細加工ソリューション(深圳単色科技)なども少ないながら見ることができました。中国の金型業界のサプライチェーンの充実度に、業界の厚みと多様性を感じました。

 こういった中国ローカル金型企業と世界をつなぐ取組みも、今年は目立っていました。中国に進出しているグローバル500 強に選出されている企業の調達・技術部門担当者を招待して、中国を起点とした技術力・製造力を彼らにアピールする機会を創造していました(図2)。また、マレーシアやタイ、ベトナム、インド、イラン、クウェートなどアジア・中東エリアからの団体参観には、産業誘致の形での協力体制や技術提携など、今までの調達の幅を越えたマッチングニーズが多かったようです。ベトナムから来た方が、「中国の金型技術を勉強しに来た」と言っていたのも印象的でした。
図2  グローバル500 強企業などの調達意向一覧(商談は事前マッチング制)

図2  グローバル500 強企業などの調達意向一覧(商談は事前マッチング制)

展示会で出会った中国金型企業の猛者たち

 今年のDMC は金型自体の展示も多い印象でしたが(図3)、ほかの製造業の展示会でも金型の展示を見かけることが増えています。金型メーカーや加工メーカーの担当者が市場調査のために来場することも多く、来場者同士で情報交換を行ったりサプライヤー候補として交流を始めたりすることもあります。また、展示会に自社製品をもって出かけ、同じような製品を扱っている出展者へ売り込み、商談にこぎつける猛者に出会ったことも1 回や2 回ではありません。ある医療関連展示会で、金型メーカーがプラスチック製医療消費財を売り込み、その展示会だけで数百万元の受注成約をした事例もあります。
図3 DMCで展示されていた金型(江天精密制造科技)

図3 DMCで展示されていた金型(江天精密制造科技)

 情報収集や交流はもちろんのこと、具体的に、よりアグレッシブに、展示会という機会を提供する主催者と、機会を最大限活用する来場者の融合。ここに金型業界もしっかり参入しているのかもしれません。

関連記事