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型技術 連載「デジタルマーケティングで切り拓く異業種参入への道」

2026.09.02

第2回 発注側はどう考えている?新規発注のタイミングをインタビュー

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テクノポート㈱ 永井 満

ながい みつる:日本大学大学院で航空宇宙工学修了後、ボッシュにて、ディーゼルエンジンの設計開発を経験。その後、テクノポートでWeb マーケティングを担当。技術をきちんと理解できるマーケターとしてお客様のWeb マーケティング支援をしている。
  前回は、製造業におけるマーケティングの基本的な考え方を整理し、どの領域から取り組むべきかを概観した。とはいえ、理論だけでは現場の活動に落とし込みづらい側面があり、特に「顧客理解」がどのように形づくられているのかは、多くの企業で見えにくいままである。

 そこで今回は、金型を発注するメーカー側に焦点をあて、実際の担当者へのインタビュー調査を行った(表)。外注先を探すきっかけや選定基準、避けられやすい企業の特徴、さらには金型メーカーに期待されている役割まで、現場ならではの視点が多く得られた。金型メーカーにとっては、営業方針や情報発信の方向性を考えるうえで重要な示唆が詰まった内容になっている。
表 インタビューの回答者

表 インタビューの回答者

 誌面の関係で詳細な結果は以下のURL(https://marketing.techport.co.jp/wp-content/uploads/2025/11/Interview-with-mold-orderer.pdf)から参照いただく形式としたが、本稿では調査から浮かび上がった全体の傾向をまとめ、金型メーカーが押さえるべきマーケティング上のポイントを整理していく。

インタビューの結果

1 .質問 ①:金型の外注先を探すときのきっかけについて

 外注先を新たに探す契機は、コスト・納期・品質のいずれかに課題が生じたタイミングであることが多かった。また、高精度や特殊形状など、社内では対応が難しい案件が発生したときにも新規外注先の検討が進む傾向が見られた。既存の取引先は信頼されているものの、万能ではなく、案件によっては追加の外注先が必要になるという構造が明確である。

2 .質問 ②:外注先の探し方について教えてください

  外注先の探索方法としては、展示会での直接接触、あるいはWeb 検索による調査が中心であった。展示会では技術力や雰囲気を対面で確認し、Web では用途や材質、地域などの条件検索から候補を絞り込む企業が多く見られた。また、一部では生成AI を使って候補企業を抽出する取組みも確認された。候補が挙がったあとは、購買部門が選定を行い、試作を通じて適合性を検証するプロセスが一般的であり、発注側は「実物を見て判断するプロセス」を重視していることが特徴であった。

3 .質問 ③:金型屋さんの良し悪しは何で判断しますか?

  判断軸の中心は「精度・納期・対応力」である。価格は重視されつつも、最終的な選定を左右する決め手にはなりにくいことがわかった。特に寸法精度や技術理解の深さが信頼獲得の要因となり、「経験の豊富さ」、「質問に対する具体的な返答」、「実績・設備・測定環境の提示」など、技術と対応の両面が評価されていた。

4.質問 ④:どういう会社は選びませんか?

  安さだけを強調する企業や、対応が曖昧な企業は避けられる傾向にある。反応の遅さ、不十分な情報提供、透明性の不足などは不信感につながるポイントとなる。一方で、誠実でていねいな対応を行う企業は、小規模でも一定の評価を得ていることがわかった。

5.質問 ⑤:年間でどれくらい探しますか?

 新規外注先の探索頻度は年に1 ~ 2 回が一般的である。通常は既存の業者で回すが、トラブル発生時や新規案件、サイズや技術的制約によって追加の検討を行う。展示会や特殊案件がきっかけとなるケースも見られ、探索は「いつも行う活動」ではなく「必要が生じたときに行う活動」であることが明確である。

6.質問 ⑥:金型屋さんへの希望はありますか?

 金型メーカーに対して寄せられた要望としては、図面通りに製作するだけでなく、製造プロセスやコストに踏み込んだ「提案力」を求める声が特に多かった。

  例えば、加工時間の短縮につながる形状提案や、成形の安定性を高めるための工夫など、金型側の専門知識に基づいた改善提案への期待が強く示されていたのである。また、量産実績のあるサンプルや難易度の高い品目の紹介、シミュレーション結果の提示など、判断材料となる具体的な情報を求める傾向も明確であった。

7.質問 ⑦:外注先の調査にAI を活用しますか?

  AI 活用はまだ限定的であるが、条件入力による候補抽出など、効率化ツールとしての利用が始まりつつあることがわかった。今後の普及余地は大きく、特にWeb 検索中心の企業では導入のハードルが低いと考えられる。

8 .質問 ⑧:金型屋さんにアドバイスをお願いいたします

  発注側から寄せられたアドバイスとしては、まず「技術力」、「実績」、「提案力」の3 つをわかりやすく示すことが重要であるという点が一貫して挙がっていた。展示会においては、ブースの見せ方が企業の第一印象を大きく左右しており、何を得意とする金型メーカーなのかがひと目でわかる構成が求められていた。歩きながら見られる環境であるため、キャッチコピーや展示物の視認性といった情報の「入り口」が想像以上に判断材料となっている。

  一方、Web サイトでは、具体的な製品写真や加工難易度のわかる事例紹介、対応可能な精度、設備構成、測定環境の情報といった「技術の裏付け」が信頼の基盤となっていた。更新が止まっているサイトや情報量の少ないサイトは判断が難しく、逆にシンプルであっても必要な情報が整理されている企業の方が印象は良いとの声が多かった。

金型メーカーが押さえるべきマーケティング上の要点

 今回の調査から、金型メーカーを新たに探す機会は実際にはほとんどないことが明らかになった。言い換えれば、一度取引が始まれば長期的な関係につながる可能性が高く、安定した取引の継続が期待できるということである。

 その限られた機会を確実に獲得するためには、初期段階における信頼の形成が重要になる。発注側が重視しているのは、寸法や価格といった数値よりも、図面の意図を正確に理解し、課題に応じて適切に対応できる力である。

 特に、質問への具体的な返答や、実績・設備・測定環境などの情報が十分に提示されている企業は信頼を得やすい傾向にある。一方、対応が遅い、情報が不十分、判断があいまいといった企業は選定から外れやすく、誠実さや明確さが発注判断に直結していることも明らかになった。

 また、マーケティングにおいては情報発信が重要であるものの、ただ発信量を増やすだけでは閲覧数が増えるだけにとどまり、発注側からの信頼にはつながりにくい。信頼につながるのは「質を伴った情報」であり、その質を高めるためには、社内の体制やプロセスそのものを見直す必要がある。問合せ対応の精度や速度、技術情報の整理、提案内容の一貫性など、内部の仕組みが整えられてはじめて、外部に向けた情報発信にも説得力が生まれる。

 限られた接点の中で信頼を形成するためには、技術力を前提としたうえで、自社の対応力や理解力を具体的に示すことが重要である。「寸法に表れない精度」とは、まさにそのような実務対応と体制整備の積み重ねによって形づくられるものである。

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