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型技術

2025.05.27

藤田真奈の「直撃!モノづくり女子!これが私の歩む道」【PR】

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好きが仕事に!溶接職人として金型補修の現場で活躍
三和商工(株) 坂本真紀さん

モノづくり業界で活躍する女性たちのインタビューを通じて彼女たちの挑戦や成功、直面した課題などについて、フリーアナウンサーの藤田真奈が深掘りします!

プロフィール:フリーアナウンサー(元とちぎテレビ)。とちテレニュース9(とちぎテレビ)、アクセント!、ミライを照らせ~ KOSEN* Passport to the world ~(ともに栃木放送)などに出演中。

藤田真奈さん
 東京都渋谷区に本社を置く三和商工は、1967年の創業以来、金型補修機器の専門メーカーとして歩み続けてきました。金型の修理やメンテナンスに欠かせない機器を開発・販売するのみならず、洗浄・研磨・コーティング・カス上がり対策など、金型メンテナンスの主要工程を包括しています。 そんな中、近年新たに加わったサービスが「金型補修溶接事業」です。これにより顧客のニーズに応じた、より高度なアフターケアが可能になりました。愛知県刈谷市に新たに設けた専用工場で主に請け負っているということで、今回私はこちらの工場を訪ねて来ました。

偶然が紡いだ溶接人生 出会いを運命に変えた行動力

溶接事業部の坂本真紀さん

溶接事業部の坂本真紀さん

 出迎えてくださったのは、とてもお洒落で笑顔の素敵な方。この方こそ、金型補修溶接の専門スタッフである坂本真紀さんです。坂本さんはこの工場に常駐し、顧客から預かった金型を溶接補修しています。とはいえ、「溶接」と聞いても具体的なイメージが湧かない私。坂本さんにさまざまな質問をぶつけていると、あるモノを手に取って見せてくださいました。それは、金属で作られた小さな蓮の花(全長約10㎜)。花弁が一枚一枚重なり合う様子は非常に繊細で、まるでアクセサリーのような美しさでした。驚くことに、この作品は坂本さんが手溶接だけで作り上げたものだというのです!
 私がこれまで抱いていた「溶接」の印象はというと、中学校の技術の授業で体験した「ハンダ付け」のように、物と物を繋ぎ合わせるための役割といった感じでした。しかしこの作品では、それとは全く違う使われ方をしていたた、私の中の溶接に対する印象は一変し、すっかり魅了されてしまいました。
坂本さんが製作した「蓮の花と「かまきり」のアードワーク。どちらも繊細な技術が光ります

坂本さんが製作した「蓮の花と「かまきり」のアードワーク。どちらも繊細な技術が光ります

  「溶接との出会いは、偶然の連続でした」と笑みを浮かべる坂本さん。20代の頃、接客業に従事しながらアルバイトを探していたある日、いつもの居酒屋で隣り合った男性が溶接事業を手掛ける「ウェルドボーイ」の経営者でした。その出会いが後々、坂本さんの人生を大きく変えることになります。居酒屋での会話がきっかけとなり溶接の世界に飛び込んだ坂本さんは、工具の扱い方などを一から学び始めました。
 しかし、アルバイトは3か月間と短いもので、その後はフィットネスジムのインストラクターや携帯ショップの店員など、多様な業種を経験していたと言います。溶接のアルバイトを離れてから7年の月日が経ったある日、ウェルドボーイの経営者から突然連絡が入り、「また溶接をしてみないか」との誘いを受けました。特に断る理由もなかったため、「新しい挑戦をしてみよう」という気持ちでウェルドボーイに入社したのが、溶接職人としてのキャリアの始まりでした。

失敗を糧に—— 実践で磨かれた技術とやりがい

私も溶接に挑戦!少しだけですがモノづくりの面白さを体験 しました

私も溶接に挑戦!少しだけですがモノづくりの面白さを体験 しました

 素人同然の状態にもかかわらず溶接技術者として採用された坂本さんは、「やるしかない」という状況だったと振り返ります。練習ももちろんしたけれど、お客さまの商品を扱う現場では練習とは違って失敗は許されないという緊張感があり、それが技術を磨く原動力になったのだとか。さらに彼女の味方となったのが、「溶接の特性」でした。業務の中で主に行っていた「肉盛り溶接」は、腐食や摩耗で損傷した部分に、溶接用の金属を溶かして積み上げ、形状や機能を回復させるというものです。つまりもし上手くいかなかった場合でも、盛りすぎたら削れば良いし、削りすぎたら盛れば良い。その分時間はかかりますが、「失敗しても良いからやってみろ」という環境を作ってもらえていたことが、今の自分の技術を育み、溶接の楽しさを教えてくれたのだと語ってくださいました。
 4年間、金型の溶接補修を学んだあと、ウェルドボーイの拠点移動にともない、技術提携をしている三和商工に23年に入社した坂本さん。最近はTikTokに溶接動画を投稿されていて、フォロワーも700人以上いるそうです。
 技術者としてゼロからスタートしたこの6年間は、さぞご苦労があったのだろうと思い伺ってみると、「辛いとか大変だと思ったことが一度もない!」とのこと。取材をさせていただいたこの日は、隣に坂本さんの現在の上司である三和商工の堀幸平社長も同席してくださっていたので、社長への忖度か?とも一瞬考えたのですが、坂本さんの真っすぐな眼差しを見て、すぐにそうではないということがわかりました。
 そんな坂本さん、街を歩いていると自分が関わったものに出会う瞬間があるのだとか。例えば車のバンパーの形を見て、自分が金型補修を手掛けた車種だとわかるのだそうです。そうやって自分が関わったものが、誰かの役に立っている現場を目にした時、「この仕事をしていて良かった」と心から思うのだと話してくださいました。
 「私にとって溶接は、好きなことと仕事が一体化した初めての存在。天職であることは間違いないです」——そう語る坂本さんの瞳には、職人ならではの確かな輝きが宿っていました。
取材を終えて・・・

取材を終えて・・・

今回の取材の中で私が特に感じたのは、世の中には自分の「好き」が思わぬ場所に転がっているということ。将来の夢ややりたいことが見つからない若者も多いですが、彼女のように「まずはやってみる」という姿勢で飛び込んでみることで、心から楽しいと思えるものを見つけられる可能性があるのだと改めて気付かされました。また、彼女が幸せだと語りながら手掛けたものによって幸せになる人がたくさんいる―。
彼女の周りには、ものづくりを通じて生まれる幸せのループが広がっているように感じます。このインタビューを通じて、ものづくりの魅力に気付く人が一人でも増えることを願っています。



☆坂本さんが製作した「かまきり」の動画はこちらからご覧いただけます↓

溶接女子がTIG溶接の限界に挑戦したかった動画 その1

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