金型・金属プレス加工の総合展示会「INTERMOLD 2024(第36回金型加工技術展)/金型展2025が4月16日~18日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。主催は日本金型工業会。工作機械メーカー、計測機器、CAD/CAMメーカー、金型メーカーなど525社・団体が出展。53セッションの特別講演が行われたほか、会場ではギガキャスト技術で製造されたテスラ社の電気自動車「Model Y」の分解部品展示などが行われた。(『型技術』編集部、『プレス技術』編集部)
テスラ社の電気自動車「Model Y」の分解部品展示
牧野フライス製作所
牧野フライス製作所は、立形マシニングセンタ(MC)「V300」を展示した。立形MC「V33i」の後継機として昨年10月に発売された機種で、冷却方法の見直しや温度変化による機械変形の自動抑制機能により、長時間稼働における安定した加工精度の向上を追求した。また、ブースでは立形MC「V900」で加工を行った5.9tのインストルメントパネル用金型を展示。金型の大型化の需要に応えられる機種として展開し、1台で荒加工から仕上げ加工まで対応できることをアピールした。
西部電機
西部電機は、超精密ワイヤ放電加工機「MM50UP」を展示した。軸移動量は500×400×310mmで、ピッチ加工精度は±1μm。日本の伝統技術の「きさげ」と高剛性機械が融合したことで、加工精度を長期的に維持することが可能となった。ブースでは、事前に用意した加工プログラムを2次元コードの読み取りで呼び出すことで、ワーク設置後の加工工程が自動で行える機能のデモを披露した。2次元コードをワークに貼付すれば加工プログラムの選択間違いも防げるという。
安田工業
安田工業は、CNCジグボーラー「YBM9150V Ver.Ⅱ」を展示した。「大は小を叶える」をコンセプトとして、大型ながらサイズの小さいワークにも対応でき多数個どりの加工も可能とした。展示では通常は機械の出荷前に行うレーザー側長機によるX軸の精度測定を披露しμmレベルでの精度を実現していることをアピールした。また、ブースでは同社のコア技術にも挙げられている「きさげ」の体験コーナーも設けた。
アマダプレスシステム
アマダプレスシステムは、順送プレス加工自動化システム「ALFAS(アルファス)」によるデモを披露。ALFASはプレス機とレベラーフィーダの制御を一体化し、操作画面も一つにすることで使い勝手を高めている。デモではセパレータを模したサンプルを加工。サーボモータで上型をコントロールし、下死点で何度かコイニングする「ソフトコイニング」により流路の凹凸を精度良く仕上げた。サンプルの材質は0.1mm厚のSUSで、流路高さ0.5±0.01mmを達成。
ユーロテクノ
ユーロテクノは、スイス・アガトン社が監修し日本国内でOEM製造する特注金型部品を出展。写真のパンチは先端を狙い径φ0.1mmで加工し、実測値はφ0.1008mm。ダイは穴の狙い径φ0.102mmで加工し、実測値はφ0.1031mm。ユーロテクノが販売する標準金型部品「アガトンガイド」のユーザーは6割がコネクター関連。既存ユーザーからの要望の多い微細金型部品を充実させる狙い。
ミツトヨ
ミツトヨは、小型表面粗さ測定機「サーフテスト SJ-220」を展示した。測定対象の表面に写真のように置いて使用する。機器の上方から伸びたスタイラスが駆動し、先端にある微小な突起が測定対象の表面をこする際の揺れから表面粗さを測定する。手のひらサイズで、タッチパネルにより直感的な操作が行える。同社は工作機械のすぐ近くなど「現場で測りたい」という顧客の要望に応えるため、携帯性や耐環境性に対応した製品展開を図っているとする。
ナノソフト
ナノソフトは、プレス金型設計ソフト「3DQuickPress」をアピール。同ソフトはワークの3次元モデルからプレスの加工要素を自動で見つけ、その形状を展開するフィーチャー自動認識機能が特徴。レイアウト設計の操作性も良く、金型設計者の負担軽減につながる。3DQuickPressで作成した金型構造モデルは、同社のプレス成形シミュレーションソフト「3DSimSTAMP」に自動連携が可能。
丸紅情報システムズ
丸紅情報システムズは、トルコのCDMVision社製の目視検査支援システム「SuPAR(スーパー)」を紹介した。加工を行ったワークについて、従来は図面とワークの実物を目視で見比べて形状などの検査を行ってきたが、同システムはAR技術を活用し、実際のワークを映したタブレット画面にワークの3次元CADデータを感覚的な操作でフィッティングさせることが可能。これにより形状の相違などを発見しやすくできるという。3次元スキャナーなどを活用すればカラーマップを投影することも可能になる。
岩沼精工
精密プレス加工を得意とする岩沼精工は、独自工法で加工した圧着端子を出展。一般的な圧着端子に被覆付きのエナメル線をつなぐ場合、被覆をはがしてはんだ付けする必要がある。一方、写真の圧着端子(材質:リン青銅、板厚:0.5mm)は転造により細かな突起を成形してあり、この突起がエナメル線の被覆を突き破ることで接続が完了する。転造時に突起部が硬化するため、圧着時の強度も高まる。特筆すべきは、転造工程を順送金型内に組み込んだことで、2年前に工法特許を取得済み。
永井製作所
プレス金型の設計・製作を手掛ける永井製作所は、MR(複合現実)を活用した金型組立作業の支援ソリューションをPR。ゴーグルに表示される3次元モデルやアニメーションが組立作業をナビゲート。Bluetooth搭載のノギスやトルクレンチと連携することで、従来は感覚や目視に頼っていた作業の標準化も可能になる。同ソリューションは、デジタルに関心の高い群馬県内の中小モノづくり企業と電通総研がコンソーシアムをつくり開発した。
松山技研
熱処理と表面処理の総合技術でユーザーのニーズに応えることを掲げる松山技研は、これまでに製作した加工品などを展示し、実績をアピールするとともに来場者の関心のありかを探った。例えば同社が得意とする金型の熱処理によって硬さや耐摩耗性を向上でき、金型の長寿命化につなげることができるが、昨今、長寿命化のメリットを出せる量産品が減少しており、環境対応や機能性向上といったところにユーザーの関心が移っているという。こうした状況に柔軟に対応しつつ、情勢を見極め、今後の方向性を探る場として、今回のインターモールドに臨んだようだ。
インド金型工業会
インド金型工業会(TAGMA)は、特別講演として「インド進出セミナー Die & Mould India 2026 展示会説明」を行った。同会Executive AdvisorのNishant Kashyap氏が登壇し、インドの金型市場の状況について解説。今後のインド市場の発展やサプライチェーンの多角化の必要性から「日本企業にはインド市場に注目してほしい」と話した。また、2026年4月21日~24日にムンバイで開催される「Die and Mould India 2026」についてPRを行った。