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型技術

2026.06.08

中国勢台頭下で見直しが進む日系金型の競争軸─PT.ISKINDONESIAの現地完結モデルに見る構造転換─

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 インドネシアの金型市場で競争構造が変化している。従来は「価格は中国、品質は日本」という棲み分けが暗黙の前提だった。しかし近年、中国系メーカーは価格競争力に加え、納期対応力、意思決定の速さ、現地営業力を武器に存在感を高めている。

 今や問題は価格だけではない。短納期、迅速な改造、現地修理対応、工程改善提案といったユーザーの要求にワンストップで応えられる体制を構築できるかどうかが求められている。こうした環境下で、いち早く「現地完結型」への転換を進めているのが、西ジャワ州のPT.ISKINDONESIA(従業員約64人)である(図1)。
図1 PT. ISK INDONESIA 外観

図1 PT. ISK INDONESIA 外観

アルミ鋳造金型特化と“垂直統合型”運営

 同社は日本のISKコーポレーションを母体とし、2004年にインドネシア法人を設立(図2~図4)。アルミ鋳造用金型(低圧、重力、ハイプレッシャーダイカスト)を主力とする。顧客にはAstraDaihatsuMotorやYamahaMotorなどの日系企業が含まれる。
図2 PT. ISK INDONESIA 工場内

図2 PT. ISK INDONESIA 工場内

図3 鈴木勝博 PRESIDENT DIRECTOR(左)とMIRULLAH DIRECTOR(右)
 特徴は、設計から加工、組付け、検査、出荷、改造対応までを内製化した垂直統合型の運営にある。これは単なる「フルライン体制」ではなく、外注依存を減らすことでリードタイム短縮とともに品質を確保する戦略である。

 同社はNCフライス盤、形彫り放電加工機(主に牧野フライス製作所製)、ワイヤ放電加工機(ソディック製)、直径1m加工対応の立形旋盤などを備える。設計ではCADmeister、CADSUPER、流動解析にADSTEFANを使用。CAMはCAM-TOOLおよびMastercamを活用する(図4)。
図4 CAM室で操作

図4 CAM室で操作

 注目点は、CAM-TOOL導入後に直彫り仕上げ比率が上昇していることだ。放電加工依存を下げ、直彫りで高精度仕上げを行うことで、①加工時間短縮、②電極製作コスト削減、③面粗さ安定、④再加工リスク低減、といった効果が期待できる。これは単なる設備更新ではなく、「工程再設計」に近い取組みと言えよう。ダイスポッティングマシンや各種クレーンの整備(最大30t)も、大型金型の内製対応比率を高める狙いが明確だ。

 さらに3次元測定機(図5)に加え、非接触アームスキャナやハンディレーザースキャナを導入。全面スキャンや顧客先測定にも対応する。検査体制の強化は単なる品質保証ではなく、顧客のトラブルに即応できる体制の強化である。現地での測定・解析が可能であれば、改造提案や不具合原因の即時特定につながる。これらは海外製品との差別化要素となる。
図5 3次元測定機で検査

図5 3次元測定機で検査

「日本人常駐型」からの脱却

 現在、同社が掲げる最重要テーマは「現地化」である。従来は日本人常駐による品質・納期管理が中心だった。しかし現在は、ローカルスタッフ主体で自律運営できる体制への移行を進めている。

 この背景には、中国勢の台頭だけでなく、現地スタッフの人件費高騰、意思決定の本社依存、技能移転の属人化といった日系企業の課題がある。

 同社は未経験者を採用し、6カ月間の基礎訓練を実施。図面読解、測定機使用、加工基礎をOJTで習得させている。また、作業手順書は、問題が発生するたびに整備を進め、標準化を図っている。さらに週1回の改善活動も実施し、ISO体制のもとで5Sを推進している。

構造変化の中で問われる営業戦略

 インドネシア市場で日系が競争力を維持するには、営業戦略の見直しが不可欠だ。

1.単体販売から工程提案へ
 金型単体の価格競争は限界がある。顧客の要望に応えるカスタマイズ、治具設計、流動解析支援まで含めた「工程改善提案型」営業へ転換すべきである。

2.“現地完結度”の可視化
 顧客が知りたいのは「どこまで現地で完結できるか」である。部品在庫、修理対応時間、改造実績などを数値で示すことが信頼につながる。

3.デジタル×デスキリング(脱技能化)提案
 慢性的な技能不足を背景に、CAM活用による加工標準化、測定データの共有化、AI活用による顧客サービスの高度化といった提案は差別化要素となる。

競争は価格から総合力へ

 インドネシア市場における競争軸は、価格競争から総合力へ変わりつつある。同社の取組みは、日系金型メーカーが直面する構造転換を象徴している。今後問われるのは、現地に日本品質を持ち込むことではなく、現地で自律的に回る品質体制を構築できるかである。

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