3月3日から8日まで、台北国際工作機械見本市「TIMTOS2025」が、台北市の台北南港展示センターと台北世界貿易センターで開催された。米トランプ政権による経済政策(トランプ2・0)関連ニュースが連日、世間をにぎわす中での開催となり、輸出メインで構成する台湾工作機械産業にとってはその一つひとつの影響が大きい。世界でしのぎを削る機械メーカーらが、国際市場にその革新性で“スマート製造”を打ち出し、変化の激しい時代を果敢に生き抜こうとする姿勢が多く見られた。(特別取材班)
30回目の節目迎える
「台湾からの発信で、いろいろな国の仲間たちとAI(人工知能)など新技術を組み合わせ、イノベーションを作っていく」―。TIMTOS2025は主催者の一つである台湾貿易センター(TAITRA)のJames C・H・Huangチェアマン(黄志芳董事長)のあいさつではじまった。1975年にスタートしたTIMTOSは、今年は半世紀の歴史を経て、今回は節目となる30回目の開催。世界18カ国・地域から1038社が6109ブースを出展した。
続いて登壇した台湾機械工業同業公会(TAMI)のDavid Chuangチェアマン(荘大立理事長)は、街中の小規模な会場ではじまった第1回を話題に出しながら、輸出をメインに格闘しながらも成長してきたTIMTOSと台湾工作機械産業の軌跡を紹介。「今、世界はどんどん変化している。貿易戦争や為替の問題などいろいろとあるが、この機会にどう挑戦するか考え、この小さな台湾から世界へ向けて発信していこう」(荘理事長)と呼びかけた。
オープニング式典には、台湾の頼清徳総統も参加し、「機械産業の付加価値を上げていきたい。半導体やロボティクスなど他産業とも連携を強化し、台湾から世界に発信するイノベーションが起こせる」とし、業界連携に期待を寄せた(写真1)。
写真1=オープニングセッションには、頼清徳総統も参加(左から2人目)
AI活用と自動化技術の多彩な発信
「これまで得意としてきた専用機だけでは成長できない。自動化技術やデジタル技術をたくさん取り入れ、顧客ニーズにさらにオンして提供していく」-東台精機ジャパンの顔聖峯所長は、世界の厳しい工作機械市場の中で、顧客のニーズを先取りして提供するトータルソリューションの重要性を語る。同社では新型のターニングセンターをはじめとしたラインアップや、現場の自動化をレベル別に見せる紹介デモ(写真2)のほか、3D衝突回避システムやAI搭載のアシスタント機能など、さまざまな新たな提案が見られた。また会場での展示品はなかったが、グループ会社であるPCI SCEMM(フランス)とAnger Machining(オーストリア)の2ブランドで、電気自動車(EV)向けに長尺部品向け加工などの機械を先行して開発しているという。
写真2=レベル1から5にわけた自動化のソリューションを提案(東台精機)
「Green&Smart」の発信を強めていたのが、YCM(永進機械工業)。最新の5軸加工機などとともに、リアルタイムのエネルギー追跡とカーボンフットプリント分析のためのスマートシステムなどを展示。カーボンフットプリント算定の国際標準「ISO14067」に準拠した装置を「緑色工具機」とし、部品供給など行っている同社の一連のサプライチェーンとともに広げていくとしている。また工作機械の環境負荷を見える化し低減するためのガイドライン「ISO14955」を活用した稼働モデルを提案していた(写真3)。さらにAIの力を、計画外のダウンタイムリスク低減やオペレーターへのスマートアシスタンスなどに役立てる方向性で活用していくと示していた。
写真3=ISO14955に合わせた稼働モデルを提案(YCM)
台湾企業の中でも大手の台中精機は、量産対応向けの横型CNC旋盤「V turn」シリーズの新機種「V turn S20」と協働ロボットを組み合わせた搬送、さらに自動測定までの一連の自動化ラインなどを紹介していた(写真4)。
写真4=横型CNC旋盤の稼働を協働ロボットがサポートし、自動測定まで手がける(台中精機)
会場内でもひときわ大きなスペースをほこり、台湾、韓国、ドイツ、米国、日本など世界中に37ブランドを持つ友嘉実業グループは航空機や鉄道、半導体など分野別のソリューションが活発だった。遠東機械(FEMCO)傘下の發得科技(FATEC)は、リアルタイムの状態監視や品質向上へのフィードバックなどに加えて、AR(拡張現実)技術を用いて、オペレーターが直感的な操作で装置の稼働状況を把握し、メンテナンスなどで効率化をはかる新スマート製造システムを提案していた。
このほかにも、HIWINや高明精機工業、程泰機械、SOCOなど台湾を代表する企業を中心に、協働ロボットやAIを組み合わせた新たな自動化に関するコンセプト披露が多く見られた。二酸化炭素(CO2)削減の見える化技術などの付加価値型提案は、いたるところでくり広げられ、特に海外バイヤーとの商談が目立っていた。
TIMTOS2025レポート(中編)に続く