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型技術 連載「中国の金型業界のリアル」

2026.03.06

第8回 「金型工業団地」が製造業の未来を動かす(前編)

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杭州谷口精工模具有限公司 小方 暁子

おがた あきこ:薫事長、OISHIエンジニアリング㈱代表取締役 神奈川県川崎市出身。留学経験後、日本と海外の文化や交流に興味をもち、旅行専門卸業勤務を経て、中小企業向け業務システム会社を立ち上げ。中国浙江省・杭州市にて業務経験ゼロから金型メーカーを事業承継。日本では金型商社事業と工業・農業系地方創生・海外ビジネス交流事業も手がける。
 最近、金型の役割や金型産業の情報を伝えるニュースの中で、「1:100」というキーワードを目にすることが増えています。これは、「金型産業が1 億元発展すると、周辺産業は100 億元の生産額を達成することができる」という意味です。2015 年に発表された製造大国から製造強国へのロードマップの第1 段階・10 年目の節目となる「中国製造2025」を受けて、製造業の中でも特に金型および金型産業の発展は、国の製造能力を測る基準としてだけではなく、その国の製品品質、製造効率および新製品の研究開発能力を示すものであるという共通認識が普及し、金型産業を中心とするさまざまな事例報告も増えてきています。

「金型産業園」と「金型城」

 中国には「金型産業園(中国語:模具产业园)」や「金型城(中国語:模具城)」などと呼ばれる、金型産業を中心とした日本の工業団地のような場所が多くあり、その数はここ数年さらに増加しています。両者に明確な違いはないものの、金型産業園は主に技術やノウハウを集積し産業や地域全体をレベルアップさせることに重点がおかれており、金型城はBtoB 取引のスピードアップや最適化などに重きをおいている傾向があり、政府・協会団体主導型や大手企業主導型などさまざまなパターンがあります(表1)。以下、便宜上両者を「金型工業団地」と総称します。
表1 金型産業園と金型城

表1 金型産業園と金型城

 中国の金型工業団地は、「中国金型の里(中国語:中国模具之乡)」、「中国金型の都(中国語:中国模具之都)」などの金型生産集積地から生まれた産業モデルの一つであるとも言われています。それはこうした金型工業団地の60 %以上が広東省・浙江省・江蘇省の金型生産集積地に位置していることにも関係しているようです。地元産業と密接な関係をもつ金型メーカーの中には、独自の企業努力で地元以外にもサービスエリアを拡大し、企業名を冠した「〇〇金型園」という自社関連企業を集めた大きな敷地で工場を運営しているケースもありますが、これらは統計上の金型工業団地には含まれていません。また、最近では金型生産集積地で蓄積された技術やビッグデータを内陸部へ移転し、地域振興に貢献するような新しいモデルも出てきています。

金型工業団地の特徴と課題

 中国国内に約100 カ所もある金型工業団地ですが、それぞれに特徴があります(表2)。地域別の特徴として、例えば珠海デルタ地区では小型デジタル製品(3C 製品)や自動車関連部品の金型製作を中心とした金型工業団地が多く、「2 時間で移動できる距離内で何でも揃う」と言われるほど金型産業サプライチェーンが発達しており、検査設備などの共有化も進んでいます。
表2 地区別の特徴

表2 地区別の特徴

 ここ2~3 年で開業した金型工業団地ではより目的が明確化されており、例えば浙北模具産業園は浙江省の最北・江蘇省との省境という土地柄から、物流コストがかかるという地理的な問題を抱えていました。主に地元の新エネルギー自動車や、核心部品・家電・機械設備関連の金型ニーズに対応する目的で建設されました。一方で、発展の初期に建設された金型工業団地は、伝統的な生産方法からデジタル化・スマート化など時代に合った転換が進まず受注率が低下し、入居企業の撤退など悪循環に陥るケースが目立ってきています。また、建設当初に想定していた各種関連企業が集まらず金型産業のサプライチェーンが発展しないままとなっていたり、金型の標準部品や金型鋼材の量が決して多くないために集中購買によるコストダウンが実現できず、税制優遇期間の終了とともに収支バランスがくずれ、金型工業団地内での競争が激化し共倒れになってしまったりするなど、問題が表面化してきています。

金型工場団地から見えてくるもの

 金型工業団地は、金型産業自身および製造業のさまざまな問題を解決すべく建設されてきました。引き続き増加すると予想されますが、そのスピードは今後緩やかなものとなるでしょう。

 また、新時代の金型工業団地のあり方として、金型ユーザー業界とのさらなる連携、国内金型工業団地や海外との交流・連携を視野に入れた人材育成体制や、金型リサイクルや省エネ設備の導入など環境に配慮した金型製作技術のさらなる進化、AI やクラウドの活用など、さまざまな視点から議論されています(図)。金型産業が周辺産業に与える経済効果が大きいからこそ、金型産業単独の問題としてではなく、国のバックアップや周辺産業が協同する必要があるという明確な姿勢が伝わってきます。
図  金型メーカーおよび金型関連企業を始め人材育成のための学校や住居、研究開発施設なども揃う宁波模具産業園(寧波和豊産業園集団)

図  金型メーカーおよび金型関連企業を始め人材育成のための学校や住居、研究開発施設なども揃う宁波模具産業園(寧波和豊産業園集団)

 金型工場団地に入居していない金型メーカーにはまったく関係のない話題のように見えますが、実は業界が抱えている問題解決事例として参考にすることができ、希望を感じるとともに、「今まさに転換期を迎えている。乗り遅れたら先はない」という金型企業としての本気度が試されているとも感じています。
■ 取材協力
 浙江省模具行业協会(浙江省金型産業協会)
 杭州市西湖区申花路792 号 开物创新大厦B 座803 室 TEL:0571 - 8537129

 宁波和丰产业园集团(寧波和豊産業園集団)
 浙江省宁波市鄞州区江东北路临317 号和丰创意广场(2-11)室 TEL:0574 - 83860564

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