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型技術 連載「デジタルマーケティングで切り拓く異業種参入への道」

2026.10.02

第3回 続・発注側はどう考えている? インタビューから見える発注側が金型メーカーに要求する内容

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テクノポート 永井 満

ながい みつる:東海地方責任者。日本大学大学院で航空宇宙工学修了後、ボッシュにて、ディーゼルエンジンの設計開発を経験。その後、テクノポートでWeb マーケティングを担当。技術をきちんと理解できるマーケターとしてお客様のWeb マーケティング支援をしている。
 前回は、金型発注者の発注タイミングと金型メーカーの探し方など、発注前についてのインタビュー調査を掲載した。今回は発注後のインタビュー調査について紹介する。インタビューの回答者については表にまとめた。金型を発注する現場において、発注者が金型メーカーに対してどのような点で違和感を覚えたり課題を感じたりしやすいのか、またどのような要素が評価や信頼形成に影響するのかを明らかにし、金型メーカーが信頼を積み重ね、選ばれ続ける存在になっていくための具体的なヒントを整理する。
表 インタビューの回答者

表 インタビューの回答者

 誌面の関係で詳細な結果は以下のURL(https://bit.ly/3T8r5pn)から参照いただく形式としたが、本稿では調査から浮かび上がった全体の傾向をまとめ、金型メーカーが押さえるべきマーケティング上のポイントを整理していく。

インタビューの結果

1 .質問 ①:試作型製造のときに金型メーカーにどのような要求をしますか?

 試作型の発注段階では、発注側は最初から細かな要求はしていない。重視していたのは、製品図面を見たうえで金型がつくれそうかどうか、どこが難所になりそうかといった点について、技術的な観点から適切なコミュニケーションがとれるかどうかであった。初期段階においては、可否判断と課題を認識することを重視するため、金型メーカーには技術力と知識、これまでの経験を求めていることが明らかになった。

 一方で、不満として挙がりやすいのは「できている」という判断基準のずれである。金型メーカーの社内基準では寸法OK とされていても、発注側の測定では合っていないケースがあり、このずれが信頼低下の要因となっている。そのため、金型メーカーとしては使用している測定機や評価基準を事前に開示することが重要と言える。

2 .質問 ②:量産型を発注するときにどのような点を注意しますか?

 量産型の発注においては、注意点が大きく2 つに分かれていた。1 つは製作前の図面チェック工程、もう1 つは量産に入ってからの製作工程である。

 図面チェック工程では、金型メーカーから提出される図面が、事前に依頼した仕様を正しく反映しているかが重視されている。打合せで伝えた内容が図面に反映されていなかったり、指示していないところの数値が変わっていたりするケースは意外と多く、金型メーカーには技術的な要望よりもていねいな対応を要望していた。

 一方、製作工程では、試作型から量産型へ移行した際の製品寸法の安定性が課題となっていた。取り数の増加によってわずかな不良でもコストに影響が出る。難易度が高くなることは承知しているが、もうちょっと安定するものを通してもらいたいという意見が多かった。試作型と量産型は同じところに依頼するため、量産型まで含めた提案力と技術力がカギとなりそうである。

3.質問 ③:金型メーカーに何を期待しますか?

 技術面に対しての期待はあまりなかった。技術的にはここ数年で大きな変化を感じておらず、「どこに依頼しても大きな差はない」という認識をもつ人が多く、技術が標準化しているという印象であった。そのため、期待の中心は「言われた通りに、きちんとつくってくれること」に置かれている。仕様通りに仕上がっているか、図面で合意した内容が正確に反映されているか、納期や品質に大きな振れがないか。こうした基本的な部分をていねいに守ることが何より重要視されていた。

 発注者の本音としては提案を期待したい気持ちもあるが、金型メーカーの成形やプレスに対する知識が不足している場合、返ってくる答えの確からしさに不安を感じる場面もあり、結果として「余計なことをせず、確実に仕上げてほしい」という期待に落ち着いている。だからこそ、自社がどこまでできて、何が得意なのかを明確に示すことが求められる。

4 .質問 ④:金型メーカーへアドバイスをお願いします

 金型メーカーへのアドバイスとしては、大きく4 つの視点が挙げられた。1 つ目は、技術面でのもう1 段階のブレークスルーである。安くバリデーションを増やす方法や耐久性を前提とした設計、ショット数限界時につくり直しではなくオーバーホールで対応できる仕組みなどが挙げられている。特にバリの出にくい金型づくりは、多くの現場で共通した関心事であった。また、実際に試作品をつくってみないとわからない場合には、検討の妥当性を高めるために、完璧な金型のワンランク下の金型を安くつくれるとよいという意見もあった。

 2 つ目は、材料に関する知識である。同じ金型構造でも材料が変われば結果は大きく変わるため、加工だけでなく材料特性や成形条件まで含めて理解していてほしいという声が多く聞かれた。

 3 つ目は、試作という概念の導入である。試作型だけではなく、3D プリンタなどを活用し、量産前の検証や形状確認を支援できる体制があれば、発注側は初期段階から相談しやすくなる。試作から量産までを見据えて関われることが、金型メーカーの価値を広げる要素になるとの指摘があった。

 4 つ目は、営業の強化である。新規で金型メーカーを探す機会は少ないため、少しでも発見される確率を上げるべく、さまざまな展示会への出展が望まれている。製品を見ながら直接話すことで技術力だけでなく、その背景や姿勢が伝わるため、直接話せる機会をどれだけ増やせるかが新規開拓のカギとなる。

選ばれ続ける金型メーカーになるためには

 今回の調査を通じて見えてきたのは、金型メーカーに求められているのは「特別な技術力以前に、仕事の進め方そのものだ」という点である。寸法や精度といった結果だけでなく、仕様の理解度やリスクの共有、意思疎通の取りやすさといった要素が、発注者の安心感や信頼形成に大きく影響している。

 その中でまず重要になるのが、仕事の見える化である。技術や品質管理において、どこまでを自社で担い、何を確実に実行できるのかを外からわかる形で示すことが求められている。万能さよりも、「この会社はここが強い」という輪郭が伝わることが重要である。

 次に、情報発信の仕組みづくりである。展示会やWeb を通じて自社の考え方や得意分野が発見される環境を整えなければ、そもそも比較検討の土俵に上がれない。最後に、材料まで含めた知識の見える化も欠かせない。同じ金型でも材料が変われば結果は大きく変わるからこそ、加工だけでなく材料特性まで含めて相談できる存在が求められている。

 こうした土台を築いた先に、新しい技術やブレークスルーへの挑戦が意味をもつ。金型メーカーが目指すべきなのは、単なる外注先ではなく、信頼して相談できるパートナーであると整理できる。

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