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プレス技術

2026.07.27

小物ベンディング自動化システムでボトルネックの解消へ─正幸産業

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 正幸産業(千葉県佐倉市)はクレーンゲーム機など、主にアミューズメント機器のフレームやそれに付随する板金部品を製造する。「強みは設計・試作からブランク、曲げ、溶接、組立て、粉体塗装までの社内一貫生産体制。そして、データさえもらえれば、図面がなくてもすぐに加工に入れる展開力の早さ」と中島謙慈社長は話す(写真1)。
写真1 中島謙慈社長

写真1 中島謙慈社長

 加工難易度の高い製品が増え、曲げ工程がボトルネックとなっていたが、ロボットを活用した最新の小物ベンディング自動化システムを導入して以来、稼働率は大幅に向上。夜間運転も可能になり仕事の平準化が進んだ。建設機械やサーバーラック、印刷機関連などアミューズメント機器以外にも仕事の幅を広げつつある伸び盛りの企業だ。

チャレンジ&ネバーギブアップの精神

 創業は1971 年。金属プレス加工会社で経験を積んだ当時21 歳の中島久幸氏(中島社長の父親で現相談役)が独立。弟と二人、神奈川県川崎市内で仕事を始めた。しかし初めの数年はなかなか仕事が得られず苦労した。転機となったのは1970 年代の中頃。当時、近隣にあった大手アミューズメント機器メーカー(以下、S 社)と出会ったことだ。

「創業者から聞いた話ですが、『何度も見積もりを出したもののまったく反応がない。ならばと、あるとき思いきり安くして出したら、すぐに返事がもらえた』と。適正なコストであったかは知りませんが、それがきっかけとなってS 社との取引が始まり、その後、受注量がどんどん増えていったのです」(中島社長)。

 もちろん、単に低コストを売り物にしたわけではない。同社のQCD が同業他社よりも圧倒的に優れ、それをS 社が高く評価したためである。実際に、どんなに難しい案件でも途中で投げ出すようなことはせず、最後はものにする。創業者はこれを「チャレンジ&ネバーギブアップの精神」と呼び、社是とした。そしてS 社との関係は、出会いから半世紀経った今日でもメーカーとその主要サプライヤーとして固い絆で結ばれている。

板金機械をアマダ製に統一

 当初はプレス加工が中心だったが、やがてアミューズメント機器のライフサイクルが短くなりロット数も小さくなったことから、金型づくりが必須のプレス加工から板金加工中心の業態へと切り替えた。最初に板金機械を導入したのは1982年。アマダ製のタレットパンチプレス(タレパン)「PEGA-357」であり、創業者が一目で惚れ込んだ機械だった。続いてベンディングマシン(ベンダー)「RG-50」も導入。両機械とも、揺籃期にあった板金業務を十分に支えてくれたと言う。

 次なる転機は1988年。S社の納品場所が千葉県佐倉市に移ったのを機に、同社もその近くの場所に本社工場を移転した。それまでは川崎市もしくは東京都大田区内の狭い場所で仕事をしてきたが、佐倉市では広い敷地を確保するとともに業務のグレードアップを図った。

 ひと口にアミューズメント機器と言っても、細かい部品から大きなものまでいろいろある。従来は小物が多かったが、「やるからには大きなものに挑戦しよう」と、フレーム筐体などにシフトした。フレームと言っても1 台当たり100 個以上のパーツが付くケースもあり、実際には細かいものから大きなものまでつくることになる。

 そこで移転を機にもう1 台タレパン「PEGA-244」を増やし、レーザ加工機は遊休資産として残っていた他社製の機械からアマダ製の「LC-1212α」に変更するなど強化を図った。以降、同社では主要板金設備をアマダ製に統一している。中島社長は「アマダさんの機械はどれも優れています。個別の機械を見ると、他メーカーからより加工速度の速いものも出ていますが、機械間のネットワーク構築や操作性などが統一されている方が運用はしやすく、トータルでサポートを受けられるなどのメリットもあるからです」と言う。

曲げ工程の自動化に取り組む

 時代は変わり、現在の同社のブランク工程は、ファイバーレーザの「ACIES-2512T-AJ」、CO2レーザの「ACIES-2512B」(写真2)の2 台のパンチレーザ複合加工機、ファイバーレーザ加工機「FLC-3015AJ」、タレットパンチプレス「EMK-3510M Ⅱ」の4 台体制で行われている。4 台はいずれも棚付きで、夜間運転もスムーズだ。中でも最も稼働頻度の高いのは複合加工機である。「近年は四角形ばかりでなく曲線形のものが増え、また危険防止のために角部をR にするなど、複合加工機でないとできない仕事が増えたためです。しかも24 時間稼働させることができるので、ブランクに関してはほぼ満足しています」(中島社長)。
写真2  ブランク工程を担うパンチレーザ複合加工機「ACIES-2512B」

写真2  ブランク工程を担うパンチレーザ複合加工機「ACIES-2512B」

 一方、長年にわたり同社が課題としてきたのはブランク後の曲げ工程であり、ブランクの速さになかなか追いつかず、板金工程の中でもボトルネックとさえ言える状況だった。また顧客企業が製品品質を向上させるためリベット留めにしたり、ダボ出しにしたりなど細かな工夫をするようになったのも理由の一つだ。それらをこなすにはベンダーの精度を上げないと成立せず、求められる品質要求がさらに厳しくなってきたのだ。対応策として、同社では以前から多数の汎用ベンダーを揃えてきた(現在は12 台)。それでも手間のかかるものが増え、人手の作業ではなかなか追いつかないのが実情だった。

 そこで、ロボットを活用した自動化システムの導入に着目した。「世の中、人手不足対策としてロボットの導入を進める企業が多いのですが、私はそれだけではなく、ロボットで自動化した方が人手に頼るよりも精度は安定するし、品質を維持するためにもよいと考えています。幸いなことに当社は量産系の企業なので、手がけるもののリピート率が高くロボット化に適しているのです」自動化システム(以下、ロボットベンダー)を初めて導入したのは2000 年代初めのことであり、2025 年3 月に導入した最新のロボットベンダーは4 台目になる。

ボトルネックの解消に大きく前進

 ロボットベンダーを本格的に使うようになったのは2010 年代に導入した2 台目の「ASTRO-100NT」(以下、ASTRO)からである。「材料を入れると金型が自動で出てきて位置決めをしてくれる。そして、曲げ線の情報さえあれば、プログラム操作によって自由に段取りが組める。これは素晴らしい機械だと感心しました」(中島社長)。ただし、当時はロボットベンダーの加工に適した製品がそれほどなく、活用はしていたものの稼働率はさほど高くはなかった。

 3 台目は2019 年に導入した「EG-6013AR」(以下、EG-AR)である。「EG-AR はアマダさんの展示会で初めて見たときから『これは絶対にほしい』と思ったほどでした。個人的には、今でも「スッ」という稼働時の音と動きが気持ちよく、好きな機械です」(中島社長)。ASTRO と比べても稼働率は向上した。ただし、それでも手動式から主役の座を奪うまでには至らなかった。

 なんと言っても自動化が大きく前進したのは2025 年3 月に導入した4 台目の「EGB-6013ARce」(以下、EGB-ARce)からである(写真3)。それまではASTRO とEG-AR の2 台体制であり、当初、アマダからはASTRO の後継機として大型のロボットベンダーを勧められた。しかし仕事内容は細かなものが多く、そこで用いるベンダーが足りなかったため、小物ベンディング自動化システムのEGB-ARce と汎用ベンダーの「EGB-6020e」(写真4)の2 台を同時に入れた。汎用ベンダーを入れたのは、ロボットベンダーの仕事が手一杯になったとき、手の空いた人がいつでも応援できるようにするためだ。
写真3  2025 年に導入したロボットベンダー「EGB-6013ARce」

写真3  2025 年に導入したロボットベンダー「EGB-6013ARce」

写真4  EGB-6013ARce とセットで使用中の汎用ベンダー「EGB-6020e」

写真4  EGB-6013ARce とセットで使用中の汎用ベンダー「EGB-6020e」

「既存のロボットベンダーであるEG-AR を6年間使い続けてきたので、両者の違いはすぐにわかりました。そして、わずか6 年の間にここまで進化したのかと驚きました。スピードは増し、何よりも私が一番気に入ったのは、ワイドグリッパにより加工範囲が大きく広がったことです」(中島社長)

 EG-AR の場合は、突き当てが難しい細かな部分をロボットに曲げさせ、最後に曲げる長辺は金型が配置できないため、人が曲げていた。それに対し、EGB-ARce は金型をレイアウトできる範囲が広がり、全工程を加工できるようになった。また、EGB-ARce は小さなワークであれば最大6 カ所に材料を積載可能(EG-AR は4 カ所)。1 度にセットできる素材料が増えたことで稼働時間が長くなる効果が得られたと言う。

業界でもトップクラスの稼働率

 EGB-ARce は操作性も極めてよい。このロボットベンダーを担当するのは中島社長の三男で第二製造部部長の中島大吾氏である(写真5)。それまではブランク工程専任で曲げ工程は未経験だったが、3 日間の講習を受けた後、ものの2 ~ 3 週間で操作をマスターした。「当初、手を焼いたのはやはりCAM の操作。つまり、どういう順番で曲げていったらよいかでした。例えば10 工程の曲げがあった場合、順番を誤ると最後の工程が曲がらなかったりするからです。しかし、それもすぐに慣れました」と大吾氏は言う。
写真5 中島大吾氏

写真5 中島大吾氏

「長年、曲げをやってきた人なら、『こういう感じで曲げていけばよい』とイメージがわくものですが、息子の場合は初心者だったので、最初はそれがわからなかった。しかし、それもほんの数日間だけで、そこまで苦労している様子ではありませんでした。また、ロボットで曲げるやり方と人がやる曲げ方はまったく違います。私たちは先入観があって頭の中で描きがちですが、彼はまずはEGB-ARce でのやり方に従い、そこから自分なりの工夫をしていくという、よい手順を踏んだと思っています」と中島社長は目を細める。

「現時点でもEGB-ARce はEG-AR に比べて2倍くらいの仕事ができている」と同社では言う。しかも品質は極めて安定している(写真6)。EGB-ARce と併設した汎用ベンダーの進歩も実感している。突き当てが3 つになって斜め曲げなども簡単にできるようになり、今までやれそうでやれなかった曲げ方ができるなど、活用の幅が広がっているからだ。
写真6  加工品例。板厚1.6mmのSECCボンデ鋼板から5工程の曲げで製造

写真6  加工品例。板厚1.6mmのSECCボンデ鋼板から5工程の曲げで製造

 面白いことに、EGB-ARce の稼働率が大きく上昇すると、それに引きずられるようにEG-ARの稼働率も高まっているという。EGB-ARce 導入から約1 年。今やアマダのユーザーの中でも同社のロボットベンダーの稼働率はトップクラスであり、積年の課題であったボトルネックの解消に向けて大きく前進している。

新工場建設の思いも

 同社の業務は、一時期まではS 社向けの仕事にほぼ特化していたが、10 年ほど前からそのほかのアミューズメント関連会社の仕事や建設機械、サーバーラック、印刷機関連などほかの業界の仕事も引き受けるようになっている。中島社長は「S社やほかのゲーム機会社の仕事も大事ですが、アミューズメント業界には波があるため、経営を安定させ企業としての力を伸ばすには、他業界に向けた取組みが特に重要」と考えている。

 一貫生産体制の中では設置した固定粉体塗装の外部からの評判が特によい(写真7)。親から引き継いだものだけど自分も手伝ってきた証を残すため、工場拡張の強い思いがあり、経営者、従業員の士気はおおいに高まっている。
写真7 大物向けの粉体塗装ライン

写真7 大物向けの粉体塗装ライン

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