せんごく けいいち:同研究所 代表社員 日産自動車にて物流IEとして新工場・新ラインの物流設計業務、その他輸送や構内物流、荷姿の効率化に携わる。
日本の製造品質は世界の中でもトップレベルにある。製造会社の品質管理が優れていることに異論を唱える人はいないだろう。工場では品質向上に血道を上げ、従業員の意識向上のための活動を行い、現場レベルでのQC 活動も定着している。その結果、高品質の製品をつくったあとに物流現場で出荷に向けての作業を行うが、この過程での品質を物流品質と呼ぶとしたらその水準はどうだろうか。仮に物流品質に不備があれば、製造工程の努力は水の泡だ。そうならないために物流品質向上方策について考えていこう。
物流品質の類型を理解する
物流品質の類型とは以下の5 つだ。「①納期どおりの納入(納入日、納入時刻)」「②指定場所への納入(届け先、指定荷降ろし場)」「③注文どおりの商品」「④注文どおりの数量」「⑤注文どおりの品質」(図1)。これらを要求品質としたときに、それを満たさない状態を物流品質不良と呼ぶ。そしてその例は以下のとおりだ。「①未納、納入遅れ」「②納入(供給)場所違い、荷降ろし場所違い」「③商品間違い(誤品)」「④数量間違い(誤数)」「⑤商品の損傷、包装(梱包)の損傷」。以上の5 つの例をイメージしていただきたい。
これらが工場で発生していないか。工場外で出荷倉庫を構えている場合、そこで発生していないか。発生の状況、たとえば類型ごとの不良件数や不良率などを把握できているか。皆さんはこのようなことをきちんととらえていただきたい。
よくある物流品質不良とは
上記の物流品質不良の中でも、特に多く発生しがちな例を挙げてみたい。その1 つ目が「誤品」で、間違った商品を顧客に届けてしまうことだ。この誤品の中でもさらに多発している事例が「ラベルの貼り間違い」である。せっかく高品質の製品を生産し、出荷のための梱包も抜かりなくやったとしても、最後に貼り付けるラベルが間違っているパターンで、これは梱包現場に複数のラベルを置いていることが要因だ。たとえばセット部品を製品として出荷する場合、2 つの出荷容器にそれぞれ反対のラベルを貼付してしまう事例がある。製品番号も酷似している可能性があるので、原則として1 つずつ出荷準備をすると間違いを防ぐことができる。
2 つ目が「誤数」だ。多数個出荷で容器内に仕切りがなく、バラ入れの場合に発生しやすい。数量カウントを甘く見てはならない。1 個多くても少なくても不良は不良だ。各工場でいろいろな工夫を施して誤数対策を実施しているので、これについては次回解説する。
なぜ物流ミスが発生するのか
では、なぜこのような物流不良につながるミスを発生させてしまうのだろう。ある事例から考えてみよう。
昔スペインのカナリア諸島で史上最大の航空機事故が発生した。濃霧の中、航空機がこれから離陸しようというタイミングで管制官と通信をしたところ、管制官が「OK。離陸待機せよ」と回答した。これを管制塔とのやりとりの責任者は「OK」の部分は聞き取れたものの、後半が通信不良でよく聞き取れなかったそうだ。しかしそこで機長が「OK と言ったのだから離陸してよいのだろう」と判断し、航空機を発進させてしまった。結果的に滑走路上で別の航空機と衝突し、最大の事故に至ってしまった(図2)。
ここで3 つの要因が事故につながったといわれる。1 つ目が「濃霧という天災」だ。そして2 つ目が「通信不具合という過失」。最後の3 つ目が「十分確認せずに発進させた故意」だ。実は、物流現場でも同様の現象が発生しており、それが物流品質不良につながっていると考えられる。「天災とも思えるオーダー数量の大きな変動」「工場内での作業指示の伝達ミス」、そして「十分な確認の不足」。これらはやや生産工程と温度差があり、物流特有の話かつ弱点でもある。そこを是正していかないと品質向上は図りづらい。
1 点だけ取り上げるとすると、それは「基準と手順の不足」だろう。製造工程にはきちんとした品質基準が設けられているが、物流工程にはそれがない。製造工程にはしっかりとした作業手順(標準作業書)があるが、物流工程にはそれがない(ケースが多い)。これでは、品質向上どころか生産性の向上にもつながらない。この点について次回詳しく解説したい。
今回のまとめ
①製造工程では長年にわたる品質向上活動の結果、世界でもトップレベルの品質を確保できた。しかし、出荷段階で物流品質に不備があれば製造工程の努力は水の泡だ
②物流品質の5 類型とそれを満たさない物流品質不良について認識しよう
③物流品質不良として多発しがちな「誤品」と「誤数」について特に気をつけたい。特に、ありがちなラベルの貼り間違いは複数のラベルを現場に置いておくことで発生している
④かつて大きな航空機事故が発生したが、物流品質不良の発生要因もその事故要因に似ている点がある。さらに、製造現場には当たり前のように存在する「基準と手順」が物流に欠けていることは意識して改善しなければならない