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機械設計 特別企画「経験談から学ぶ 難局はこうして乗り越えた!」

2026.04.09

設計における「答え」の重要さを身をもって体験 ~鉄道現場機器設計から学んだ経験談~

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ウエプロジェクト 植村 直人

うえむら なおと:代表取締役、技術士(機械部門)、鉄道技術コンサルタント

経歴

 私は2003年に鉄道信号メーカーに入社し、鉄道信号現場機器の設計、品質管理、新製品企画に従事した。19年間勤務後、2022年に株式会社ウエプロジェクトを設立。「モノづくりをもっと楽しく!もっと元気に!」をコンセプトに、鉄道技術コンサルタントとして、鉄道を中心とした現場作業改善支援、設計現場の製図教育や設計プロセス構築などの支援に携わっている。

鉄道信号現場機器である「踏切しゃ断機」について

 私が設計に携わっていた鉄道信号現場機器は「踏切しゃ断機」である(図1)。踏切しゃ断機は、列車が通過する際に踏切道を遮断し、通行者の安全を確保しながら列車を通す装置である。「機械的な装置」であるが、鉄道信号において非常に重要な役割を果たしている。
図1 踏切と踏切しゃ断機

図1 踏切と踏切しゃ断機

 このような鉄道信号現場機器が設置される環境は非常に厳しく、列車の通過による多くの振動や、周囲に建物がない場合、落雷や突風などの自然環境からの影響も受ける。そのような過酷な環境下においても、列車運行の「安全・安定」を確保するために、これらの機器には確実な動作が求められるのである。

「重り」のない踏切しゃ断機をつくる⁉

 私が設計者として初めて携わった新製品設計は「重りのない踏切しゃ断機」である。踏切しゃ断機には道路を遮断するために「竿」、その反対側に黒い「重り」がある。重りは長い竿を上昇させるための「補助」の役割(シーソーのイメージ)であり、踏切しゃ断機内部のモータへの負荷を軽減し、小型化することを目的につけられている。

しかし、雪国では列車の本数が少なく、竿が上がっている状態が多いため、重りが通る部分に雪がたまり、竿が下がる際に支えてしまうことで正常に動作できなくなるという問題があった。そのため、雪国では雪囲いという重り部分を覆う箱を設置することで対応していたが、箱が大型で場所を取るなどの問題があったため、重りの廃止が求められていた(図2)。私は幸いなことに、重りのない踏切しゃ断機の設計に駆け出しの頃から携わらせてもらうことができた。
図2 重りと雪の関係性(雪囲いについて)

図2 重りと雪の関係性(雪囲いについて)

競合他社がすでに実用化、特許で縛られた中での新方式の開発

 重りをなくすために考えたのが「重りに変わる補助機構」である。競合他社はすでに「竿が下降するときのエネルギーをばねに蓄積して上昇する際に使用する」方式を実用化、特許取得しており、その方式はまねできない状態であった。行く手を阻まれている中でどうにか他社が使用している補助機構の方式に抵触しない方法を検討する日々。まだ駆け出しの技術者であった私は機構の知識も少なく、代替の補助機構となるアイデアが出ないまま数カ月の日々が過ぎた。

 そんな中、上司がふと「補助機構ではなく、モータへの負荷を直接軽減することを考えればいいのではないか」と言い始めた。その上司は手元にある計算機を叩きながら「歯車比を大きくすれば負荷は軽減できる」と。要するに歯車比を単純に2 倍にすればモータへの負荷を半分にできる。これを利用すれば重りに変わる補助機構を使わずに竿を上昇動作させることができるのではないかとの話であった(図3)。
図3 踏切しゃ断機の重りの役割と代替方法

図3 踏切しゃ断機の重りの役割と代替方法

 当時は画期的な発想だと驚いたが、至ってシンプルな解決方法である。私は「ばねに代わるものは何か?」という「手段」に固執してしまい、多くの時間を費やしたと今になり反省している。もし、「モータへの負荷を軽減する」という目的の本質を捉えていればもう少し早く結論を出せたのではないかと考え、「本来向かうべき目的の本質を捉えること」、そして「すぐ目の前の手段にとらわれないこと」が非常に大切であり、物事を解決する近道であることを知った。
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