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型技術

2026.10.09

金型産業の過去・現在・未来を語る―前編:金型メーカー編

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 型技術協会は、本年で40周年という大きな節目を迎える。本誌ではその記念企画として金型製作・運用に関わる分野の企業による座談会を企画した。前編では、同協会員である金型メーカーの経営者が一堂に会し、金型業界のこれまでと未来について語り合う。AI・デジタル活用の可能性、人材育成、海外展開、産学官連携まで議論は多岐にわたる。変化の時代における課題と展望を率直に共有し、日本の金型技術の強みと次代への道筋を探った。
(左から)松原 雅人氏[㈱日本精機 常務取締役COO]、渡邊 祐子氏[㈱MEISEI 代表取締役]、近藤 紗也子氏[ムツミ工業㈱ 代表取締役社長]、大髙 晃洋氏[㈲大髙製作所 代表取締役]

(左から)松原 雅人氏[㈱日本精機 常務取締役COO]、渡邊 祐子氏[㈱MEISEI 代表取締役]、近藤 紗也子氏[ムツミ工業㈱ 代表取締役社長]、大髙 晃洋氏[㈲大髙製作所 代表取締役]

大髙
 本日の座談会の司会を務めさせていただきます。最初に皆さんの簡単な自己紹介をお願いします。私は横浜市でダイカスト金型を主に製作している大髙製作所の代表を務めています。父が創業した会社で、父が病気で倒れたのをきっかけに2代目として後を継ぎました。いわゆる「一人親方」状態で経営している金型メーカーで、皆さんと経営戦略の立て方など異なる部分が多いと思います。今日はよろしくお願いします。

松原
 日本精機は自動車、二輪車、産業機械分野のお客様にダイカスト金型を中心に提供している会社です。私はここで長年、金型製作における技術開発や管理、営業に携わってきました。近年では金属AM 技術を活用した高機能ダイカスト金型の開発と実用化を推進しています。今は常務取締役という立場ですが、創業家ではありません。現在は主に事業運営全般を担当していて、2027 年にはベトナム・ハノイに設立する子会社のTooling Innovation の代表も務める予定です。

渡邊
 MEISEI は父が興した会社で、大髙さんと同じく私も2 代目です。2023 年7 月に代表を継ぎました。当社は自動車用のヘッドランプやリアランプなどの樹脂金型を主に製作しています。近年はランプ以外に自動車の内外装部品を手がける一方で、金型メンテナンス事業にも力を入れ始めているところです。本社は愛知県ですが、九州に2 つの生産工場があるほか、ベトナム・ハノイにも工場があります。

近藤
 私は2026 年4 月に父の後を継いで3 代目の代表に就任したばかりです。ムツミ工業はもともとタイル製造向けの自動機をつくる会社として創業しましたが、タイルをつくる金型も必要だということで、金型も併せて製作するようになりました。それで今は自動機の設計・製作事業とプレス金型の設計・製作事業の2本柱でやっています。お客様としては自動車部品メーカーや家電メーカーと多くお付き合いをさせていただいています。

大髙
 現在皆さんは会社の経営を担っているわけですが、これまでに現場の経験はありますか。松原さんは現場からキャリアを積んできたのですよね。

松原
 はい。仕上げの組立てや汎用機の操作などで約30 年、現場に携わってきました。当時はNC 機がテープで動いていたのですが加工がすごく遅かった。木型をスタイラスでなぞって倣いフライス盤で加工するのが最新だった時代です。これまで生産管理や営業にも携わってきましたが、機械加工が一番長かったです。今は事業立上げなどの仕事がメインですが、やはり現場は好きで、チャンスがあれば現場もやりたいです。

渡邊
 私は24 歳頃に事務として入社したのですが、当時はちょうどWindows95 が席巻しだした頃で帳票類の電子化などを行っていました。現場の加工機械も先ほど話に出たNC テープからコンピュータ制御へとデジタル化が進み始めた頃で、現場でCAM の担当もやりました。当時のCAM は完全にマニュアルで、加工の軌跡を手で1 本1 本設定していく作業を黙々とやっていました。その後は米国へ半年間ほど留学して、帰国後から20 年以上、営業畑を歩んできました。

近藤
 私はほとんど現場経験がなくて、10 カ月ほど設計室で図面の研修を受けた程度です。順送プレス加工では、射出成形やダイカストと違って1つの金型が10~20 工程を担っていて、成形品がその中で少しずつ形を変えていくのですが、最終製品の図面を見て何工程でそれがつくれるかを考えるといった研修でした。当社が展示会に初出展する際に、展示する手回しプレスに使う金型を研修として設計させてもらったこともあります。現場での実体験はあまり多くないですが、大学では工学部で材料や塑性加工の勉強をしてきたので、お客様とやり取りする中ではそこで得た知識が役立っています。
(左から)松原 雅人氏[㈱日本精機 常務取締役COO]、渡邊 祐子氏[㈱MEISEI 代表取締役]、近藤 紗也子氏[ムツミ工業㈱ 代表取締役社長]、大髙 晃洋氏[㈲大髙製作所 代表取締役]

金型製作におけるAI の可能性と落とし穴

大髙
 皆さんそれぞれの立場で金型加工の歴史に触れてきたのですね。その中で、技術に関する情報などはどのような形で得てきましたか。

渡邊
 やはり人と実際に出会って意見を交わすということが多かったと思います。当然、型技術協会や日本金型工業会のつながりも重要で、そこで皆さんと「あれがいい、これがいい」と会話する中で情報を仕入れていました。

大髙
 昔はインターネットもなかったから、リアルで人とつながらないと知識の幅がまったく広がらないという状況がありましたよね。

松原
 私も現場の課題を解決しなければいけない、というような場面では、とにかく必要な情報を知っていそうな人に聞くということをやっていた覚えがあります。今はまったく違いますよね。スマートフォンですぐ調べられますから。

渡邊
 チャッピー(ChatGPT)が基本的なところは瞬時に教えてくれますよね。ただ、専門的な深い部分はリアルな実体験を積んできた人に聞かないとわからないかな。

大髙
 AI は驚くほど進歩してきていますが、金型製作に関しては情報が偏りやすくて、ほしい情報がなかなか的確に得られないという印象ですね。

渡邊
 きっと、金型製作の場面でAI を使っている人口がまだ圧倒的に少ないからでしょうね。

松原
 ただ、やはりAI の可能性はものすごいです。当社でもChatGPT をカスタムして業務で使い始めていますが、受発注の情報や外注企業の納期設定などの販売管理を連動させて、その情報を社内の関係者に展開するといったことが抜け漏れなく自動でできる。そうした仕組みを組むことで、社内の各人の仕事の質や達成度なども見える化して、きちんと仕事ができていない人に角を立てずに注意を促すこともできる。私のような人が「なぜやらないんだ」と言うと圧迫感が出て、能力がある人の芽をつぶしてしまうかもしれないですから。AI という部分では大髙さんは強いでしょう。

大髙
 いや、当社はまだそういうのはやっていないです。例えばプラモデルなどの成形品のようにある程度形が決まっているものだと、AI に形状のパターン学習をさせられて活用もどんどん進むのだろうと想像できますが、当社の場合は自動車部品や産業機械用のヒートシンクなど成形品がバラバラなので、金型製作で活用するのはAI がもう少し進化して融通が利くようになってからかなと思っています。そのタイミングを見極めている状態ですね。AI 活用に関連して言えば、セキュリティに関する怖さもありますから。

松原
 それはあります。

渡邊
 これだけAI が当たり前のものになってきていますから、社内に対する注意喚起は早めにやらないといけないと思います。AI の進化が急速なので、知らない間に取り返しのつかないことが起こるかもしれないという不安もあります。定期的にアップデートした情報を社内で共有していくためにも、まずは自分たちが勉強しないと。やはりIT リテラシーの底上げが大事です。

近藤
 IT リテラシーで言えば、AI も含めてさまざまなデジタル技術を社内の方々が業務に活用するにあたっては、経営者がきっちりと境界の線引きをしなければならないのだろうなと感じています。今はスマートフォンを使うことが当たり前になりすぎていて、現場で撮った写真を気軽にSNS などに上げてしまうといった危険もあります。特に若い方では、何がOK で何がダメかという基本的な部分から確認する必要があると思います。
(左から)松原 雅人氏[㈱日本精機 常務取締役COO]、渡邊 祐子氏[㈱MEISEI 代表取締役]、近藤 紗也子氏[ムツミ工業㈱ 代表取締役社長]、大髙 晃洋氏[㈲大髙製作所 代表取締役]
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