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プレス技術 連載「モノづくり革新の旗手たち」

2026.07.29

高性能加工機と職人技の組合せで他社にできないパイプ曲げを実現―ミナミ技研

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㈱ミナミ技研 代表取締役
南川拓也氏

 ミナミ技研(横浜市都筑区)はパイプ曲げ加工の専業メーカーとして、幅広いサイズ、形状の製品を手がける。約2,500型の内製金型を活用した短納期かつ高効率な加工が得意。薄肉パイプや小曲げRといった難易度の高い加工を可能にするための設備投資にも積極的だ。近年はベテランの技術を効率よく若手に伝えるためのデジタルデータ活用を推進する。社員の、そして会社の成長を止めないための取組みを南川拓也社長に聞いた。
――創業から一貫してパイプ曲げ加工を?

南川
 はい。1983 年に私の父が立ち上げました。もともと母方の祖父が東京都内で曲げ加工メーカーを営んでいて、父はそこに入社して腕を磨いて工場長まで務め、結婚後に独立したそうです。パイプが主ですが、長い金属であればフラットバーやアングル、チャンネルの加工も手がけます。

――主力製品を教えてください。

南川
 主力と言えるものは特になく、さまざまな分野の製品を扱っています。売上げで最も多いものが半導体製造装置関連で次がトラック部品、建設機械のフレーム、流量計の中に使われるパイプなどが続きます。2000年代初頭までは主要顧客の乗用車向けグリルガードが売上げの50%程度を占めていましたが、現在は多いものでも売上げの5%程度。その代わり取引先は1,500社に上ります。特に営業活動をしたわけではなかったのですが、他社で断られた仕事が自然と集まって今のスタイルになりました。

――加工する材質やサイズは?

南川
 鉄が7割、ステンレスが2割、アルミニウムが1割、そのほかにチタンや銅なども扱います。パイプ径はφ0.6~130mm 程度、長さは最大8mまで加工できます。最終製品のサイズは小さくて目に見えないようなものから、大きすぎてかかえられないようなものまで本当にさまざまです。パイプ曲げ加工メーカーの多くが「φ10~30mmまで」、「φ30~60mm まで」のように得意とする太さを定めている中、幅広い太さに対応できるのは当社の特徴と言えます。
元は2部品を溶接していた熱交換装置部品を一体化し、長寿命化した例。パイプベンダー+アングルベンダーで加工する

元は2部品を溶接していた熱交換装置部品を一体化し、長寿命化した例。パイプベンダー+アングルベンダーで加工する

φ0.6~130mm という幅広い径のパイプ曲げに対応できるのが同社の特徴の一つ

φ0.6~130mm という幅広い径のパイプ曲げに対応できるのが同社の特徴の一つ

――かなりの数の金型を保有しているそうですね。

南川
 約2,500型を保有しています。以前は外注していたのですが、2020年に金型部門をつくり金型製作から曲げ加工までの一貫生産体制を整えました。自動車の試作部品のような特殊な形状が求められるケースでは都度新規で金型を製作しなければならず、長いときで3 カ月という金型納期が壁となり失注がしばしば起こっていました。内製化したことで、新型の製作リードタイムを最短1週間まで短縮できました。

 また、以前は「A案とB案、どちらの金型形状がいいか」を気軽に確かめるのは難しかったのですが、社内に金型部門を設けたことで最適な金型形状を追求しやすくなりました。既存型を使えば多くの場合は新型をつくらなくても加工ができるので、顧客の初期費用低減にも貢献しています。

職人の育成期間を短縮

――金型の保管はどのように行っているのですか。

南川
 年に数回以上使う金型はすべて本社工場の棚に整理してあり、より使用頻度が低いものやサイズの大きな金型は倉庫で保管しています。パイプ曲げ用の金型は加工するパイプの外径と曲げRによって無限に種類が増えていきます。探すのも一苦労なので、保管場所がすぐにわかるように金型検索システムを活用しています。このシステムは生産管理システム内にあり、両方とも当社で運用しやすいよう社内でゼロから構築しました。生産管理システムは職人の育成にも役立てています。
約2,500 型ある金型は金型検索システムで保管場所を検索可能

約2,500 型ある金型は金型検索システムで保管場所を検索可能

――職人の育成ですか。

南川
 そうです。パイプ曲げは1 人前になるまで非常に時間がかかる世界で、パイプベンダーで10 年、アングルベンダーで20年と言われています。この期間を何とか短縮できないかと15 年ほど前から取り組んできました。具体的には、ノートパソコンやタブレット端末を現場の一人ひとりに支給して、文章で書き表すのが難しい加工ノウハウを写真や動画に残してもらっています。端末で生産管理システムを立ち上げ、加工中の製品の仕様を表示しながら録画ボタンを押すと撮影が開始され、撮影をやめると自動でその製品に動画が紐づく仕組みです。

 それだけだと、データがたまっていくばかりで活用できないので、生産管理システムを販売管理システムと連携させることで、パイプの内径、外径、曲げR、材料の種類などを入力すれば関連するデータを検索できるようにしました。当社の最大の特徴かもしれません。

――加工したことのないパイプでも、類似品の動画を参照できれば作業がスムーズに進みそうです。

南川
 ええ。以前は図面に手で加工のポイントをメモして、作業終了後にスキャンしてデータ化し、製品と紐づけていたのですが、手書きのメモだけでは資料として限界があります。ベンダーがどれだけ進歩しても、加工前のセッティングは職人技。パイプと会話をしながら、どうやればきれいに曲げられるのかを探っていくほかない。ですから、ベテランの職人がパイプのどこに、どのような治具をつけて曲げるのかを写真や動画として残すことに意味があります。実際に、若手が技術を習得するスピードが上がってきたと感じています。
タブレットで加工の様子を撮影し、写真や動画として保存。ベテランのコツを目で確認できる

タブレットで加工の様子を撮影し、写真や動画として保存。ベテランのコツを目で確認できる

――15 年くらい前からということは、職人の育成はかなり以前からの課題だったわけですね。

南川
 社長になる前から取り組んできました。当時の現場の年齢構成は70 歳前後の職人が半数、ほかは20代、30代の若手でした。70歳前後の方々は他社を経験して当社で働いていたので、曲げ加工で必要とされる発想力が若手とまったく違います。彼らが1 人でやっている加工を20代に任せようと思ったら、2~3人で担当しないと同じ加工ができないレベルです。

 一方で、職人の多くは言葉で説明するのが苦手なので、いかに負担をかけずにノウハウを吸い上げ、整理するかを考えました。暗黙知のデータ化・蓄積は属人化しがちな職人の技術を会社に残すことにもつながります。また、機械で置き換えられる仕事は機械に置き換え、少ない人数で効率よく生産できるように設備投資にも力を入れてきました。

薄肉パイプへの対応力を強化

――特徴的な設備にはどんなものがありますか。

南川
 オプトン製のCNCパイプベンダー「M-ECO35-SW」を保有しています。左右どちらかに開いて曲げる単一方向曲げの機械と違い、M-ECO35-SW は左右どちらにも曲げられるスイッチベンダーです。製品形状によっては、機械との干渉を避けるために、右開きの機械で曲げた後、左開きの機械に載せかえて再度曲げる必要がありますが、慣れていないと精度がばらつく原因になります。スイッチベンダーを使うことで精度と作業性を両立できます。

 また、2026 年6 月に稼働する新工場には、極小R 曲げが可能な千代田工業製のCNC パイプベンダー「EXシリーズ」を新規導入しました。一般的なパイプ曲げでは直径の2 倍の曲げR(2DR)が最小と言われていますが、同機は1DR の曲げが可能です。曲げR を小さくしようとすると、薄肉パイプほどしわや割れが発生しやすくなるので、従来こうした曲げ加工は職人芸に頼るほかありませんでした。同機の導入で薄肉パイプへの対応力が増します。ほかにも新規ベンダーを導入していますが精度向上のため油圧駆動を廃し、すべてサーボモータ駆動のベンダーを導入しています。
アーム型3 次元測定機を活用。CAD データとの差分やCNC ベンダーでの修正方法までわかる優れもの

アーム型3 次元測定機を活用。CAD データとの差分やCNC ベンダーでの修正方法までわかる優れもの

――設備投資にかなり積極的な印象を受けます。

南川
 今までできなかったことをできるようにしていかないと、現状維持すら難しい。今手がけている半導体製造装置の仕事も、スイッチベンダーがなければコストの面で受注は難しかったでしょう。また、当社のような業態の会社では、仕事の話が来た時点で対応できないと失注します。先手、先手での設備投資が重要です。

――営業面で狙っている分野は?

南川
 選択肢の一つとして海外展開を視野に入れています。需要の見極めは必要ですが、今後国内の金属加工産業が伸びていくか不透明な中で挑戦する価値があるのでは、と。たまたま当社で初めて採用したスリランカ人のスタッフが非常に優秀でぐんぐん育っています。彼は英語も堪能なので、彼を中心にアジアやヨーロッパの展示会に出展できるかもしれません。ほかには加工の難易度が高く、品質保証も求められる航空宇宙産業や防衛産業の受注に注力していく方針です。
同社初の外国人スタッフは英語も堪能なスリランカ人。めきめき腕を上げて周囲を驚かせている

同社初の外国人スタッフは英語も堪能なスリランカ人。めきめき腕を上げて周囲を驚かせている

――課題はありますか。

南川
 人の教育の部分ですね。当社の現場では、1 枚の図面に対して一人の作業者が責任をもって曲げ加工から最終検査までを担当する“一人親方方式”を採用しています。それだけに育てるのが難しい。また、ベテランの技術を維持しなければなりませんが、昨今は維持するだけの仕事量の確保が難しくなっています。何を残し、何を維持していくかの取捨選択が必要です。

 加えてIT 人材の育成も課題です。現在、座標点の取得や機械干渉の有無を確認するために不可欠な3次元CAD自分と工場長の2人くらいしか使えません。若い人にももっと学んでほしいと思っています。

――御社のシステムは社長が構築されたそうですが、もともとIT に関心があったのですか。

南川
 いいえ、高校卒業後に入社して現場で働く中で苦労したのがきっかけです。当時の主力製品に階段の手すりがあったのですが、階段の形に沿わせてつくる手すりは1 つ1 つ形が違うので既存の検査治具で図面通りに仕上がっているかを確認するわけにいきません。どうするかと言うと、墨つぼや分度器を使って工場の床に原寸大の手すりを描き、その上に実物を置いて確認していました。描くのに3 時間。失敗したら描き直しです(笑)。

 この作業が嫌で嫌でたまらなかったので、2次元CADを覚えて当時安価になりつつあった大判プリンタを導入し、原寸大の図面を出力できるようにしました。「これはやらなくていいんじゃないか」、「変えられるんじゃないか」という見方をし始めたのはその頃ですね。

――いろいろと変えてこられたようですが、理想とする会社象は?

南川
 社員一人ひとりが「成長しよう」と思ってくれる会社、そのための余裕がある会社が理想です。成長を促すためにも、先ほど紹介した写真・動画の活用以外にも人が育つための仕組みが必要だと考えています。例えば今、現場では担当する機械が固定されているので長期休暇がとりにくい。誰が休んでもいいように業務分担が可能でかつ一人ひとりがプロフェッショナルであるという状況を目指していければと思います。
みなみかわ たくや:1976年8月5日生まれ、49歳。1999年、ミナミ技研入社。2016年、社長就任。中学・高校ではブラスバンド部に所属し主にトランペットを担当。最近の趣味はソロキャンプ。虫が少なく、焚火も楽しめる冬の時期が特に気に入っている。

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