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展示会

2025.03.31

<展示会レポート> TIMTOS2025(中編)トランプ2.0時代 台湾工作機械産業の生き残り策とは

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 台北国際工作機械見本市「TIMTOS2025」は第1回からちょうど50年、開催数は30回目の節目を迎えた(写真1)。6日間の来場者数は前回展(2023年)の4万5000人より少なく、3万人にとどまった。台湾工作機械は輸出が8割を占める外需主体の構造の中、ここ2年は主要の米中市場が低迷。また世界各地で中国製機械の台頭や円安による日本製機械の割安感など、特に競争環境が激化している。こうした景気低迷から、台湾全土からの来場減が響いた。ただ、台湾の工作機械関係者はけっして悲観的でなく、会場での海外バイヤーとの商談は増加している。米国のトランプ大統領が仕掛ける、本格化する貿易戦争時代に向けて、むしろ変化と挑戦の好機ととらえている声が多数聞こえてきた。(特別取材班)
写真1=TIMTOS2025は半世紀を超えて、 30回目の開催となった

写真1=TIMTOS2025は半世紀を超えて、 30回目の開催となった

貿易戦争がもたらす台湾製機械の反転タイミング

 主催の台湾貿易センター(TAITRA)によると、今回の来場者減少は2つの会場のうち、台北101の近くにある台北世界貿易センターでの来場減少が特に目立っていたようだ。レーザー加工機などの鍛圧系機械や、工具などが出展しているエリアだ。
 背景には、台湾工作機械産業がロシアのウクライナ侵攻や中東の紛争の影響で、台湾工作機械にとって大きな市場であるトルコや、ロシア、中央アジア諸国などへの輸出が規制されてきたこと、また円安による日系メーカーとの競争圧力や中国本土の機械メーカー台頭などで、台湾勢の業績低迷がここ2年続いていることをあげている。“性能が良くお得な機械”という従来の台湾ブランドの価格面での評価が、世界市場の大きな構造変化の中で揺らぎはじめていることを台湾メーカー関係者も認めている。
 TAITRAは今後の方向性として、「台湾の機械メーカーがスマート化や、カスタマイズ化の方向へ進むことを奨励し、自らの道を見つけてもらうことが重要」と強調する。製品やシステムグレードアップのため、政府の補助金などを活用して、末端までTPS TOYOTA Production System (トヨタ生産管理方式)の導入や、AI関連の応用技術取り入れ、研究開発、生産、受注などわたるサプライチェーン全体の連携を強化する方針を掲げている。
 もう一方の主催者である台湾機械工業同業公会(TAMI)は期間中に会見を開催。王陳鴻工作機械委員会委員長は台湾工作機械の8割を占める輸出額が前年比14・8%減の22億1800万米ドルとなり、ピークの12年から半減まで落ち込んだ状況を報告。一方で、2025年の台湾工作機械の輸出額について、米国の製造業復興やAIサーバー関連の需要増などで「輸出額で前年比10%増を見込む」とし、特に貿易戦争時代の中で台湾勢の反転タイミングにあることを強調した。
写真2=TIMTOSは1000社超が台北南港展示センターの2カ所と台北世界貿易センターの計3つの建物に分かれて出展するため、会場間を移動しながら視察する。

写真2=TIMTOSは1000社超が台北南港展示センターの2カ所と台北世界貿易センターの計3つの建物に分かれて出展するため、会場間を移動しながら視察する。

海外バイヤーの来場増目立つ

 今回のTIMTOSで特に目立ったのが、90カ国4,163 人の海外バイヤーらと台湾企業による商談だ。海外バイヤーの数は、前回より 5.1% 増加しているという。バイヤーの上位 5 カ国は順に、インド、日本、中国、韓国、マレーシアだという。
 出展者からは「総合的な来場者数は少ないかもしれないが、エネルギー関連の問い合わせが多かった」「航空機分野で大型発注が来た」「インドのバイヤーらが本当に積極的」など、海外バイヤーとの商談成果に手応えを示す声が多数あった。
 また、この展示会の機会を活用し、高校生や大学生など若年層へのアプローチも積極的に行われていた。TAITRAでは台湾中の理工系大学や高校などに来場を呼びかけ、今回、3000人の学生来場動員に成功したという。台湾では強みとするITや半導体関連などに若者の目が向きがちだが、「台湾の厚みのある機械産業やその国際ビジネスの面白さを伝えたい」と力が入っていた。
写真3=海外バイヤーとの商談に手応えを示す声は多数あった

写真3=海外バイヤーとの商談に手応えを示す声は多数あった

 こうした中で、会場では日本企業に対して改めてリスペクトを表現する声をいくつか聞いた。記者が日本人だと分かると、親日の台湾ならではのサービストークが大いに入っているのだろうが、日本を代表するファナックや三菱電機などのCNCの優秀さだけでなく、精密なモノづくりを成し遂げられる日本の製造現場に学んだことをあげながら、「円安がもたらす割安感に加えて、耐久力があり、かつハイエンドを常に追求している日本製機械は、世界で最強」というようなことを伝えてくる人もいた。
 また、有料聴講チケットを販売して台北国際コンベンションセンターで2日目に行われた「キーノート×フォーラム」には、基調講演としてTHKの寺町彰博会長が登壇(写真4)。50分間に及ぶ英語プレゼンで、AI時代に求められるモノづくり人材像などを発信した。台湾一の協働ロボットメーカーであるテックマンロボットのHaw Chen最高経営責任者(CEO)の講演に続き、東京精密の吉田均会長は、未来の精密測定設備に求められるポイントなどを解説した。特に日本企業による、モノづくり哲学を踏まえた最先端への挑戦と世界での実績に、近くに座っていた各国のメディア関係者をはじめ、多くの聴講者が真剣にメモとり、終わった後に日本の真摯にモノづくりに取り組む姿勢が素晴らしいと何人かが声をかけてくれた。
写真4=THKの寺町彰博会長は基調講演で丁寧に、自動化への哲学を語った

写真4=THKの寺町彰博会長は基調講演で丁寧に、自動化への哲学を語った

 台湾の強みは、海外の良いところを素直に表現し取り入れながら、デジタル関連など自国で得意とする他産業との協力をスピーディーに行う柔軟性を併せ持つことだ。スマート製造の魅力を前面に出し、貿易戦争激化の中でもしなやかに生き抜こうとする台湾勢の今後の動向が注目される。

TIMTOS2025リポート(後編)に続く

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