PSS(宮城県石巻市、0225-25-4119)は、産業機械・省力化機械・実験開発機器の設計・製造やロボットを使った自動化設備の構築などを手がけている。2019年には工場内の狭いスペースにも設置できる接地面サイズ約0.68坪の機械式「極省スペースパレタイザー」(以下、パレタイザー)を開発し、翌年製品化すると、食品工場を中心に多数の引き合いを得て、今では同社の売上げの中核を担うまで成長した。現在、-30℃の冷凍庫内でも稼働する機種の開発を進めているところだ。
独自の機構で省スペース、高速搬送を実現
				
					
   パレタイザーとは、段ボール箱などのワークをパレット上に自動で積載する装置。同社のパレタイザーの開発のきっかけは、自動化ラインの設計・製作を請け負った際に出た顧客からの要望だ。「ロボットを設置することなどできない限られたスペースを提示され、そこに押し込むようにつくった」と渥美春人社長(写真1)は話す。パレタイザーの稼働が始まると、顧客の工場を訪れる取引先などからも注目されるようになり、試しに食品工場向けの展示会に出展すると多くの反響があった。製品化の手応えを得た渥美社長は、2020年に自社製品として取扱いを開始した。
 同社のパレタイザー(写真2)は、接地面サイズが標準機で幅1.58 m、奥行1.42 m(0.68坪相当)、高さは2.33 m、重量は約850 kg。パレットの大きさに加えて作業者一人が動けるスペースがあればほぼ設置できるという。上面吸着にて搬送可能な3 kg 以下のワークの場合、1分間に12個、20 kgのワークでも1分間に8個の高速搬送が可能だ。
    
    
    
    
      写真2 パレタイザー PAL-AH01A(標準機)(写真提供:PSS)
    
    
      
	   
   
				
					
   このコンパクトサイズかつ高速搬送を実現するために、ワークとパレットをそれぞれ個別に上下させる機構を採用している。コンベヤから流れてきたワークをコンベヤの終点で所定の位置まで持ち上げ、90°旋回するエア制御方式のヘッドで吸着する。このとき、パレットも同じ位置まで持ち上げて保持しておくことで、吸着ヘッドが水平移動する動作でパレットにワークを積載していくため、高速搬送が可能になる。1 段目の積載を終えると、ワークの高さ分パレットが下降し、積載されたワークの上に2 段目の積載を開始する。ワークとパレットおのおのが昇降するため、吸着ヘッドを上下させるための長ストロークのシリンダが不要になり、装置上部に突出する部分がなくなることで、装置高さを抑えられるのである。すべての積載が終了すると、パレットが一番下まで下降するので、ハンドリフトやフォークリフトで排出するといった流れになっている。
 標準機の対応パレットサイズは1100×1100 mmだが、装置サイズの変更も請け負っている。積載パターンは、顧客の要望に合わせて同社がプログラムを作成して登録し、顧客はタッチパネルから自由に積載プログラムを呼び出すことができる。 オプションでは、取り扱うワークのサイズが大きく異なり、標準の吸着ヘッドでは搬送できない場合、大きなサイズのヘッドおよびヘッドチェンジャーなどを提供し、積載終了後のパレットの搬送ではAGVにも対応できる。
遠隔診断で不具合にすばやく対応
				
					
   同社のパレタイザーは設置が簡単なことも大きな特徴だ。シンプルな構造のため、搬入経路が狭くても分解して納入し、半日あれば再組立てが可能だという。「製品化したときはまさにコロナ禍で、自動化ラインの仕事がすべてストップする中、導入の容易さからパレタイザーの仕事だけが動いていた。パレタイザーがなければ経営的に苦しかった」と渥美社長は振り返る。
 メンテナンス性を高めるために取り入れたのがリモートユニット。パレタイザーには、電気的障害の診断が行えるリモートユニットを標準搭載し、納入先のパレタイザーで不具合が発生した場合、遠隔で一次対応が行える。「顧客の工場から遠く、人員も少ないというハンデを払拭するとともに、工場の稼働を止めない、もしくは止まっている時間を最低限に抑える」という意図で内蔵した。
 また、パレタイザーとは逆に、パレットに積載されたワークを自動的にばらして降ろすデパレタイザー(写真3)も製品化した。こちらも接地面サイズが標準機で幅1.58 m、奥行1.42 m(0.68 坪相当)、高さは3.13 m、重量は約880 kgとなっている。上面吸着にて搬送可能な3 kg以下のワークの場合、1分間に7.5個、20 kgのワークでは1分間に5個の搬送が可能だ。
    
    
    
    
      写真3 デパレタイザー DEP-AH61A(写真提供:PSS)
    
    
      
	   
   
				
					
   Mech-Mind 社と共同でロボット用の3Dカメラをデパレタイザー用に最適化して搭載。マスターワークの登録をすることなく、異形サイズの箱が混載されたパレットから最適なワークを判断し自動で荷下ろしできるようにした。パレタイザーと同じくリモートユニットを内蔵している。
冷凍庫対応パレタイザーの開発を急ぐ
				
					
   現在、開発に取り組んでいるのが、冷凍庫内でも稼働できるパレタイザーだ。「-10℃の環境下でも動くロボットはあるが、設置面積が大きく導入が難しい。当社が目指しているのは-30℃でも動く機械式パレタイザー」(渥美社長)。冷凍庫内では、作業者が複数のグループに分かれて、数時間ごとに交代しながらパレット積みを行っているという。そのため、パレタイザーを導入できれば、効率面でもコスト面でも大きなメリットがあり、顧客からの根強い要望がある。
 -30℃の環境下では特殊なサーボモータやエアチューブ、ケーブルなどが必要になるため、メーカーと一緒に検討を進めている。同時に、低温環境でもパレタイザーが確実に稼働し続けることを実証するために、補助金を活用して同社内に稼働試験用の冷凍庫の設置を検討している。
 「冷凍庫対応のパレタイザーは、2026 年中の製品化を目指している。無事完成すれば、低温環境でも安定して稼働できる設計・製作のノウハウを別の装置にも応用できる」と、渥美社長はさらにその先の展開も見据えている。