工場管理 連載「工場はプロフィットセンター 儲けを生み出す工場を実現しましょう!」
2025.05.08
第3回 工場経営を行うためのシステムをお持ちですか?~MES・MOMって知っていますか?~
スマート工場研究所 渡邉 寛
MES あるいはMOM と呼ばれるソフトウェアをご存じでしょうか? MES はManufacturingExecution System:製造実行システム、MOM はManufacturing Operations Management:製造オペレーション管理システムと呼ばれるもので、工場全体、生産活動を管理・サポートするソフトウェアです。これらのソフトウェアはどのように工場経営をサポートするのでしょうか? まず、2 つの工場の違いをご一読ください。
どちらの工場がイケていますか?
1.工場①の毎日
・製造指示書が現場に配られ、それに従って現場が作業を行う。必要なマニュアルは工程に置かれたバインダーの書類をめくって確認する(時には最新でない場合も)。
・1 日の作業を終えると、各種日報を書いて提出する。翌朝、日報を確認、誤記などが発生すると、その確認に時間を要することもあり。確認のあと、前日の製造進捗がシステムに入力され、進捗遅れや不良の発生が見えるようになる。また、設備の稼働実績、出来高、不良の情報などがExcel にも転記され記録される。これらは煩雑で残業なども発生する。また、ここで蓄積されていくデータはほとんど再活用されていないのが実態。
・それを受けて、進捗遅れや不良の発生について、現場を回って原因を確認し対処を考える。加えて、進捗遅延による影響を確認して、生産計画の入り繰りを調整する。
・月替りではExcel を集計して、工程ごとに稼働率や歩留りが計算される。基幹システムからは原価計算レポートや工場の収益レポートが出力される。でも、明細データがないので原因の究明は困難。
・また、現場で行っている改善活動の成果も、Excel などのデータを加工・補正して(鉛筆をなめて)評価を行うので、本当に効果が出ているかは不明。
2.工場②の毎日
・製造指示書や作業マニュアルはペーパーレスで現場のモニターや作業者のタブレットに表示されている。
・現場が作業した結果や設備の稼働状況はタイムリーに入力、あるいは自動センシングされシステムに登録される。よって、製造の完了や進捗の遅れはタイムリーに検知しアラームされる。すぐにシステムで影響範囲を把握して短時間で生産計画の入り繰り調整が完了。
・それらが集積して日報が構成される、作業者は1 日の終わりに確認と終業を打刻するだけ。工場のKGI に対して、日々その達成状況や進捗は自動的に集計され、誰でもいつでも確認できる。また、これらは明細データにドリルダウンできるので、問題分析も可能。月中に問題把握して、月末を目指してすぐに手を打つことが可能。
工場①では情報伝達は紙と手作業で行われ、バッチ処理されています。よって、今日のことは明日にならないとわからず、明日になってようやく解決に当たります。また、当月のことは翌月にならないとわからないので、来月に前月の数字を見てようやく解決に当たります。
工場②では情報伝達はシステムで行われ、入力あるいは自動センシングでリアルタイムになります。よって、今日のことは今日わかって、今日から解決に望めます。当月のことも月中にわかって、今日から月末を目指して解決に臨めます。
皆さんの工場はどちらでしょうか? また、どちらの工場の姿が望ましいですか? あるいは、どちらが儲けを生み出す可能性のある工場でしょうか? 明らかに工場②と答えると思います。このような工場の業務スタイル、管理スタイルを実現するのがMES やMOM と呼ばれる工場経営・管理のためのシステムです。企業活動を最適化するための管理ツールとして“ERP システム(EnterpriseResource Planning System)”がありますが、MES やMOM は工場の生産活動全体を最適化するいわば“FRP システム(Factory Resource PlanningSystem)”です。
FRPとはどんなシステム?
工場にIT投資を!
企業経営においてはERP システムを経営ツールとして導入することが標準となっています。しかしながら、ERP の適用範囲は工場に対しては不十分であり、工場側は工場の求める管理メッシュで管理できる仕組みが必要です。現実はどうでしょうか? 工場にはそもそも工場管理のためのシステムが導入されておらず、工場運営・管理を手作業とExcel を駆使して、人海戦術で行っている企業が多くあることが実態です。これでは工場のスマート化やDX 以前の問題です。スマート工場やDX の推進においては、MES やMOM が導入されているか、同時に導入することが前提となります。私は長年ERP システム導入のコンサルティングに関わってきましたが、ERP には大規模な投資を行う経営者が、工場に同様のIT 投資を行わないことを問題と感じていました。製造業においては、工場はコストセンターではなく、プロフィットセンターです。
すなわち、工場は儲けの源泉です。それなのに工場にIT 投資を行い、その管理品質の向上と効率化に取り組まないことは利益創出にとって大きな機会損失です(図2)。皆さん ぜひ、工場の経営・管理を行うためのシステムを導入ください。
図2 工場の考え方を、コストセンターからプロフィットセンターへ