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プレス技術 連載「新人技術者のためのものづくり現場の基礎知識」

2026.07.15

第5回 「根本を理解すること」が大事な理由

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㈱KOJ 松岡功次

まつおか こうじ:代表取締役。製品の「根本理解」を重視する板金加工メーカー社長。既存事業に加え、最近は終活関連の分野での事業構築を試行錯誤している。
 筆者が新人技術者に勧めるスキルは「製品に求められる根本を理解すること」です。根本とは「製品がどのような用途で使用されるのか?」、「その使用される用途で適切な製品なのか?」、「適切な製品を製作する際に最適な製造方法は何か?」、「その製造方法は自分で理解しているのか」にあります。

自己紹介

 まず、自身のことを述べます。筆者は埼玉県で金属加工業を営む「町工場」の社長です。現在の従業員はベトナム人を含めて14 名。おもな製品は避難器具や共同住宅などで使用される門扉(写真1)および医療器具、建築資材など、多品種小ロットの生産を得意としています。金属の板や長尺の鋼材を仕入れ、切断、折曲げ、溶接などの加工を行い、最後に仕上げ工程を経て製品になります。加工機械は4 ~ 5m の材料が加工できる比較的大型の機械を揃えています。
写真1 マンション外構門扉

写真1 マンション外構門扉

スキルには2 つの分野がある

 スキルと言うと、例えばヤスリでバリをとるときにヤスリを押してとる(引いてとるのではない)など細かなテクニック(ドックアイ)を想像するかもしれませんが、筆者は鳥が天空から地上を見るように広い視野(バードアイ)と細かなテクニックの両方を求めます。そもそもスキルには2 つの分野があります。

 1 つ目は人間関係やコミュニケーションにかかわるものです。2 つ目はモノづくりの領域です。設計図面の作成からスタートし、切断、折曲げ、溶接など多数の工程を行い製品にしていきます。そのため、各工程での仕事がいい加減だとその後の工程の担当者がいい加減な仕事の尻ぬぐいをする必要があります。次工程の作業も根本理解し、仕事の引継ぎをしっかりしてください。

 1 つ目に関しては次回(本連載第6 回)、別の筆者が執筆するので今回はモノづくりのスキルをバードアイの面からお伝えします。

製品の「働き」を考えよう

 あなたのつくる製品が組立会社(発注会社)のところで、あるいは消費者が使うときにどのような役割を果たすかを考えてみてください。ねじを例にして話します。ねじは2 つ(または2 つ以上)の部品を結合します。「結合する」という働きをするためにねじは存在します。

 また、筆者の会社がつくる門扉は、敷地や建物内へ入ってくる人を選別するために設置しています。一言で言うと「防犯」の働きをしています。

働きをつくれるのが「スキルのある人」

 あなたの会社はなんらかの働きをする製品をつくっています。そのためには、構造(形)、材料、機械、つくり方に目を向ける必要があります(図1)。
図1 「働き」をする製品をつくるためにスキルが必要

図1 「働き」をする製品をつくるためにスキルが必要

 スキルは「技量」とも言います。市場で求められる働きを理解して製品に織り込む作業を適切にできる人を「スキルがある」と言い、それのない人を「スキルがない(または足りない)」と言います。筆者の町工場にも年齢に関係なくスキルのある者とない(足りない)者がいます。その差は歴然としているのです。

 わが社の製品で説明すると、スキルのある者は門扉の働きを理解しており、その働きを織り込む作業をします。逆にスキルのない(足りない)者は形をつくろうとしています。両者ともに「形をつくる」のは同じですが、門扉をつくる際はその働きを理解しないと、製品が「売り物」としての意味をもたなくなってしまいます。門扉を設置するのは防犯のためです。門扉のこの役割を頭に入れ、そのうえで製作にとりかかります。

 鉄の角材で四角い枠を溶接・組立てすると想定します。入社したばかりの人でも2 日もあれば溶接だけはできるようになります(形はできますが製品にはならない)。溶接は高温で2 つの金属を接合するので、溶接部分は熱で膨張傾向になります。逆に常温に冷えると収縮傾向になります。

 スキルのある人の溶接は膨張・収縮を考慮して四角い枠が維持(製品として良品)できるように作業の準備をし、溶接します。溶接のスキルのない(足りない)人が溶接した四角い枠は、ひし形になったりねじれが発生したりして不良品となります。溶接技術者というさらにスキルの高い人はこの不良品を修正し、製品にすることができます。ここで初めて溶接技術者として高評価を受けるでしょう。根本理解ができてこそのスキルです。

スキル習得までの3 ステップ

 スキルは3 つのステップで習得します。

1.教えてもらう

 上司・先輩があなたに初めての仕事を指示する場合、身振り手振りを入れて以下の4 つを教えてくれるでしょう。①この仕事はなんのために行うのか、②どのように行うか、③やってはいけないことは何か、④もっと良い方法があれば提案すること、の4 つです。

 上記の4 つを一度にまとめて教えてくれるとは限りません。断片的に、折に触れて、あなたの習熟に応じて指導してくれるでしょう。

2.やってみる

 教えられたとおりにやってみます。機械の加工では加工手順、溶接などの手作業では加工の要点を振り返り、まずは上司・先輩と同様の作業をしてみます。

3.確認する

 上司・先輩または検査係に出来上がった製品の検査・評価を受けます。検査内容の要点をノートなどに書きとめ、特に不満足な部分は事実を正確に記録し、その不具合原因を探るとよいです。この不具合の原因を理解して自分で解決することがスキルアップにつながります。


 日常の仕事ではさまざまな問題が発生すると思いますが、問題を解決せずに先送りしてしまうと、解決するためのスキルを身につけることができなくなります。苦しい状況を解決できるか、解決できないかはあなたの取り組み方にかかっています。問題を解決できるのは根本理解ができた人の特権であり、あなたがこれをできるようになれば大きな強みになるでしょう。

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