2026年2月11日~12日の2日間、ジャカルタのインドネシア工業省1階展示場において、「リバースエキシビジョン展」[主催:インドネシア金型工業会(IMDIA)、インドネシア工業省、日本貿易振興機構(ジェトロ)インドネシア事務所]が開催された(写真1)。本展示会は今年で4回目。
本展の最大の特徴は、部品調達企業が“出展者”となる“逆見本市形式”である点だ(写真2、3)。調達ニーズ、図面、サンプルを提示し、現地サプライヤーや海外企業との具体的な商談を行う。今回は32社が出展し、「現地でつくりたい」「輸入依存から脱却したい」という意思がより明確になっていることが感じられた。
主催団体の1つであるIMDIAは設立20周年を迎え、金型産業の高度化と内製化率向上を明確な目標に掲げている(写真4)。
課題はそのまま「商機」である
会場で繰り返し聞かれたキーワードは、「内製化」「品質向上」「自動化」「技能人材」である。中でも金型・工作機械分野が抱える構造的な課題は以下の通りだ。
・特殊鋼材・精密部品の輸入依存
・高精度加工設備の不足
・自動化・省人化投資の遅れ
・熟練技能者の不足
・研究開発基盤の弱さ
裏を返せば、
「高精度加工ができる設備」
「安定した品質を実現できる部品」
「技能に依存しない自動化提案」
を提供できる企業にとっては、参入余地が大きい市場である。単なる価格競争ではなく、 “技術で差別化できる市場”という点が重要だ。
自動車市場は調整局面、だが構造変化は進行中
2025年のインドネシア自動車販売は前年比7.2%減の約80万台と減速。新型車投入時期も2028年以降にずれ込むとの見方が強く、金型・部品メーカーからは「2026年が最も厳しい」との声も聞かれた。
一方、市場構造は確実に変化している。BYD(写真5)や上汽通用五菱汽車など中国系EVメーカーやベトナムのビングループが出資するグリーン・スマート・モビリティ(GSM)のEVタクシー(写真6)が急速にシェアを拡大。街中ではEV車の存在感が増している。
写真6 ベトナムGSMのEVタクシー「Xanh SM」
EVはナンバープレート規制の対象外であり、政府補助によって購入価格も抑えられてきた。補助制度は見直されたものの、EVシフトという方向性自体は変わらない。EV化が進めば、
・新規金型需要
・バッテリー関連部品加工
・軽量化部材加工
・精密加工ニーズ
が拡大する。つまり、短期は減速、中期は構造転換期という局面にある。
「品質」要求の高まりは日本企業に追い風
展示会で特に印象的だったのは、国営企業や現地大手メーカーから「品質を安定させたい」「不良率を下げたい」「工程管理を強化したい」という声が増えていることだ。価格一辺倒から、品質重視への転換が始まっている。これは、日本の機械・部品メーカーにとって明確な追い風である。
・高剛性・高精度機
・トレーサビリティ対応設備
・IoTによる稼働監視
・自動測定・検査装置
といった分野で、単なる“設備販売”ではなく、「品質をつくる仕組み」ごと提案できるかどうかが勝負になるであろう。
今、求められる営業戦略
インドネシア市場で成果を出すためには、次の視点が重要だ。
1.価格ではなく“総合提案”
単体機販売よりも、加工条件・治具・工程設計まで踏み込む提案が有効。
2.現地化戦略の明確化
「いつか現地化」ではなく、部品在庫・サービス体制のローカル展開が信頼を生む。
3.人材育成支援のパッケージ化
技能不足は慢性課題。操作教育・加工指導を組み合わせることで差別化できる。デジタル・自動化、AI技術を提案した「デスキリング(De-skilling)」が求められている。
我慢の年の先にある成長
確かに2026年前後は踊り場になる可能性が高い。しかし、
・2億7,000万人の人口
・ASEAN最大級の内需市場
・製造業高度化政策
という基盤は揺らいでいない。今は“売り込む時期”というより、市場に入り込み、関係を築く時期と言える。
逆見本市形式の展示会が浮き彫りにしているのは、インドネシアは、まだ輸入依存から脱却できていないという事実である。しかし、脱却したいと本気で考え始めているという事実である。その変化のタイミングに、日本企業がどう関与できるか。そこに大きな可能性がある。
参考写真1 ジャカルタブロックMは今では若者の人気スポットに