機械設計 連載「セラミックス材料の基礎と活用の要点」
2026.04.28
第4回 セラミックス材料のプロセス制御(基本)
技術士事務所 ALEITA(アレイタ)福井 剛史
ふくい つよし:代表、技術士(化学) 大学院修士課程修了後、2009 年三菱化学(株)(現:三菱ケミカル(株))に入社。その間、一貫してセラミックス分野にて3つの職務・部署(事業開発、製造、基礎研究)に従事。順に、事業開発(国内外企業との繊維製品開発、委託生産、事業化、ほか)、製造(工場や製造現場での新たな仕組みづくりとその運営、教育、製造プロセスおよび機械設備の改善、リスクアセスメント、ほか)、基礎研究(大学や企業と連携した水素製造関連素材の研究、ほか)など。2025 年に技術士事務所ALEITA(アレイタ)を設立。
前回の内容と今回の構成
前回はセラミックス材料の特性(熱特性、機械特性、電気特性)から1つずつ例(熱伝導率、脆性、半導性)を取り上げて、その代表的な製品について特性と階層構造との関係を解説した。実際には、セラミックスの構造は、つくり方(製造プロセスごと、ロットごとなど)によって機微に変化し、追随して特性も変動する。つくり方の中で中心的な役割を担うのは焼結である*1 (図1)。
*1 :本連載の読者になじみの深い金属材料も焼結によりつくられている。鉱石から金属原料(製錬)、素材、材料、完成品と金属製品をつくるプロセスを考えるとき、製錬後の金属原料から素材をつくる方法には主に鋳造と粉末冶金があり、粉末冶金に焼結が関係している。
図1 セラミックスの製造方法の概観(全体)、焼結(実線)、本稿での説明範囲(点線)
今回はこの焼結について、機械分野で材料の選定・開発などにかかわる技術者を念頭に、現象論的に説明する。特に焼結の理解に大切な固相焼結および液相焼結について基本事項を解説する(図1 の点線囲い部)。図1 の点線囲いのない部分については都度、脚注に簡単に補足する。
焼結とは
焼結セラミックスは古典的には焼き物として発展してきた(図2。連載第1回参照)。基本、焼結では原料粒子を融点未満(つまり溶けない温度)で熱処理する。このとき粒子間の空気(気孔)の材料内部(構造)からの排出と各粒子の成長が競合する1)~3)。この「温度」と「競合する現象」が焼結の大枠をつかむための初めのポイントである。
まず温度について、改めて、設定は融点を超えない温度である。これはセラミックス原料の融点が一般に高いこと(2000℃を超えることも多い)、金属においてもタングステン(W)やモリブデン(Mo)などは高融点であること(2500℃を超える)が大きな動機となっている。
そのほか、焼結には次の利点がある場合がある。
・ 溶融凝固プロセス(金属での鋳造など)と比較して制御された空隙を残しやすい
[応用例:セラミックスではフィルタ(SiC など)、金属では含油軸受(Cuなど)など]
・ 原料ロスが少ない場合がある(鋳造での押湯、湯道分の減量が不要など)
・ マクロな組成制御がしやすい(溶融時に比重で分離してしまう場合など)
・ 形状によっては加工性が高い場合がある
次に競合する現象について、特にセラミックスの場合、焼結(図2)の前後では体積が大きく収縮する。これは原料粉体の粒子間にある隙間(空気)が外部に押し出されたことを意味する(緻密化)。一方、特に焼結の後半では粒子が大きくなる(粒成長)。この緻密化と粒成長はともに進んでいくが、ある時点から競合する(後述)。競合するとき、その勝った、負けたの結果は構造として反映され、特性を変える。特に粒成長の速度が緻密化の速度よりも速い場合には、より多くの空気(気孔)が構造内部に残ってしまう。このときセラミックスの機械的強度は低下しやすい(連載第3回参照)。
固相焼結
固相焼結は図3に示すように3つの段階(初期焼結、中期焼結、終期焼結)で進んでいく。
図3 固相焼結の初期段階(左)、中期段階(中央)、終期段階(右)を示す模式図
初期焼結では原料粒子がネックを形成する(図3 左)。ネックとは原料粒子同士が点接触した後、面接触した状態のことであり、図のように粒子間に連結部を形成する。
中期焼結(図3中央)では初期焼結で生成したネック多数の粒子間でさらに成長する。このとき粒子間の隙間は徐々に埋まっていく。しかし、粒子間の隙間は粒子の集合体の最表面まで連結している。この内部から表面までつながった空隙を開気孔と呼ぶ。一方、粒子については、連結部分が成長するとともに粒子の成長が起こっている。この段階では緻密化と粒子の成長はともに進む。
終期焼結(図3右)では粒子の成長がさらに進み、緻密化との競合に勝ることで一部の気孔が粒子内に残る。この粒子内に残る気孔を閉気孔(残留気孔)と呼ぶ。
以下にはこの粒成長と緻密化について少し詳しく説明する。
前章で述べた通り、焼結は融点未満の温度であり、この場合には溶融により生成した液相による流動ではなく、固相中の「拡散」が重要となる。