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型技術 連載「デジタルマーケティングで切り拓く異業種参入への道」

2026.11.06

第4回 受託加工業の強みを引き出す自社分析と市場開拓戦略 ―自社の技術や設備を活かした効果的な市場アプローチ

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テクノポート 廣常 絵梨奈

ひろつね えりな:表立つことは少なくとも社会を大きく支えているBtoB 製造業技術・製品に強く惹かれテクノポートへ入社。近畿圏を中心に、金属・樹脂加工などのサプライヤー企業から、自社製品を販売するメーカーまで幅広い支援を行っている。
 前回・前々回は、金型発注者の発注タイミングや発注先(金型メーカー)の探し方、製造時の要求事項についてのインタビュー調査について解説した。調査の結果、発注者は金型を図面通りに製作する技術力だけでなく、製造プロセスやコストに踏み込んだ「提案力」や、製造経験の豊富さ・意思疎通のとりやすさといった「信頼感」に重きを置いていることが明らかになった。これら発注者側のニーズを踏まえ、自社をどのように分析し市場へアプローチしていくべきか、今回はその手法と市場開拓戦略について紹介する。

強み分析と市場開拓で金型メーカーはどう変わるか

 多くの受託加工業が抱える課題は、特定の会社や業界への依存度が高いことにある。この構造下では自社の経営が顧客の生産計画や業界の景気動向に左右されやすく、価格決定権ももちにくい。

 自社の強みを客観的に把握し、市場開拓に取り組むことは、この受動的な体質からの脱却を意味する。自社がどの観点で高く評価されるかを知り、複数の柱をもつことができれば、特定の環境変化に左右されない強靱な企業体質へと変革できる。それは単なる売上げ拡大ではなく、経営の主導権を取り戻すプロセスに他ならない。

強みは「考える」のではなく「見えてくる」もの

 多くの企業が、自社の強みをいきなり見つけ出そうとして行き詰まる傾向にある。最初から結論を急ぐのではなく、まずは自社・競合・顧客という3 つの視点(3C 分析)から、自社の提供価値を客観的に見直す作業が必要である。

 ただし、洗い出した要素の中から他社を圧倒するような突出した強みを一つに絞ることは容易ではない。多くの受託加工業において、単一の要素だけで差別化を図るのは困難だからである。したがって、技術、対応力、品質管理体制など、複数の要素をかけ合わせることで、自社独自の強みを定義していくアプローチが求められる。

強みを見つける3C 分析のステップ

1.自社の提供価値の整理

 まず、自社の分析としてTPM モデル(図1)を活用し、自社の保有資源を洗い出していく。
図1 自社分析に有効なTPM モデル

図1 自社分析に有効なTPM モデル

 ・技術(Technology):加工技術、保有設備など
 ・ 提供機能(Performance):金型サイズ、対応重量、寸法精度、型種類、QCD、対応地域など
 ・市場(Market):業界、ターゲット顧客など

 特に提供機能(Performance)の要素については、発注者が依頼先を選定するための基準と直結しやすい。そのため、自社基準ではなく「発注者側が知りたい情報」を軸に洗い出していくことが重要である。

 なお、参考として、前回・前々回で紹介した当社インタビュー調査では、金型メーカーに対する発注者の要望として、「技術理解の深さ」、「図面の意図の理解力」、「設備・測定環境の明示」、「製造プロセスやコストに踏み込んだ提案力」、「材質知識」、「量産を見越した検証体制」、「納期や品質の遵守」などが挙げられていたことを付記しておく。

2.同業他社の分析

 次に競合を分析する。ここで意識すべきは「営業現場で認識している競合」と「Web 上でヒットする競合」の両方を押さえておくことである。両者に対し、Web サイトの掲載内容や事例の充実度、アピールしている強みを確認する。競合他社が何を訴求し、逆に何が不足しているかを知ることで、自社が勝てるポジションを見つけ出していく。

3.顧客評価の見直し

 最後に、既存顧客の評価を確認する。可能であればこれまでの顧客へヒアリングを行い、「なぜ自社に発注したのか」、「他社ではなく自社を選び続けている理由は何か」を直接聞くのが最良である。自社では気づかなかった強みが、顧客の声から発見されるケースは非常に多い。

 これら3 つの項目を洗い出したうえで、自社の優位点を探る。「高精度×短納期×クリーンルーム完備」のように、複数の要素をかけ合わせることで独自の強みを見つけ出すことが可能となる。

自社の強みを市場に伝わる表現へ言語化

 分析によって独自の強みが見つかったとしても、それが顧客に伝わらなければ意味がない。多くの企業が陥りがちなのが、「高品質」、「短納期」、「柔軟な対応」といった、聞こえは良いが具体性に欠ける言葉で満足してしまうことだ。こうした言葉は、なるべく数値・事実情報に置き換えることで説得力が大幅に向上する。

 事例1:納期の訴求
  NG 例:「短納期対応、お任せください。」
  改善例:「 簡易金型ならデータ受領から最短1週間で対応。特急案件もご相談ください。」

 事例2:提案力の訴求
  NG 例:「お客様に最適な設計提案を行います。」
  OK例:「 CATIAを活用した金型成立性の検証・提案や、サイクルタイム短縮のための構造最適化が得意です。」

市場へのアプローチ

 分析した強みをもとに、どのように市場を開拓するか。これまでに実績のある技術・市場への売り込み以外にもいくつかのパターンが考えられる(図2)。
図2 技術版アンゾフの成長マトリクス

図2 技術版アンゾフの成長マトリクス

1 .新市場×既存技術:実績のない業界へのアプローチ

 Web を活用したデジタルマーケティングの最大の利点は、こちらが想定していない業界の顧客が「向こうから見つけてくれる」ことにある。これを活かし、既存顧客と同じ層だけではなくほかに開拓できる市場がないかをぜひ検討してほしい。

 金型や部品加工において、発注者が重視する本質的な基準は、業界が変わっても大きな差はない。たとえ狙いとする業界での実績がなくとも、類似業界の実績や自社の提供価値を明示し、該当業界のユーザーに見てもらうための導線(集客施策)を整備しておけば、問合せを獲得できる可能性は十分にある。

2 .新技術×既存市場:事業幅を広げることによる成長戦略

 新しい業界を狙うだけでなく、既存の顧客に対して提供できる価値の幅(バリューチェーン)を広げることも有効な戦略である。 例えば、単に図面通りに金型をつくるだけでなく、川上の「設計支援・試作開発」から参画したり、川下の「小ロット加工・成形」、「金型メンテナンス・修理」まで請け負ったりすることで、顧客にとっての利便性が高まり、金型製作だけでは受注でき得なかった案件獲得の可能性が高まる。

「顧客にとっての価値」への翻訳を

 金型製作業をはじめとした受託加工業のマーケティングにおいては、①自社、②競合、③顧客を冷静に分析し、「自社ができること」を「顧客にとっての価値」へと翻訳する作業が肝要となる。この工程を経て言語化された強みを、デジタルマーケティング、ひいては販促活動全般において積極的に示していくことによって、市場開拓への道筋は確実に拓かれていくはずだ。

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