icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc
SEARCH

プレス技術 連載「新人技術者のためのものづくり現場の基礎知識」

2026.04.27

第2回 スキルを高めて役立つ技術者になろう

  • facebook
  • twitter
  • LINE

㈱経営学校 左近祥夫

さこん まさお:代表。1948 年福井県生まれ。大学卒業後、1973 年に中小製造業に就職。経営コンサルタント会社に転職後は標準原価による指導を経験。その後、知人とともに設立したコンサル会社を経て、2016 年に㈱経営学校を設立。
 スキルは製造会社にとって、たいへん重要です。今回はスキル向上のさせ方を紹介しましょう。

学校と会社の違いは何だろうか

 スキルの話をする前に学校と会社の違いを知っていただきたいと思います(図表1)。
図表1 学校と会社の違い

図表1 学校と会社の違い

 学生時代のあなたは教育を受ける側でした。国語、数学、社会などの知識を教えられ(時には見学、実習などもあったかもしれません)、体育、家庭、音楽の授業で実技が行われました。

 お金の動きで説明しましょう。

 学校では、あなた、もしくはご両親は授業料を支払っていました。その授業料によって校舎の修繕費や備品の購入費などに賄われていました(ただし、最近は学校の運営費は授業料よりも税金で賄われる比率の方が多くなっています)。

 ところが会社に入ると、今度はあなたに賃金が支払われます。あなたの働きは発注会社(お客様。ひいては社会)に役立ち、発注会社が支払った代金があなたに回ってきたのです。あなたの働きは発注会社に役立ったのですが、もう少し細かく言うと、「役立った程度」に応じて発注者は料金を支払い、その料金の一部が賃金としてあなたに支払われます。なので、あなたの作った製品が不良品であれば発注者は料金を支払いません。発注者が求めるレベルでなければダメなのです。

 確かに、会社に入ったばかりだと、あまり役には立てません。材料や製品の運搬や工場の清掃など単調でつまらない仕事が続くように感じるかも知れません。それでも、あなたは会社や社会に役立つ技術者として成長を期待されていますし、その期待値から賃金が払われています。

役立つとはどういうことか

 私の失敗の経験を紹介しましょう。

 私はコンサルタントとして日系メーカーの中国工場でおよそ40 日間、新製品の立ち上げに携わりました。

 最適な生産条件(温度、圧力、時間など)を見つけ出すことが私の役割でした。その条件で生産し、出荷しました。日本に帰り2 日間が経ちました。日本の社長から電話で「不良だ」と言われ、発注者が撮った写真も送られてきました。わたしは頭がパニックになるとともに、日系メーカーの社長に申し訳ない気持ちで一杯になりました。不良品は発注者に受け取ってもらえません。その製品を作るのにかかった数十億円が損失となりました。そのとき結果として私はお役に立てなかったのです。

赤点と不良品

 テストで赤点をとったことがあるでしょうか。赤点を取ると気分がよくないですし、場合によっては追試を受ける必要もあります。

 会社でも、不良品を出した場合、発注者から叱られます(製品を受け取ってもらえません)。もう一度、それに代わる製品(良品)を作り直すことになります。しかし、会社の場合、ちょっと違うことがあります。発注会社から「生産計画が狂って、間に合わなくなる」と言われ、他の会社(あなたの会社にとってライバル会社)に注文が行くことがあるのです。一度、他の会社に注文が流れると、その製品の注文は二度といただけることはないかも知れません。学校であれば、例えば、一学期の理科で赤点を取り、追試をクリアすれば二学期も同じく理科の授業を受けることができますが、会社では追試がない、つまり簡単には失敗できないということです。

スキルを磨いて成長を実感する

 学校と会社を比較すると、それでも私にとっては後者の方にスリルがあり、自分が生きている、誰かのために役立っていると感じます。

 学校では、国語、数学、社会などの科目にしても、体育、家庭、音楽などの実技にしても、頭の良い人は最初から最後まで良い成績であり、才能のある人はどのような実技であっても上手にこなします。会社ではそうはいきません。最初から思ったとおりにできることは少なく、できるまで何度もやる必要があります。当然、スキルは向上します。例えば、朝、会社に行き、上司や同僚に会ったとき、「おはようございます」と挨拶することが求められます。最初の二日三日は喉から声が出ないかも知れません。でも何度か試みると、声が出るようになります。また、経理に配属になり出金伝票をパソコンに打ち込むことを指示された場合、最初はミスもありますが繰り返すことでそれがどんどん減っていきます。あるいは製造部門へ配属になり倉庫から機械の脇へ材料を運搬することを指示された場合(この作業をピッキングといいます)、最初は指示された材料を倉庫のなかで見つけ出すには多くの時間がかかります。見つからないこともあります。何度もやっているうちに比較的短い時間でできるようになります。挨拶、打ち込み、ピッキングはいずれもスキルです。

スキルには二つがある

 ここでスキルの性質について、もう少し詳しく解説しましょう。スキルには二つあります。一つが人間関係に関するスキルであり、もう一つが技術・技能のスキルです(図表2)。
図表2 二つのスキル

図表2 二つのスキル

 前者には、例えば、はきはきとした口調で挨拶をする、上司の指示をメモを取りながら聞く、指示された仕事が終わったら報告をするなどがあります。さらに制帽・制服・制靴を決められたとおりに着用する、現場に持ち込んでいけないものはロッカーにしまう、などがあります。

 後者のスキルには、例えば、正確なパソコン操作をする、間違いのないピッキングをする、台車は決められた順路をていねいに押す、材料を作業者が取り扱いしやすいように置くなどがあります。プレス機械、マシニングセンタなどを使うようになったら操作を正しく行う、さらに最適なプログラミングをするなども大事なスキルです。

 これを踏まえたうえで次回は、目指すべきスキルのレベルについて説明しましょう。

関連記事