インドのバンガロール国際展示場(カルナータカ州ベンガルール市)で、1 月21 日から25 日にかけて、インド工作機械工業会(IMTMA)が主催する「IMTEX Forming 2026」が開かれた。金属成形の中でも、プレス、曲げ加工、溶接・接合、レーザ加工、板金加工におけるロボット活用と自動化、積層造形などの分野をテーマにした2 年に1 度の祭典。
【後編】では日系企業を中心に出展内容を振り返る。(日刊工業新聞社 総合企画部 篠瀬祥子)
世界で最も難しい市場、ハイエンド領域を開拓
今回、日本企業の出展は15 社とされているが、すでに現地法人をもつ、アマダ、アイダエンジニアリング、コマツ産機、村田機械、ファナックなど大手機械メーカーはインド企業としてカウントされているため、日本関連で計30 社程度が出展していたとみられる。
アマダは海外販売現地法人のアマダ・インディアが出展。2025 年にグループ入りしたエイチアンドエフの大型プレスを加えた「Amada One」をコンセプトに掲げ、前回から1.25 倍の大小間スペースでベンディングマシン2 台、レーザ加工機2 台(ぞれハイエンドとミドル仕様)や、プレス機、微細溶接マシンなどを披露した(写真1)。アマダ・インディアの今井秀久エグゼクティブ・バイスプレジデントは、「インド企業にハイエンド領域を認めてもらえるかが勝負。トータルでサポートする姿勢を見せていく」と強調した。実際、会場内でいくつかの大型商談がまとまったようだ。
コマツ産機(写真2)はインドでは日系自動車OEM 向け大型プレス機械の販売とメンテナンスが中心だったが、今回は小型プレス機械を出展。同社の松田信孝常務執行役員は「代理店を通じて2,500 通のメールを送って来場を呼びかけた。世界的にいろいろな展示会へ出展しているが、初日からこれだけ引き合いが出てくるのはインドならでは」と手応えを語った。「ターゲットとする四輪、二輪、エアコン、スマートフォン関連向けは重要分野だが、インドはそのすべての需要がある」と力を入れる。
アイダエンジニアリングは、汎用サーボプレスの「ダイレクトサーボフォーマー DSF NI-800A」を出展した(写真3)。アジアを統括するアイダ・タイランドの田島繁樹グループマネージングダイレクターは、公用語だけで22 種があるというインド特有の文化事情やビジネスの複雑かつ多様性などを挙げながら「例えば、CNC 制御系は米系、欧州系、インド系、日系などお客さまに合わせ選択する必要がある」という。「成長は確かにしているが、世界で最も難しい市場の一つでもある。今やっていることが正解だと信じて、インドを開拓する」と、多様性の国への向き合い方を語る。
写真3 アイダエンジニアリングは汎用サーボプレス を出展(写真左がアイダ・タイランドの田島 繁樹グループマネージングダイレクター)
ニデックドライブテクノロジー(写真4)は2回目の出展。ブースには欧州やカナダなどグローバルな来場者が目立った。コネクターや家電用モータなど向けにプレス機械の販売が好調で、鈴木大虎常務執行役員は「インドは連続して前年比2 倍規模で伸びている」と明かす。高精度加工機を世界で販売してきた実績を元に「2026 年はインドで50 台超が販売目標」とし、サービスの拡充を図る。
写真4 ニデックドライブテクノロジーのブース(右 から3人目が鈴木大虎常務執行役員)
急速拡大する自動化ニーズ
会場内では、日系ロボット関連の出展とにぎわいも見られた。人口が多いインドではロボット活用はまだこれからというイメージをもつ読者もいると思うが、現地では急速にオートメーション化需要が増している。ファナックは今回のIMTEXForming で、協働ロボットや産業用ロボットを全面に押し出した(写真5、写真6)。同社は、制御装置やマシン関連を強みとして、FA 関連の黎明期である1992 年に拠点を設けてインドビジネスを築いてきた。ファナックインディアの喜多祐樹プレジデント& CEO は、「特にCOVID19 以降の回復で、インドローカルからの自動化需要拡大に手応えを感じている」とし、現地のシステムインテグレーター(SIer)とのネットワーク拡充やロボット周辺機器を取り付けたアプリケーション開発を進めている。
初出展の川崎重工業も、アーク溶接や塗装ロボットを披露。KAWASAKI のバイクも合わせて展示し、ブランド訴求を図っていた。同社の脇坂明文チーフ・テクニカル・オフィサーは、「当社はこの2 年間で大幅にビジネス拡大を図ることができたものの、まだまだインドでの知名度アップが必要。需要は明らかに増えているし、SIer も育ってきている。グルガオンにショールームを整備し、ローカルへのアピールを強めていく」と力が入る。
写真5 協働ロボットや産業用ロボットを見せるファ ナックブース
写真6 喜多祐樹プレジデント& CEO(右)と鈴木 俊之バイスプレジデント
日本鍛圧機械工業会 中小企業共同ブースを初設置
今回のIMTEX Forming では日本の周辺機器や金型関連、計測関連など中小企業の意欲的な動きも目立った。スクリュープレス機械でインドでの実績を豊富にもつ榎本機工(相模原市緑区)、バンガロールでの工場建設を計画するミナミダ(大阪府八尾市)、超硬金型部品などを紹介した冨士ダイス、また自動プレス機械監視装置の理研計器奈良製作所(奈良県桜井市)は日本計測システム(同)と共同出展した。
さらに今回初めて、日本鍛圧機械工業会がこれからインド市場を積極的に開拓していきたいと考える中小企業を中心に出展視察ツアーを募集し、6 社が同工業会ブースでポスターやワーク展示などを行った(写真7)。参加企業は、相澤鐵工所(埼玉県川口市)、阪村ホットアート(京都府久御山町)など。同工業会中小企業委員会で帰国後にまとめたアンケートでは、最新技術・市場動向・商談など視察・出展目的の達成度について、「非常に達成できた」と、「達成できた」を合わせて80% となり、中小企業にとって難しいと言われるインド市場でなんらかの手応えをつかんだ経営者が多かったようだ。
アンケートでは、「納期・コストの競争が激しく、日本メーカーにとっては厳しい気がした。ただ市場の伸びは大きく、しばらく過当競争となるものの需要は伸びると感じた」、「一歩を踏み出す勇気を貰った。実際にはベンガルールは街もきれいで衛生面でも心配なかった」、「インドローカルや中国メーカーのPR ぶりが印象に残った。非常に安価な仕様のように思えたが、設立から間もない企業などには魅力に映るのは納得できる」といった声が上がった。価格勝負競争の厳しさの中で、インドビジネスの手触りを得て、戦略を立てる動きが今後、活発化しそうだ。
IMTEX 2027 に続く盛り上がり
なお、会場であるバンガロール国際展示場では2027 年1 月に、同じIMTMA が主催する工作機械・工具・関連技術などを扱う大規模展示会「IMTEX 2027」が開かれる。現在、IMTMA では出展者や視察などを募っている。会場は広く、回りきるには相当な計画が必要だ。日本の円借款などで基盤が整備された市内のベンガルール・メトロ(写真8)は「ここがインドとは信じられない」ほど落ち着いて運行されている。グリーンラインの「Madavara」駅は展示会場近くにあり、渋滞が激しい車でのアクセスよりもメトロの活用をおすすめしたい。
写真8 バンガロール国際展示場へメトロでアクセ スする場合は、Madavara 駅で降りて徒歩 10 分程度