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プレス技術 連載「新人技術者のためのものづくり現場の基礎知識」

2026.06.02

第3回 自分の得意分野を見つけよう                        

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㈱経営学校 左近祥夫

さこん まさお:代表。1948 年福井県生まれ。大学卒業後、1973 年に中小製造業に就職。経営コンサルタント会社に転職後は標準原価による指導を経験。その後、知人とともに設立したコンサル会社を経て、2016 年に㈱経営学校を設立。
 スキルの話になると、話す方は「高いスキルが必要だ」となりやすく、読者の皆さんも「高いスキルが必要だ」と受け止めがちです。それはちょっと違います。

 スキルは訓練することによって誰もが習得できますが、その程度は一人ひとり違います。あるスキルに関して“普通に”できる人がいれば、“上手に”できる人もいます。別のスキルではこれが逆になることもあります。

好き・得意がレベルアップの入り口

 スキルは習得できる能力です。国語や数学などの勉強、運動のできる・できないは、ある程度、生まれつきの才能によって決まります。もちろん、努力によってできるようになる人はいますが、ここでは平均的な話として受け止めてください。

 しかし、あいさつやパソコン操作、プレス機や旋盤、マシニングセンタの操作などは、教えられ、実践することによって身に付き、何度も何度も繰り返すことによって上手になっていきます。

 たとえば、あなたがパソコンの操作に興味があり、指示されたとおりにやってみたら上司に褒められたとしましょう。すると、あなたのパソコン操作のスキルは上がります。「関心がある」「好き」「褒められた」は“得意なこと”につながります。

 しかし、これも人によって違いがあります。あなたの会社で、パソコンの領域にバツグンに上手な人がいるし、苦手な人がいるでしょう。すべての人が上手になることはないと思います。

 これを能力の多様性と言います。そのイメージを図1 に示します。好きであり得意でもある分野をA、嫌いであり苦手でもある分野をB と名付けます。分野A では、何度も繰り返し自分を高いレベルに引き上げることができるでしょう。しかし分野B においては、自分を普通のレベルに引き上げることはできても、そこにとどまります。
図1 多様性のイメージ

図1 多様性のイメージ

仕事はなんでもやってみる

 指示された仕事のすべてにおいて、高いレベルに自分を引き上げようと頑張ることは止めましょう。そうではなく、自分の好きな領域(やがて得意となる分野)を見つけ出すことに目を向けましょう。

 ここに難しさがあります。どういうことか説明しましょう。

 先ほど、「好き・得意な領域A と嫌い・苦手な領域B がある」と言いましたが、私たちは時間の流れの中で生きており、自分の好き・得意な領域と嫌い・苦手な領域をあらかじめ知っているわけではありません。図1 では好き・得意な領域A と嫌い・苦手の領域B を対比して説明したのですが、未来に向かってそれを探し出す私たちには見えないのです。

 では、どのように好き・得意な領域A を見つけ出し、どのようにして嫌い・苦手な領域B を避けたらいいのでしょうか。

 やってみて、その体感から判断するのです。上司から「〇〇の仕事をしてほしい」と指示された場合、素直にやってみます。興味がありうまくいったケース、嫌だったが思いのほかうまくいったケース、やっぱり嫌だったケースがあります。それでいいのです。それを数多く繰り返します。上司から「よくできた」「まあまあ」「イマイチだな」などと評価されるかもしれませんが、これは、あなたが自分の好き・得意を見つけ出すうえで役に立ちます。上司が褒めたということは、あなたにとって好き・得意な領域である可能性がありますから。

 図2 を使って説明します。左側に自分(低いレベルのあなた)がいます。上司から分野B の仕事をするように指示を受け、仕事のやり方を教わり、実施しました。普通にレベルが上がります。しかし、さほど興味がなかったし、上司からお褒めの言葉もなかったとすると普通程度のレベルアップです。分野C も同じ結果でした。やがてあなたは上司から分野A の仕事を指示されます。それには興味があり、やってみると面白く、良い出来映えでした。分野A で、あなたは高いレベルのスキルを身に付けることができるでしょう。
図2 試行錯誤による成長のイメージ

図2 試行錯誤による成長のイメージ

「T 型人間」が目指すべき姿

 あなたは、分野B およびC において普通のスキルに自分を高め、さらに分野A において高いレベルのスキルを身に付けました。これをローマ字の「T」の形をなぞって説明します。

 T は、水平な横棒と垂直な縦棒が組み合わさった形をしています。水平な横棒を幅広い分野になぞらえ、垂直の縦棒を高い、または深いレベルのスキルになぞらえましょう。あなたは普通のレベルを幅広い分野(この例ではB およびC の分野)でもち、特定の分野(同じくA の分野)で高いレベルのスキルをもったことになります。すなわちT 字型人材といえます。

 あなたの自分探しには長い時間がかかります。T 型人材となるには10 年、またはそれ以上の年月がかかるでしょう。まったく問題ありません。

 10 年後、あなたは30 歳前後です。T 型人間に向かっている姿を見て、社長も上司も、その10年後にできるあなたの後輩も、あなたの働き方を尊敬するでしょう。

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