日刊工業新聞社は、国内金型業界の実態調査を目的とした「金型業界アンケート2026」を実施した。調査期間は2026年4月24日~6月12日で、173社から回答を得た。本調査では、近年の受注見通しや人材採用の状況、新規事業の展開、中国の金型に対する認識と対応、AI活用の状況、経営上の課題などについて尋ねている。回答結果からは、業界が直面する課題や各社の対応方針、今後の技術・市場動向に関する傾向が示された。本企画では前編・後編の全2回にわたってアンケート結果の概要を紹介する。
防衛分野への関心も
回答企業の従業員数の分布を見ると、「10人以上50人未満」が38.2%で最も多く、次いで「50人以上100人未満」が22.5%、「10人未満」が16.2%となっており、50人未満の企業が全体の半数以上、100人未満の企業が全体の7割以上を占めた(図1)。主要生産品目は、「プレス・鍛造金型」が41.0%と最も多く、これに「プラスチック金型」26.0%、「ダイカスト・鋳造金型」13.9%が続いた(図2)。また、主要取引分野については、「自動車・輸送機器」が67.6%と突出しており、金型業界が自動車産業との結び付きの強い産業であることを再確認する結果となった。
自社の特徴・強みとして最も多く挙がったのが「品質」で61.8%、「技術開発力」が53.8%で続き、日本の金型企業における強みの中心は品質と技術にあることが改めて示された(複数回答、図3)。また、「匠の技能」、「短納期」、「設備力」も約3割で並び、現場力の厚みも特徴的である一方で、「コスト」は16.2%にとどまり、価格競争よりも付加価値で勝負している構図が読み取れる。
また、今後注目している分野としては、「次世代自動車」(57.8%)が突出している一方で、「半導体・電子部品」(42.8%)、「航空・宇宙」(40.5%)、「医療」(32.4%)への関心も高いことが示され、自動車分野への偏重からの脱却を志向する動きが見られることがわかった(複数回答、図4)。一方で、「その他」の自由回答では、「防衛(4社)」、「防衛産業(2社)」、「宇宙・防衛・産業機器(1社)」といった回答も見られた。回答数自体は限定的ではあるものの、2026年4月に政府が防衛装備品の輸出規制緩和を打ち出したことを背景に、防衛分野への関心を向け始めている企業がある状況がうかがえる。
設備価格上昇と保守費用増に多くの声
ここ3年以内に導入した設備について尋ねたところ、「計測機器」(39.3%)と「マシニングセンタ」(37.6%)が上位を占め、「CAD/CAM/CAE」(29.5%)や「放電加工機」(25.4%)が後に続いた(複数回答、図5)。また、「3Dプリンタ(金属・樹脂)」(17.3%)が「ロボットなど自動化機器」(15.6%)を上回り、高い割合ではないものの金型業界で3Dプリンタの導入が進みつつある背景がうかがえた。一方で、「導入した設備はない」と回答した割合は13.3%に上った。なお、設備投資において補助金を活用した割合は回答企業全体の64.7%、活用しなかった割合は同25.4%だった。
また、2026年度に導入を検討している設備について尋ねたところ、「設備を導入する予定はない」と答えた割合が最も高く31.8%となり、回答企業の1/3に近い企業が投資に慎重な姿勢をとっていることが示された(複数回答、図6)。なお、設備の導入を検討する企業では「計測機器」(17.9%)や「マシニングセンタ」、「放電加工機」、「ロボットなど自動化機器」(各16.8%)などが導入検討設備として多く挙げられており、品質向上と省人化の両面への投資意欲がうかがえる。
図6 2026 年度に導入を検討する設備(複数回答)
現在使用している設備への要望について自由回答で尋ねた設問では、「コストが跳ね上がっているのをなんとかしてほしい。20年前の1.5~2倍。新品購入時だけではなく、修理やサービスの料金が高い」(広島県のダイカスト金型メーカー)、「機械本体価格が年々高くなってきている。補助金の範囲をもっと広げて適当な価格で購入できるようにしてほしい」(福島県のプレス加工メーカー)、「修理費が高い。部品代、工賃すべて高くなっている」(愛知県のプラスチック金型メーカー)など、設備価格の上昇と保守費用の負担増に関する指摘が目立った。
26年度は過半数が増収増益を見込む
足元の受注動向については、「減少している」と回答した割合が41.0%と最多で、「増加している」の30.1%を上回り、厳しい事業環境を反映した結果となった。一方で、2026年度の受注見通しについては、「減少」が33.5%、「増加」が30.6%とほぼ拮抗しており、先行きに対する見方は分かれていると言える(図7)。
なお、2026年度の受注見通しについて「増加」と回答した企業に、増加を見込んでいる分野について自由回答で尋ねたところ、自動車関連の回答が最も多かった。特に「EV車向けモーターマウント」(岡山県のプレス加工メーカー)、「車の電動化に伴う半導体やセンサ系」(福岡県のプレス金型メーカー)、「ハイブリッド自動車の足回り部品」(埼玉県のダイカスト・鋳造金型メーカー)など、EV化の需要拡大に関連した回答が目立った。これに、半導体や電子部品などの分野が続いたほか、医療や航空宇宙などの新興分野への言及も見られた。
2025年度の収益見込みについては、「減収減益」が39.3%、「増収増益」は38.7%とほぼ同水準となり、企業間で明暗が分かれる構図が浮き彫りとなった(図8)。一方で、2026年度の収益見込みは、「増収増益」が50.9%と過半数を超え、全体としては強気の見通しが優勢となった(図9)。一方で「減収減益」は28.3%と一定数存在し、2025年度に比べると業界全体としては改善への期待がある一方で、依然として先行きに対する不透明感が残る結果となった。