工場管理 連載「リーダーに捧ぐZ世代の新人育成バイブル Season2」
2026.04.30
第2回 改善のスキル育成① 今よりも良いモノをつくるスキルを高める
ジェムコ日本経営 古谷 賢一
ふるたに けんいち:本部長コンサルタント、MBA。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、地に足がついた活動をモットーに現場に密着。きめ細かい実践指導は国内外の顧客から高い評価を得ている。“工場力強化の達人”とも呼ばれている。おもな著書は『まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ』(日刊工業新聞社)。
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今回から第4 回にかけて「改善のスキル育成」と題し、入社して数年目といった若手社員に対して、どのようにして改善のスキルを教育すればよいのかについて解説をする。今回は「今よりも良いモノをつくる」ことを考えてみる。今よりも良いモノをつくるとは、モノづくりにおいては製品の品質をよりよくしていくことで、品質改善と言い換えても差し支えないだろう。
もちろん、実際に品質をよくするためには、製品に応じた電気・機械・化学などの知見や、生産プロセスに対する知見が必要になるが、本稿ではそういった個別の技術的な議論には言及しないことをご了解いただきたい。また、世の中には数多くの品質改善に活用できる手法も存在しているが、この紙面で改善のさまざまな手法論のすべてを語ることは難しいので、ここでは、品質をよくするために、若手社員が必ず押さえておくべき「着眼点」に絞って話をしたい。
知識の付与① 良い品質とは何かを理解する
品質をよりよくするためには、まず「良い品質」とは何かを理解することが大切だ。「良い品質」として思いつくのは、性能や特性がよいこと、外観や意匠がすぐれていること、使いやすいこと、信頼性が高く故障しないことなどが挙げられるだろう。つまり、顧客(市場)の要求を満たすものが良い品質だといえる。しかし、性能、外観、寿命などの顧客要求を満たすためには、製品の企画内容や、設計技術のレベルに大きく依存するため、この意味での「良い品質」を実現するためには、地道な技術開発による問題解決が定石だろう。
もう1 つ忘れられがちな「良い品質」の定義がある。それは、「バラツキが少ない」ことだ。これをぜひ覚えてほしい。たとえ良い性能の製品が開発できたとしても、製品ごとに性能が大きくばらついていると、顧客にとっては使いづらいものになる。顧客は、いつ買っても、いくつ買っても、バラツキの少ない、安定した性能の製品が手に入ることを望んでいる。これは量産品だけでなく、個別生産の一品モノでも同じだ。発注のたびに、でき上がった製品の仕上り具合が異なるのでは顧客は困るのだ(図1)。
知識の付与② バラツキを抑える考え方
製品のバラツキを抑えるために、必ず知っておくべき重要な概念がある。それは「4M 管理」だ。「4M」とは生産の質を左右する4 つの要素のことで、Man(人)、Machine(機械装置や治工具など)、Materia(l 原材料など)、Method(作業方法や管理方法など)を意味する。これらの頭文字をとって、4 つのM、すなわち4M と呼ぶことが一般的だ。生産活動においては、この4M を安定させることで、製品品質の安定(=バラツキの抑制)を狙うのだ。
作業者のスキル(作業能力)がばらつくと、製品の品質はばらつくものだ。作業に熟達した作業者は安定して良い品質の製品をつくれるが、そうでない作業者は品質にバラツキがあり、ときには不良品をつくってしまう。作業者のスキルが一定になるように適切な教育をすれば、人に起因するバラツキが抑制され、品質は安定すると考えられる。
同じことは、機械装置や治工具でもいえる。機械には必ずバラツキが存在している。同じ機械で、同じ条件の加工をしても、でき上がった製品には多かれ少なかれバラツキが発生する。複数の機械があれば、それぞれの機械で加工した製品にもバラツキが発生する。機械のメンテナンス、生産条件の調整などで、機械に起因するバラツキを抑制する必要がある。
また、使用する原材料にも必ずバラツキが存在する。バラツキの少ない原材料メーカーを選択する、生産条件などを工夫するなどの方法で、原材料に起因するバラツキを抑制する必要がある。そして、作業者によって作業方法、注意するべきポイント、あるいは管理のやり方が異なると、その条件で生産した製品の品質もばらついてしまう。そこで、作業方法や管理方法を標準化したり、作業のポイントを全員で共有したりすることで、作業方法や管理方法に起因するバラツキを抑制する必要がある(図2)。
経験の付与を考える
生産の「4M」を適切に管理して、バラツキの少ない生産プロセスを構築することは、良い品質の製品を生産するために不可欠な視点だ。教育の対象となる若手社員にも、この重要な視点に対する意識を高めてもらうために、「4M」に関わる経験を付与することが重要だ。
ここで、経験の付与に効果がある方法を紹介する。生産現場の安全教育ではKYT(危険予知トレーニング)という手法がよく活用されている。生産のある場面を題材に、どういった危険が潜んでいるのかを考え、安全を確保するためには何をするべきなのかを議論するやり方だ。
これと同じように、ある生産工程を題材に(倉庫や間接業務を題材にしてもよいだろう)、実際に現場を目で見て、「4M」の視点で、どのようなバラツキが存在するのか、どのようなバラツキの可能性があるのか、を考えてもらうのだ。たとえば、若手社員に一定の時間を与えて、バラツキの可能性があるものを列挙してもらい、その内容を先輩社員と一緒に議論するのだ。良い視点があれば褒め、不足している視点があればアドバイスをする。このような手法で教育を行うと、概念としての「4M」を、実際の現場と結びつけて理解できるようにすることができる。
次回までの振り返り
今回紹介した、2 つの知識、「良い品質の定義」と「バラツキを抑制するための4M 管理」を、若手社員に対して実際に教育をしてみよう。生産している製品によって、顧客が求める良い品質の具体的な中身はさまざまなので、自社の事例をもとに、若手社員が知っておくべき知識を教育するのだ。知識の付与ができれば、経験の付与として、ぜひ実際に生産現場での「4M」視点でのバラツキの洗い出し(バラツキが発生する可能性の洗い出し)を行ってほしい。
今月の検討課題
・知識の付与を行う
良い品質とは何かを理解してもらう
バラツキの考え方を知ってもらう
4M 視点を理解してもらう
・経験の付与を行う
4M 視点でバラツキを抽出してもらう