TMCシステム(川崎市川崎区、044-211-6551)は、FA設備の設計・製作、技術者派遣、BtoB 製造業向けWeb サイト制作を中核に事業展開している。また、ほかにも筐体設計、リバースエンジニアリングサービス、鋳造・鍛造金型の設計なども手がけている。従業員は約130 人。2025 年には同社の強みを打ち出すべく組織変更を実施。FA 設備の設計・製作により力を注ぐための体制を整えたほか、AI外観検査を専門とする部署を新設し、多様な業界に向けて工程の自動化を提案する。
FA設備の設計・製作へシフト デジタルマーケティングも取り入れる
同社は1960年に設立(当時の社名は東京マシナリー)。当初は「スケッチ設計」をメインの事業としていた。この事業は、顧客の製鉄会社の製鉄所で稼働する海外製装置において、図面がない部品の寸法を測定して図面化する業務を請け負うもの。特に壊れやすい部品はあらかじめ図面化しておくことで、突発的な破損に備えることを目的としていた。今もこの事業はリバースエンジニアリングサービスに引き継がれており、他社からの「図面を紛失してしまった古い設備の部品を複製したい」といった要望にも応えている。
また同時期に鋳造・鍛造金型の設計事業も開始している。主に自動車のエンジン関連部品や足回り部品、車体部品の金型設計を手がけてきた。近年では金型や周辺設備にセンサを取り付けることで、金型の予兆保全や生産状況のモニタリングが行えるシステムを提案している。現在、本事業は国内向けだけでなく、タイへの進出を検討しているところだ。
1990年代後半になると、業務の幅を広げるために、各種試験機・測定機・実験観察機の受託開発を開始。そこで培った機械・電気・制御の技術を活かして、現在の主力とするFA設備の設計・製作へとかじを切っていった。
松本勇介社長(写真1)は、2024年に3代目の社長に就任した。もともとはWeb サイトの制作会社に勤めており、2013年に同社に転職すると、新たにWeb サイトの制作事業を始めた。大手企業のコーポレートサイトやサービスサイト、採用サイトを制作した実績がある。「自社サイトでも専任者をつけてデジタルマーケティングに取り組んでいて、FA 設備をはじめとした各事業で、引き合いの増加、新規顧客の獲得などに貢献している」と松本社長は語る。
社内組織を再編 AI外観検査の専門部署を新設
松本社長は2025年に社内組織を再編した。これまでは単純に、機械、電気、ソフトの技術分野ごとに事業部を分けていたが、FA 設備により注力するために、第1FA事業部、第2FA事業部、そして外観検査システム部を設けて、それぞれに機械、電気、ソフトの技術者を配属した。「何でも請け負えますといった展開の仕方ではなく、自社の強みと強化したい案件を明確にして顧客に提案していく方針に変更した」(松本社長)のである。
第1FA事業部は、これまでの装置単体の受注ではなく、製造ラインとしての受注に力を入れていく。大きな設備でも組み立てられるように協力会社が保有する組立スペースを利用する。すでにモータコアの一連の製造設備を受注し、顧客に納入した実績がある。第2FA事業部は、工場や倉庫向けにAMR(自律走行搬送ロボット)などを用いた搬送システムの構築を請け負う。さらには、搬送と作業を自動化するために、ロボットアームやAMRを組み合わせたマシンテンディングの提案も始めている。
外観検査システム部では、多品種少量生産向けなどに、少量の画像データでOK・NG判定を開始できる小型のAI外観検査装置を開発し、提案している(写真2)。同社の取締役兼技術開発本部長の加藤一氏(写真1)は「これまで画像認識・画像処理に関する多様な相談を受け、外観検査装置を数多く納入してきたノウハウがある。AI技術も取り入れて外観検査技術をさらに強化していくとともに、FA の事業部とも連携して顧客にシステム提案していく」と話す。
複数案件の同時進行が可能な設計体制
同社の設計者は複数の案件を同時並行に進めながらも、設計した装置は自ら部品の手配や組立て、据付まで一貫して担当している。設計した装置が顧客先で問題なく運用できるようにすることまでが設計者の仕事だ。後工程を理解して設計することで、「加工しにくい部品」や「組立てしにくい構造」、「作業やメンテナンスがしにくい装置」などが原因による手戻りを防ぐことができる。もっとも、製造工程を熟知している設計者が集まって開催するデザインレビューの場で、それらの問題の発生を事前に抑えることができているのだという。
「顧客との打合せの段階で構想を固めてしまい、すぐに詳細設計に移れるようなスピード感を持った対応を心がけている。長年の積み重ねにより、機械、電気、ソフトの各担当者がしっかりと認識合わせを行うことで、誤解や手戻りを防ぎ、1 人が複数の案件をかかえていても設計プロセスをスムーズに進行することができる体制ができている」(加藤取締役)。
2025 年には、設計業務の効率化の一環として、1997年以来、顧客や業務ごとに複数種類導入されていた3次元CADを「SOLIDWORKS」に一本化するなどの取組みも行った。FA 設備の設計はすべて3次元化している。
技術者派遣事業を展開していることも同社の特徴であり、人材育成にも貢献している。現在、約40 名がさまざまな顧客の元に常駐して設計業務を行っている。「派遣した設計者には、業務を通して覚えてもらいたいことなどの目的を明確に伝えている。顧客先の設計者と協力して仕事をするなど、社内の業務では得られない経験を積むことができる」(加藤取締役)。一定の期間を経て、派遣先の設計者が別の派遣先に移ることもあれば、社内に戻ってきて設計業務を担当することもある。また、社内の設計者が新たに顧客企業に派遣されて業務にあたることもあるという。
「設計者として成長できる機会を多く設けたい」とする同社は、産官学連携による共同研究・共同開発も以前から積極的に行っており、目下、大学および大手企業との共同プロジェクトを進めているところだ。
さまざまなシーンで活用できる独自の加振機
自社製品としてAI外観検査装置を開発し、提案しているが、受託開発品をもとに2008年に製品化した試験機に「ハンマリング微加振装置」がある。この装置は、コネクターをはじめとした各種電気接点に特化した振動試験機で、ハンマによる加振機能に加えて、コネクターなど電気接点の電気抵抗計測や瞬断計測機能を搭載している。この装置には特許取得済みの「二度叩き防止機能」が搭載されており、通常のハンマなどによる加振方式では、初打撃後、打撃力を減衰させながらバウンスするため、設定した加速度以外の加振も行われてしまうが、同機能では、最初に設定した加速度でのみ加振するため、精度の高い試験を繰り返し行うことができる。
残念ながらこの装置自体はある電気系部品の供給が終了してしまったため、新規製造は行っていないが、加振部分を切り出して、定量的な打撃加振が行える「定量加振機」(写真3)およびインパルスハンマを取り付けて自動で加振する「定量加振機インパルスハンマ版」(写真4)を製品化している。電子部品以外にもホイールやタイヤ、自動車部品、ハウスメーカー向けなど、さまざまな需要があり、同社が試験対象物に合わせてシステムを構築している。同社への問合せ件数としては最も多いという。また、過去に納めたハンマリング微加振装置の校正依頼も継続してあるのだという。
写真4 定量加振機インパルスハンマ版を組み込んだ試験機
今後の展開について松本社長は「まずは組織変更を実施したFA 設備、AI 外観検査、マシンテンディングの受託を伸ばしていくことが一番だが、フィジカルAIにも注目している。今のうちにできることを模索していきたい。決して乗り遅れることのないようにしたい」と自動化技術にかかわる将来を見据えている。