機械設計 連載「セラミックス材料の基礎と活用の要点」
2026.04.28
第4回 セラミックス材料のプロセス制御(基本)
技術士事務所 ALEITA(アレイタ)福井 剛史
図4 に表面拡散、粒界拡散、体積拡散、蒸発・凝縮の4つの拡散を示す。
図4 物質移動の駆動力[初期焼結(左)、拡散モード(中央)、ヤング-ラプラス 式説明のための参照図(右)]
表面拡散では文字通り表面を物質が拡散する。「表面」は特に化学では重要である。表面は粒子内部(バルク)と比較して、隣り合う元素が不足している(化学結合が切れている)ことで不安定であることをイメージしてほしい。このため、焼結では、粒子の不安定な表面を安定化するために新たな面(界面)を形成しやすく、材料内部からの拡散(体積拡散など)よりも低温で起こる。
蒸発・凝縮では粒子の表面(不安定)が加熱時に、いったん、気相まで相変化し、別の粒子の表面で固相として析出する。ここで、表面は元素の数としては粒子全体のごく一部*2 であり、蒸発・凝縮では粒子の中心から表面までの距離(半径)、つまり粒子の大きさは変わらないと考える。
*2 :表面分析の深さ(nm)から表面を2 nmと仮定すると、1 μmの粒子について表面は1%程度となる。
以上のような表面拡散や蒸発・凝縮の拡散では、基本的には高度に緻密化せずにネックが成長する。このため、これらの機構は気孔を保持したまま強度を付与する必要のある多孔質材料フィルタ用途などの製造に活かされている(SiC フィルタでの蒸発・凝縮プロセスなど)。
一方、粒界拡散や体積拡散では状況が異なってくる。
まず粒界拡散では粒子と粒子の接触部分(粒界)において、ある部分から別の部分へと成分が移動する。このときの移動の方向を把握するためにヤング-ラプラスの式が参考になる*3 。この式の結論の一つから、球形の粒子や気泡は半径が小さいほど見かけの圧縮圧力が高くなる(図4右)。したがって、小さな粒子は、大きな粒子や平坦な表面に比べて不安定で、物質が拡散して移動しやすいと考える。結果として、小さな粒子は縮小し、大きな粒子が成長する(オストワルド成長)。初期焼結では、ネック部分の外側に小さな球を想定し、この小さな球側がつぶれていくと考える(図4右)。
*3:数式は以下のように書くことができる。
ΔP=γ(1/R1+1/R2)
ここでΔPは曲面の両側の圧力差、γは表面エネルギー、R1とR2は曲面の2つの主曲率半径である。
同半径粒子の場合、ΔP=2γ/r となる。
体積拡散では粒子の内部から粒界に向かって拡散が起こるため、粒子の半径(粒子中心から表面までの距離)が変化する。2粒子での粒成長を考えたとき(図4右など)には、小粒子の内部から粒界に拡散し、粒界は大きい粒子が外側へ広がる方向へ移動している。このように、粒成長は粒界の移動として捉える。一方、緻密化は気孔の移動として捉える。粒界の移動が気孔の移動より速い場合*4 、粒子間に閉じ込められてしまうことがあり、これは粒成長と緻密化の競合の1例である。
総じて固相法は純度に優れるが、緻密化に高温・長時間が必要という課題がある。この点に対しては次に述べる液相、圧力*5 、電場*6 などの利用が有効な場合がある。
*4 :微量(数百ppmなど)の不純物を添加すると、均一に配置された不純物の高いエントロピー効果のため、粒界の移動を抑制できることがある。このように微量の添加剤は構造材料の特性(機械強度など)を変え、さらには粒界構造の応用として機能材料の特性(電気伝導性など)までを大きく変化させることもできる。
*5 :粒子間接触、物質移動を高めることで緻密化を促進する。冷間等方加圧CIP)は原料成形時、ホットプレス(HP・1 軸加圧)や熱間等方加圧(HIP)は焼結時あるいは焼結後での加圧に用いられることが多い。
*6 :焼結の温度および時間を大幅に低減できる。放電プラズマ焼結(SPS・1 軸加圧)やフラッシング(加圧なし)があり、焼結時に電場を併用する。
液相焼結
液相焼結も固相焼結と同様に3 つの段階(初期焼結、中期焼結、終期焼結)で進んでいく。ただし液相があることで新たなプロセス(再配列、溶解-再析出)が追加される。
液相焼結の初期焼結では原料粒子の「再配列」が起こる。通常、固相の原料粒子は多くの隙間や引っ掛かりによって充填率が低くなっている。ここに、多くの場合、生成物の組成に直接には影響しない低融点物質が液相で存在すると、原料粒子は互いに動きやすくなり密に充填する。機械要素間の潤滑油のようなイメージである。
さらに弱い力で結びついている粒子が解砕されることがある。これには「濡れ」と「毛管現象」が関係している。
まず、濡れについて、液体は接触角θが小さいほど、固体表面をよく濡らす*7 。関連して粒界の濡れ性を示すのが二面角(θ′)である(図5 左)。二面角は、粒界に液相が存在するとき、固相粒界と液相の界面がなす角度である。接触角と同じく二面角も小さいほど液相は粒界に侵入しやすい。液相が粒界に侵入しやすい(界面を濡らしやすい)のは、図5 左においてγGB が大きく(固相‒固相界面がより不安定)、γSL についてはθ′の小さい場合に相当する。
*7 :ヤング-デュプレの式。平衡状態で、固体表面上の液滴の接触角θを、固体-気体間の界面エネルギーγSV、固体-液体間の界面エネルギーγSL、液体-気体間の界面エネルギー(表面張力)γLVを用いて表す。
γSV=γSL+γLV cos θ
図5 二面角(左)と二面角が小さい場合 の液相浸透直後(右)の模式図
ここで、液体は細い隙間ほど浸透していく。これを毛管現象という。特に二面角θが小さいときには液体が粒子間に浸透していく。浸透に伴い、弱い固体粒子間の結合はほどかれて小粒子化し、再度配列し直す(2 次再配列)。さらに、液体は表面を最小化しようとする(球形になろうとする)ために粒子は互いに強く圧縮される(図5右)。
液相焼結の中期焼結では「溶解-再析出」が起こる。原料粒子は上記の圧縮力で互いに押し付けられている。この圧縮力で新たに生まれた小粒子、あるいはもともとの粒子径の小さい粒子はより高い表面エネルギーを持つため溶解しやすい。
特に終期焼結については固相法と同様に粒成長と緻密化が競合する。ただし、液相焼結では固相焼結と比較して物質移動の経路が多く、速度*8 も上昇するため、多くの場合、制御は難しくなる。
*8 :速度式に含まれる変数、変数の指数などから焼結プロセスの重要な変数を知ることができる。また、式の比較により、例えば体積拡散と粒界拡散のどちらが支配的か、なども判別できる。
今回述べた内容は成分変化を伴わない焼結を想定しているが、ファインセラミックには窒化物や炭化物など非酸化物も多い。このとき原料間の化学反応と焼結を同時に進行させる反応焼結が用いられる。ただし、少なくないプロセスでは反応焼結だけでは焼結が不十分であり、加圧*5することも多い(Si3N4 はその1例)。
次回は材料の構造をつくるプロセスの実践(不具合対策と改善)について述べる。
参考文献
1 )小松和藏:セラミックス材料科学入門、内田老鶴圃(1992)、p.451
2 )Maryse Demuynck: “Densification of alumina by SPS and HP:A comparative study”, Journal of the European Ceramic Society 2012, 32,( 9)
3 )Zhen Luo : “Study on Densification of Gd2Zr2O7-Based Ceramic Target for EB-PVD Application and Its Effect on Fracture Toughness”, Coatings 2025, 15,( 5), 532