プレス技術 連載「新人技術者のためのものづくり現場の基礎知識」
2026.04.03
第1回 スキルを高めるにはどうするの?
㈱経営学校 左近祥夫
さこん まさお:代表。1948 年福井県生まれ。大学卒業後、1973 年に中小製造業に就職。経営コンサルタント会社に転職後は標準原価による指導を経験。その後、知人とともに設立したコンサル会社を経て、2016 年に㈱経営学校を設立。
「才能」ではなく、「訓練」で身に付ける
「スキル」という言葉があります。スキルを高めていくことがあなた自身にとっても、会社にとっても重要だと言います。ではあらためてスキルとはどうやって身に付くのでしょうか。まずは恥ずかしながら私自身の経験をお話ししましょう。
中学生の頃、授業で椅子を作る実習がありました。生徒たちは皆、放課後も残って工作室でラワン材を切り、サンドペーパーで磨き、釘を打ち、ニス(塗料)を塗るなどといった作業を続けていました。しかし、私はというと椅子作りに興味がなく作業も適当だったので、先生からは「手がモチだな」と言われました。福井弁で不器用という意味です。
大学卒業後、従業員数45 名の中小製造業に就職。工場に配属され、工場長から旋盤操作の手ほどきを受けました。その結果、例えば、規定の面粗度をもつテーパー軸(円錐台の形をした軸)を作ることができるくらいにはなったので、今度は嫌がらず練習を繰り返したのが良い結果となりました。
なぜ旋盤を操作できるようになったか。振り返ると二つの原因が考えられます。第一は工場長がていねいに教えてくれたこと。第二に練習を通じて、刃物や機械スピードなどによって製品のでき栄えが変わることに気付いたこと。つまり、旋盤操作の全体像が理解できたからです。
スキルは生まれつきの才能で身に付くわけありません。生まれつき器用・不器用の違いが人にあることを否定するわけではありませんが、スキルは訓練によって身に付けることができます(図表1)。例えば、「あいさつ」についても最初は声が出ませんが、何度か練習すれば声が出るようになります。また、バリ取り作業も最初は誰だってできませんが、ヤスリの使い方などの訓練を通じてできるようになります。
何度も繰り返しスキルを改善していく
あいさつを例で考えると、あなたが出勤時に工場の出入口で上司とばったり出会ったとしましょう。最初は声がでません。やがて、すれ違いざまに軽く会釈しながら「おはようございます」と声をかけることができるようになります。さらにしばらくすると、今度は上長の5m ほど手前で歩みを止めて、余裕をもってきちんと相手の方を向きながら頭を下げて「おはようございます」と言えるようになります。ここまでくれば、あなたはスキルが上がったと言えます。
技術的なスキルでも同様です。金属加工現場では、製品にバリが出ることはよくあることです。数量にもよりますが、発注会社への納品が急がれる場合、1 人であるいは何人かで手作業でバリ取りをすることになります。ここでは3 人でバリ取りをしているとしましょう。3 人の仕事のやり方をじっと観察して下さい。人によって、「上手に取れて、かつスピードの速い人」「取り残しがあり、かつ遅い人」がいます。仕事がきれいで速い人はバリの付いた製品をバイスなどで固定し、自分の身体を製品に対して斜めに構えて、ヤスリを押しながら製品に当てているはずです。この状態になればスキルがあると言えます。
スキルは最初は上司から指導されるものの、その後、何度も練習することによって、あなたの身に付いてきます。普通にできるというだけでなく、できるだけ上手にできるようになりたいところです。
最初に覚えたスキルを突破口にしよう
スキルは一つをマスターすると、同じようなスキルに応用することができ、さらに広範囲のスキルを身に付けることができます。図表2 を見て下さい。あいさつができると、直属の上長だけでなく、専務、社長にもできるようになり、次に特定の人に対してだけでなく、来客にもできるようになります。さらに慣れて余裕が出てくると、朝礼の場であなたの考えを皆の前でしゃべることができるようにもなります。
技術的なスキルも同様です。旋盤ができるようになった後、マシニングセンタを習えば、より要領よくできるようになり、さらにさまざまな機械も操作へと波及していきます。プログラムで動かす機械も最初こそ与えられたプログラムで動かしますが、要領を得れば自らプログラムできるようになります。
コツは、まず上司から指示されたことの中から、何か一つできるようにすることです。急ぐことはありません。下手でもいいです。ただし、ケガをしないように注意をして仕事をしてください。きっと一つのスキルをきっかけにどんどん新しいスキルが身に付いていくでしょう。大丈夫!