icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc
SEARCH

工場管理 連載「闘う!カイゼン戦士」

2026.01.28

改善アイデアを商品化! 開発マインドを磨き、1人ひとりが輝く職場へ―エーディエフ

  • facebook
  • twitter
  • LINE

 日常的な改善の成果を事業につなげることはできないだろうか」。アルミ製品の製造販売を手掛けるエーディエフ(大阪市西淀川区)は、現場の困りごとを解決し、それを新商品や新サービスに展開していく仕組みづくりを模索している。アルミフレームを使ったパーテーションや簡易クリーンルーム、物流ボックスなど顧客の要望にきめ細かく応えるモノづくりを得意とし、提案力をさらに磨くための一環として改善活動を位置づける。今年度から5年間でビジネスアイデア50 件を発案し、全従業員の年収100 万円アップを確約する事業計画に着手。従業員のモチベーションを引き上げ、自主性を活かした改善活動に乗り出した。

試行錯誤の改善活動

 エーディエフは1999 年に設立。社名のADF はAluminum Design Factory の頭文字で、アルミの押出断面をデザインする工房との意図が込められている。発足以来、アルミフレームを専用のジョイントで組み立てる自社オリジナルフレーム「アルフレーム」を使った一品一葉のオーダーメイド事業を主力に展開。一方、2006 年に輸送・保管ボックス「ダンカーゴ」、05 年には簡易ワークルーム材を開発し、07 年に簡易クリーンルームを投入するなど事業分野を開拓しながら、メディカルや食品業界へも販路を拡大している。
簡易クリーンルーム「E-Room+」。クラス1000以上の汎用分野を対象に顧客ニーズに合わせた施工が可能

簡易クリーンルーム「E-Room+」。クラス1000以上の汎用分野を対象に顧客ニーズに合わせた施工が可能

 従業員は現在24 人。定年規定はあるものの、本人の希望で継続できる「結果的終身雇用」を採用。年齢層は20 ~ 70 歳代と幅広い。

 業容の拡大に伴う従業員の増加を背景に業務改善に着手したのは12 年。「48 会議」と称する改善活動をスタートした。週1 回、年48 回会議を開き、「効率を上がることを常に考え、ルールを定めて、それを守る」を掲げ、安全・改良・改善・提案をテーマに取り組んだ。しかし、結果は1 年続かず活動は終了した。「完全に空回りでした。従業員アンケートに今なら完全にパワハラ認定されるコメントをつけたりして従業員がついてくるわけありません。海外出張で不在が増えると誰も会議を開かず、9 カ月で自然消滅していました」とやらされ感に満ちた活動だったと島本敏社長は振り返る。
バリ取り機の集塵機台車と囲い。70代のベテランが改善提案で開発

バリ取り機の集塵機台車と囲い。70代のベテランが改善提案で開発

現場の改善によって材料の発注も最適化を実現

現場の改善によって材料の発注も最適化を実現

 その後、定期的な活動はしばらく実施しなかったものの、現場での作業改善や業務改善は日常の仕事を自ら快適にしようとの意思で行われていた。ただ、「中小企業は仕事が暇になると改善に取り組み、忙しくなるとそれどころではなくなることの繰返し。これでは継続は難しい」(同)というのが実情。加えて、繁忙期が続く中、整理整頓が行き届かず、数百万円の材料を間違えて廃棄したり、顧客に不良品を送付したりするなどのミスが多発し始めた。「事業に支障をきたすくらいなら時間をつくって現場の困りごとを解決する場を持つ必要がある」と判断し、次に着手したのが「開発会議」だった。

開発会議から生まれた新製品「ダンカーゴL 型タイプ」

 開発会議は製造、設計、営業など各部署から参加する混成チームを結成し、テーマを決めて3 年間で商品化する活動。月1 回定期的に集まって商品開発に取り組んだ。次の会合までに試作をつくるための時間は就業時間内でとれるようにした。17 年にスタートした第1 期ではダンカーゴの組立をさらに簡易にした「ダンカーゴL 型タイプ」の商品化に成功した。「商品開発部の担当者がリーダーで、人一倍の熱意で参加者からアイデアを集め実現にこぎつけました。1 人ひとりがこの熱量を持てば会社は大きく変わると感じました」と島本社長は従業員の可能性を確信した。

 第2 期ではダンカーゴの内部にクッション材をつけて積荷保護用のストレッチフィルムを不要にする環境対応型「ダンカーゴもちもち」、災害救助での活用を狙ったドローン用の岡持ち「トップ雁(ガン)」などユニークな開発に着手。いずれも商品化にまでは至らなかったが、テーマを決めることで情報収集へのアンテナが広がり、アイデアが生まれることを参加者らは実感できたという。

 ダンカーゴもちもちの開発に携わった田中成佳物流事業部兼広報担当は「チーム名を『環境大臣賞』と名づけて同賞を目指して取り組みました。商品化はかないませんでしたが、普段は話す機会の少ない製造や設計の方々と1 つのテーマについて取り組むことでたくさんのことが学べ、自分のモチベーションアップにもつながりました」と部門を超えた交流に刺激を受けた。

 ただ、開発会議は一定の成果を得たものの、外部講師を招いた取組みだったため研修ととらえる従業員も多く、自発的な活動に向けて島本社長はさらに工夫が必要と考えるようになった。

アイデア50 件、年収100 万円アップ

 そこで新たに策定したのが「5・50・100 計画」(ゴーゴーイチ計画)。5 年で50 のアイデアを出し、全従業員の給料を今よりも100 万円アップさせることを掲げる。「数字を出すのは初めてですが、社長が『売上倍増するぞ』と号令かけても従業員にとっては『何それ、しんど』って感じです。それよりも全従業員で50 件のアイデアを提出し、その中から新規事業を生み出していく。自分たちの困りごとやアイデアを形にすることで商品化できる。そうした感覚を全従業員が持って習慣化していくことが一番の目的です。モノづくりを楽しみながら1 人ひとりが成長し、結果を出せる企業へと変えていくことは可能だと思っています」と島本社長は意気込む。
ゴーゴーイチ会議。従業員全員で50のアイデアを厳選し、事業化を目指す(写真提供:エーディエフ)

ゴーゴーイチ会議。従業員全員で50のアイデアを厳選し、事業化を目指す(写真提供:エーディエフ)

 25 年2 月度からスタートし、月1 回の製造会議には製造、設計、営業ら各部門が参加し、現場の困りごとや問題の抽出を行う。

「自分たちで改善した台車や作業台がもしかしたら商品化できるかもしれない。そういう視点で会議を運営しています。たとえば最近好調な当社のアルミ台車『ちょいカーゴ』はアルミフレームの上に手持ちのパレットを置くだけで台車になる製品です。これは展示会の搬入作業に使われる木の板にキャスターを取りつけた簡易台車からヒントを得て開発したものです。当社の現場にもこうした商品化のタネは埋もれているはずです」(同)と単なる改善に終わらせず、商品化にこだわることで従業員のモチベーションアップを狙う。

 とはいえ、製造部門は営業や広報などと比べ、外部との接触がないため、さまざまな情報に触れる機会がどうしても少なく、アイデアも限定されてくる。そのため同社では「2025 大阪・関西万博」の通期パスを全員に配布、興味のあるパビリオンやイベントにいつでも行けるようにした。

「万博は各国の10 年後の未来を見られる絶好の機会。アイデアのタネ探しには最適なイベントです。積極的に行ってもらいたい」と島本社長は情報のインプットをサポートし、新しい世代の発想に期待を寄せる。

「ゴーゴーイチ計画はスタートしたばかりで運営などもみんなで検討しながら進めていきます。四半期ごとの業績報告会を成果発表の場として活用したり、計画名にちなんだ大阪名物の豚まんを食べながら会議をしたり、アイデアを出しやすい雰囲気で進め、さらに社外に発信することで当社のファンを増やしていきます」(同)

東京ショールーム開設

 一方、同計画達成に向けて拠点拡大、新サービスの導入にも取り組み始めた。大阪、福岡に次ぐ拠点として3 月に関東の顧客をターゲットにした「東京日本橋ショールーム」(東京都中央区)を開設した。ダンカーゴや簡易クリーンルーム「E-Room+」などを展示し、情報発信の場として活用し始めた。
3月に開設した東京日本橋ショールーム。関東の顧客開拓の拠点として活用していく(写真提供:エーディエフ)

3月に開設した東京日本橋ショールーム。関東の顧客開拓の拠点として活用していく(写真提供:エーディエフ)

 さらに新サービスとして6 月からサブスク事業にも乗り出す。第1 弾は大型冷蔵ボックス「ダンサーモ」。- 30℃~ 25℃くらいの冷凍、常温が求められる食品、医療品などを対象とした簡易保冷ボックスで保冷剤など付属品と合わせてサービス提供していく計画だ。

「収益力を上げるにはオーダーメイドから脱却していく必要があります。そのためには強い製品が不可欠です。ゴーゴーイチ計画でそうした製品を1 つでも多く生み出したい。このようなモノづくりを通して『従業員が輝けるフィールド』をつくることが私の仕事です」(同)。改善を利益に結びつける仕組みが従業員の士気を高めていく。

関連記事