まえかわ よしのり:1971 年同志社大学大学院工学研究科、1996 年同大学院神学研究科修了。工学博士、神学修士。大阪府立産業技術総合研究所(現・大阪産業技術研究所)研究員、大阪産業大学デザイン工学部情報システム学科教授などを経て、2015 年よりモノづくり企業を支援するアドバイザーとして活躍。元型技術協会会長、名誉会員。
本連載の第1 回(10 月号)に、EV 化は今まさに大きなターニング・ポイントにあり、連載中に前の予測を訂正するということも起こり得ると断って、リアルタイム(同時進行)でEV 化の動向を分析、まとめ、報告していきたいと述べた。早速、第2 回(11 月号)の図(本稿で図1 に再録)を訂正しなければならない。
図1 の2021 ~ 2024 年のデータは実績を元にしているが、2024 年から2025 年への破線で示した2025 年の値は筆者の予測値(保証なし)で、各国とも2025 年のBEV(電気自動車)販売は落ち込むと予測した。本稿執筆時点(2025 年12 月7 日)で、2025 年通年の販売実績は出ていないが、予測値が出たので、それを参考にすると以下のとおりである。
・ 中国のBEV 販売は、2025 年1 ~ 10 月累計で約833 万台、通年予測で1,000 万台(前年比約30%増)を超え、販売台数・シェアともに過去最大を更新する勢いである。
・ 米国のBEV 販売は、2025 年通年で約150 万台の予測で、前年の約130 万台に比べ増加しているが、伸び率はあまり変わらない。
・ ドイツのBEV 販売は、2025 年通年で約60 万台以上と、前年の2024 年で落ち込んだが2025年では回復してきている。
2025 年通年実績が出揃った時点で再確認するが、中国、米国、ドイツともに2025 年のBEV販売実績は前年より伸びており、図1 の筆者予測は大きな訂正となる(図1 には、2025 年の訂正予測値を2024 年からの実線で示してある)。
では、なぜ各国でのBEV 販売が2025 年に伸びたのか。筆者の見解では、中国でのBEV の過剰生産と価格低下(叩き売り)で、まず中国国内での販売が伸び、海外に輸出された中国の低価格BEV がドイツなどでも売れたのではないかと見ている。しかしBEV メーカーにとって利益率は落ちており、中国製BEV が多く売れたことが中国メーカーの増益につながったかは疑問である。
例えば、BEV トップメーカーのBYD は、2025年度は8%の最終減益と言われている。少し品のない言い方をすると、2025 年度のBEV 販売量の伸びは、BEV の「最後の悪あがき」と筆者は見ている。もしかして、筆者の見方の方が「悪あがき」と言われるかもしれない。結論は、2030 年頃まで待たなければならない。
筆者のもう1 つの予測である表1 の2035 年、2050 年の世界の新車販売予測も訂正を迫られるであろう。しかし、まだしばらく訂正なしで悪あがき?をしておきたい。
図1 中国、米国、ドイツでのBEV 販売台数推移(2021 ~ 2025 年)
表1 2035 年、2050 年の世界の新車販売予測(筆者の個人的見解による)
中国自動車産業の状況
BEV 動向については、中国の状況を検証することが重要である。中国の自動車産業育成に貢献したのは、2015 年にスタートした「中国製造2025」政策である。自動車「大国」から「強国」への転換を目指し、BEV 推進を国策として、BEV 販売にインセンティブ支援を行い、BEV 生産にとって重要なバッテリーやモータ、半導体などのメーカーにも国として資金支援を行ってきた。そして2025 年には「世界の自動車強国入り」という中国政府の目標を達成した。
中国にとって大国と強国は、それぞれ異なる意味合いをもつ。経済規模や人口規模といった量的な側面が大国であり、質的な強さや技術力、国際的な影響力などが加わったものが強国だと捉えている。
中国製造2025 が目指したのは、日米欧に負けない「ハイテク国家」であり、それによる「中華民族の偉大なる復興」で、その基盤の政策として「自動車強国」が選ばれた(図2)。結果として、表2 に示すように、中国の自動車メーカー2 社(BYD と吉利)が2024 年の世界新車販売トップ10 入りを果たした。BEV だけの2024 年世界新車販売トップ10 を見てみると、表3 に示すとおり6 社が中国メーカーである。
表2、表3 から、中国の自動車メーカーとしてはBYD に注目すべきことがわかる。BYD(比亜迪股份有限公司)は、1995 年創業の中国・深圳発のグローバル企業で、元々はバッテリーメーカーとしてスタートし、現在は電動車[BEV、PHEV(プラグインハイブリッド車)]を主力に事業を展開している。特にBEV 分野では「ブレードバッテリー」という独自技術をもち、安全性と高性能を両立させている。「革新を基本とし、技術で王となる」を理念に掲げ、垂直統合型のビジネスモデルでBEV のコア技術(バッテリー、モータ、制御システム)を自社開発している。
表3 世界BEV 販売トップ10(2024 年実績)
BYD は2022 年3 月をもって純粋なガソリン車の生産を完全に終了し、現在はBEV とPHEV のみを生産している。これは、中国政府の脱炭素化政策と連携し、電動化車両(新エネルギー車)に経営資源を集中させる戦略の一環で、世界で初めてエンジン車の生産を停止した自動車メーカーの一つとして注目を集めた。