見た目も振る舞いも現生生物と同じ。しかし分子構造が鏡写しに反転しており、消化できる食べ物も感染する病気も違う、いわば鏡の国のエイリアン。「鏡像生命」と呼ばれるそんな生き物をつくる研究が進んでいる。
この研究は医療や化学分野に革新をもたらす可能性もあるが、危険性もはらんでいる。鏡像生命の未来はどうなるのか? 研究者が合成生物学と鏡像生命学の最前線を、SF作家が鏡像生命の可能性を描く、新しい形の入門書。
本書の企画を進めていた最中に、鏡像生命をめぐる世界的な学術の動きがまさに立ち上がりはじめました。通常、最先端の研究内容はまず専門書を経由して伝わり、しばらくたって一般向けの入門書が登場します。しかし今回は、その順番が逆転しています。鏡像生命学に関する専門書が世界にもない状態で、日本ではまず入門書が出版されるという特別な展開なのです。
本書でも紹介していますが、鏡像生命とは、もしかしたら地球に誕生していたかもしれない「もうひとつの生命」のことです。今の私たちを含む地球上の生命と、部分的に似ているところもありますが、多くはかけ離れており、まさに異世界の生き物(エイリアン)のような存在だと言えるでしょう。こうした生命を想像することは、単なる空想ではなく、現在の生命がなぜこのかたちをとったのかを深く問い直すためのきっかけにもなります。科学的な解説と、それを補完するSFによる投影を組み合わせることで、「生命とは何か」をより立体的にとらえる視点が生まれるはずです。
理科が好きな中高生には、これから広がっていく鏡像生命学の世界への招待として。科学の最先端に興味を持つ大人の読者には、肩ひじ張らずに科学を楽しむ入り口として。本書がそれぞれの読者にとって、未知なる生命のかたちを考えるきっかけになれば、と願っています。
大澤博隆 監修
長谷川 愛 監修
茜 灯里 著
柞刈湯葉 著
瀬名秀明 著
麦原 遼 著
八島游舷 著
出版年月日 2025/08/29
ISBN 9784526084034
判型・ページ数 A5 ・ 200ページ
定価 1,980円(税込)