せんごく けいいち:同研究所 代表社員。日産自動車にて物流IEとして新工場・新ラインの物流設計業務、その他輸送や構内物流、荷姿の効率化に携わる
物流の実力を数字で把握しよう
世界銀行が発表しているLPI という物流評価指標がある(図1)。2023 年版によると日本の順位は13 位(前回2018 年:5 位)、過去最低のポジションとなってしまった。6 つのカテゴリーで評価され、日本のトータルスコアは5 点満点中3.9 点だった。
図1 LP(I The Logistics Performance Index)
日本では物流の実力を示す公式な数字データをほとんど見ることはない。まとめる団体も見当たらない。ときどき国が発表する資料から今の日本の物流の実力値を推定するしかない。私たちはできるだけこのようなデータを見つけ、物流改善の道標としていきたい。1 つの例を挙げるとトラック積載率というデータがある。今の実力値は38%だ。行きはそこそこに積んでいても、帰りが空車というパターンが多く、結果的にトラックを有効活用できていないことを示している。
数字の視点で物流をご覧になったことはほとんどないかもしれない。そうなると気になるのが自社の物流管理レベルだ。他社と比べてどうなのか。マクロ的なとらえ方として可能な限り世の中の数字と比較してみることだ。たとえば誤出荷比率を把握してみてはどうか。公式にこのデータを公開しているところはないが、筆者の認識では全出荷件数に占めるエラー(異数、異品など)を含む件数の比率では30ppm 程度。この数字と自社の数字を比較して勝っているのか否かくらいは判断できる。
次に売上高物流コスト比率を把握してみよう。日本ロジスティクスシステム協会が毎年調査データを公開している。ざっくり全産業の平均は5%強。ただし、このデータに含まれる範囲が明確でない(対外支払物流費など限られたものであると推測される)点に注意が必要だ。物流コストは財務諸表からは見ることができないため、いろいろな費目に含まれる物流コスト(図2)を抽出すると8 ~ 9%程度になると推測される。
さらに望ましい確認方法は他社と物流情報交換会を実施することだ。お互い支障のない範囲内でSQDC 水準をベンチマークしてみよう。筆者もある製造業種の主要会社に集まっていただき、このようなベンチマークを実施した。結果として今後の改善の方向性を見定められる有効なデータを把握することができた。
物流スタッフの仕事とは
自社の立ち位置を確認するとそれを改善したいと考えるのは当然。では物流を改善し効率的なオペレーションを実行していくための登場人物にはどのような人が必要なのか考えていこう。
まずいうまでもないことだが、工場内で物流オペレーションを実施する現場スタッフが必要。実は工場内物流は工場全体の生産性を左右する非常に重要な機能であることを知っていただきたい。それについては本連載の7 回目から3 回にわたって詳しく解説させていただく。ものを運搬することを通して生産統制を行ったり、ものの届け方を工夫したりすることで生産工程の生産性向上に寄与するタスクを負っている。
次に企画管理スタッフが必要。彼らは物流の結果を数値化して評価を行ったり、物流管理に必要な諸データの整備を行ったりする。とかくカンコツで実施しがちな物流業務を科学的にデータに基づき行うためのインフラ整備が重要タスクだといえよう。
最後に技術スタッフだ。物流は最初の決め方が肝心であることはいうまでもない。最初に工程間を離してレイアウトをつくると運搬が発生する。トラックにマッチしない荷姿をつくると輸送コストが上がる。このようなムダが発生しないように、新たなレイアウト作成時や新たな仕向け地が発生するような機会をとらえて、エンジニアの立場から最適物流を構築することが彼らのタスクといえる。
この3 つの職種で業務分掌を明確に定め、スキル向上に欠かせない教育訓練を実施していこう。今回は重要なスキルに絞って紹介しておく。最初に現場スタッフのスキルについて。必須スキルとして現場管理スキルを挙げたい。物流が苦手とする標準化や標準時間、生産性把握などの知識は欠かせない。製造工程と同レベルまでは向上していこう。次に企画管理スタッフについて。彼らにはデータ管理スキルと物流の実態を数字で評価できるノウハウを身につけさせたい。適切なKPI (KeyPerformance Indicator)を設定し評価できるスキルは重要だ。最後に技術スタッフについて。彼らにはレイアウト技術と荷姿設計技術ならびにIE スキルを身につけて欲しい。もちろん設計評価について定量的に実施できることはいうまでもない。各スタッフはこれらのスキルを何かしらの方法で学ぶ機会をつくることが求められる。
今回のまとめ
① 日本では物流の実力を示す公式な数字データをほとんど見ることができない。まめに国のサイトなどを閲覧し必要なデータを取得しよう
② 自社の物流の実力を数字で把握してみよう。品質では誤出荷率を、コストでは売上高物流コスト比率を継続的に把握していこう
③ 物流スタッフには現場スタッフ、企画管理スタッフ、技術スタッフがいる。それぞれのタスクを明確にし、着実にスキル向上を図ろう