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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.11.10

機械と制御のコンビネーションで設計に忠実な加工、そして手仕上げレスへ―新日本工機

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新日本工機㈱
代表取締役社長兼COO
中西 章氏

Interviewer
埼玉大学大学院 理工学研究科 教授
金子順一氏

 門形マシニングセンタのパイオニアとして知られ、大型工作機械メーカーとして創業120 年以上の歴史の中で国内外のモノづくりを支えてきた新日本工機(堺市南区)。2020 年から同社の舵取り役を担ってきた中西章社長は、顧客と一緒になってモノづくりの改善を続けることを理念に掲げるとともに、金型加工の高精度化と「手仕上げレス」の実現に挑んでいる。

金子

最初に、中西社長のご経歴についてお話いただけますでしょうか。

中西

私は2016 年に当社へ入社しました。それ以前の経歴を言うと、大学卒業後にタイヤメーカーに入社して、生産管理や海外工場の立ち上げに従事しました。その後、コンサルタントに職を変えて製造業企業の経営戦略の立案や事業再生、業務改革などに関わってきました。その中で自動車、重工業、半導体などさまざまなモノづくりの業界に携わっていました。そうした中、2016 年に新日本工機にお声がけをいただいて、その年の10 月に取締役として参画させていただきました。そうして、2020 年に社長を拝命したという形です。

コンサルティング会社で、製造業に関する多くの知見やノウハウを蓄えて新日本工機の経営に参画されたのですね。

そうですね。当社への入社を決めたのは、やはり日本のモノづくりを支えている工作機械、特に当社の場合は大型機でカスタマイズを中心にした、まさに「マザーマシン」をつくっている会社だというところです。現場では設計でも製造でも純日本的な「すり合わせ」によるモノづくりを行っていて、私自身、「日本のモノづくりを強くしたい」という思いが自分のキャリアの一番の中心軸にもなっていることもあり、そうした会社の成長にぜひ貢献していきたいと考えたのが、経営に参画した最も大きな理由と言えます。

金型分野では門形マシニングセンタなど金型加工機を広く展開されています。

金型分野は当社の強みとしているところで、会社としても今後注力をしていく領域の一つです。当社のざっくりとした売上げを言うと、自動車業界が3割、航空宇宙業界が3 割、それ以外の重工業・造船・建機・半導体などの業界が4 割といったイメージ。その中で3 割を占める自動車では金型向けがメインになっていて、私自身、これまでの経歴の中で自動車業界といろいろな仕事をしてきたこともあり、この分野は会社として強化してきたところだと思っています。
門形5 面マシニングセンタ「DC-5NL」によるプレス金型加工の様子

門形5 面マシニングセンタ「DC-5NL」によるプレス金型加工の様子

自動車サイドパネル(後部)のプレス金型

自動車サイドパネル(後部)のプレス金型

「DCS」とリニアモータ駆動で面品位を高める

日本の工作機械は、精度は良い反面、加工効率を発揮するのはユーザー側の腕というところがあると思います。ただ、最近になって工作機械メーカー各社が「それではだめだ」ということで、機械をうまく使うためのサポートシステムを開発・提案することに注力しているという気がします。その方法は各社で戦略がずいぶん違っていますが、磨きレスに代表される金型の高精度化といった昨今のニーズに関して、御社はどういった形で展開していこうとお考えですか。

われわれは「デザインを忠実に再現する」ということと、「手仕上げレスを目指す」ということを20年以上前から目標として掲げてきて、それをずっと追求し続けてきました。自動車メーカーでは現在、いかに開発リードタイムを短くするかが大きな課題となっていて、金型の設計段階でプレス加工時のシミュレーションまで行っている。そうすると、金型設計時に作成したCAD モデル通りに極力誤差がないように金型をつくらないとシミュレーションの精度も上がらないわけです。そうした考えから、とにかくデザイン通りに忠実に金型を加工して、人が手を加えずに「手仕上げレス」にしていくということが最も大切なことだとわれわれは捉えています。
当社ではワークに応じて3 種類の金型加工機を有していて、さらに「DCS(Dynamic Control System)」という金型加工に特化した当社オリジナルの制御システムがあります。DCS は「速く・滑らか・きれい」というコンセプトで開発され、CAD/CAM でつくられたプログラム通りに形状を忠実に実現していくことができます。DCS の大きな強みと言えるのが、送り速度などの切削条件を変えても加工段差がまったく出ないこと。一般に、送り速度と加工面品位はトレードオフの関係にあるのですが、DCS を使えば送り速度を6,000 mm/min から20,000 mm/min に上げて加工を行っても段差はできません。こうした機能も手仕上げレスを実現する際の大きな強みになっています。
制御システム「DCS」により、送り速度が変化しても加工段差が出ない

制御システム「DCS」により、送り速度が変化しても加工段差が出ない

金型加工機に関して言えばいかがでしょうか。

当社のフラッグシップモデルとなっているのが「DCⅡシリーズ」で、自動車メーカーを中心に金型加工で活用いただいているのですが、このシリーズの最新機ではリニアモータ駆動を採用しています。これもやはり金型の加工面品位を高めるためです。寸法精度は高いのが当たり前で、面品位をどのように高めていくのかというのが大事。従来は一番多く稼働するX軸がボールねじでしたが、長年使っていると内部の球が摩耗して加工面を悪くしていく。それでわれわれは球1 つ1 つを交換して精度を維持するというメンテナンスを長年続けてきたのですが、やはりコストなどの面での問題もあり、リニアモータ駆動にしたのです。それにより駆動軸は非接触となり、面品位も非常にきれいに仕上がります。
こうした機械と制御のコンビネーションで手仕上げレスの実現を目指しているのですが、一方で注意を向けなければならないのは、手仕上げレスの金型加工技術を追求していくと、機械の価格がどんどん高くなってしまうということです。だから、生み出そうとする機械に本当に市場性があるのか、生産財として価値ある製品になっているかということも、並行してしっかりと考えておかなければいけないと思っています。
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