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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.11.10

機械と制御のコンビネーションで設計に忠実な加工、そして手仕上げレスへ―新日本工機

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新日本工機㈱
代表取締役社長兼COO
中西 章氏

Interviewer
埼玉大学大学院 理工学研究科 教授
金子順一氏

顧客と一緒にモノづくりの改善を続ける

先ほど「CAD/CAM のプログラムで指令した通りに加工するのが重要」というお話がありましたが、CAM では経路は出すけれど加工の意図まできちんと工作機械側に伝わっているのかという問題もあると思います。そういった部分も含めて、CAM ベンダーへ働きかけを行ったり協業したりすることはあるのでしょうか。

当社では長年にわたって国内外のCAM ベンダーといろいろな協業をしていて、こんなプログラムを出せばこんな加工ができるといったことを一緒に検討してきました。作成したCAD、CAM、NC の各データに基づく誤差解析もやっていて、誤差が出ない加工指令プログラムをどのように出すかというところも研究しています。

そうして得た知見をもとに、こう設定すればこうなるという助言を顧客へ行っているのですね。

具体的にはお客さまから加工前のプログラム、あるいは加工後に不具合が出たプログラムをいただいて、それらを分析して、場合によってはCAM ベンダーにも入ってもらって、ある意味「3 社協業」で連携してプログラムを修正したり機械側のDCS の処理の仕方を変更したりするといった取組みを行っています。

顧客のサポートをかなり深いところでやられているのですね。

当社の一番の理念は、「お客さまと一緒にモノづくりの改善を続ける」ということなのです。ある自動車メーカーについては当社の営業・技術担当者が毎週のように現場に行って問題を共有していますし、私自身も自動車メーカー各社の現場を回って金型の加工面を見せていただいて、問題を把握しアイデアを提案するなどかなり深く入り込んでいます。これは国内に限らず海外企業でも同様で、いわばお客さまと一緒に改善活動をやらせてもらっているという感じですね。 困りごとや要望は各社それぞれですが、その状況に合わせてカスタマイズ対応していく。機械を売るだけではなく、導入いただいたあともしっかり柔軟に対応していく、という取組みをずっと積み重ねているのです。

顧客と完全に一体化した形でのソリューションの提供を大事にしているのですね。
門形マシニングセンタ「HF-8M」

門形マシニングセンタ「HF-8M」

Tier2 をTier1 にする支援を

最近の工作機械のトレンドは、「つくりたい面をつくるために動く」というものに変化しているように感じています。その関連として、工具側の状態、切削力や工具摩耗への対応として、新たな技術の研究は行っていますか。

CAM ベンダーと同様、工具メーカーともいろいろ協業しながら取組みを行っています。例えば工具を交換したあとの加工段差など、工具の影響によって加工面不良が出ることはあるので、その対策をいろいろ検討しています。また、2000 年代初めからは工具交換したあとの工具計測も行っています。工具は高速回転すると熱をもって膨張して伸びるのですが、その状態の工具を、レーザーを使って実際の加工姿勢で高精度に測定できるようになってきています。
また、最新のものではカメラで測定するようにしています。従来は、切りくずなどの細かい粉状の物質が工具に付着すると測定エラーになることがあって、無人運転が止まってしまうトラブルがあったので、カメラで異物の判別ができるようにすべく、開発に取り組んでいます。この仕組みでは、異形工具の測定もできるようになってくるので、工具測定というところではさらに進化させてきていると言えます。

では最後の質問です。国内の工作機械メーカーの一番の強みは、御社がすでにやられているように、顧客会社との距離が近くて加工技術のニーズに直結した支援が行えるところだと思います。今後、さらなる取組みとして顧客企業に対してどのような形での支援を考えているかについてお教えください。

自動車メーカーとTier1、Tier2 の金型メーカーではニーズが違うと捉えていて、支援の取組みについてもそれぞれで違ってくると考えています。
自動車メーカーについては、とにかく手仕上げレスの実現を目指すということがあります。例えば、象限突起に関して、これをなくすために当社の技術者らは機械の調整を、時にはボールねじを組み直すことを含めて、現場で徹底的に行っています。こうした象限突起の解消以外にも、加工中の工具折損を含めた加工不具合の検知など顧客からいろいろなテーマをいただいて、それらを1 つ1 つ解決していくために少しずつ取り組んでいます。
一方、Tier1、Tier2 ではビジネスモデルの転換を手伝うことがわれわれの仕事だと捉えています。自動車メーカーはEV シフトに伴って、社内の金型加工を縮小しています。自動車メーカーが社内の限られたリソースをモビリティづくりの中心へ注ぐようになった結果、これまで自動車メーカーがやっていた仕事をTier1 がやっていかなければならなくなる。そうすると、今度はTier1 が手がけていた仕事をTier2 が担う必要が出てくる。その中でわれわれがやるべきことは、Tier2 がTier1 になるのを支援することだと考えています。つまり、バリューチェーンの上流にある仕事をどうとるか、それによってどう付加価値を高めていくかということが大事になるのです。

Tier2 をTier1 にステップアップさせるという、技術的な支援のみならず、自動車、金型づくり全体を踏まえたビジネスの支援ですね。

実際に、あるTier2 企業とそうした取組みを進めているのですが、その企業に当社のマシニングセンタを採用いただいて、われわれから自動車メーカーの紹介なども行いながら支援を行ったところ、Tier1として自動車メーカーと直接取引を行うようになりました。われわれは自動車メーカーともビジネスを行っていて、自動車メーカーがどのような金型づくりをやってきたかをある程度理解していますし、そこで求められる工作機械も提供することができる。だからこそ、当社の機械をTier2 に導入してもらい、Tier1 になるお手伝いをすることができるのです。
自動車メーカーは手仕上げレスの世界をどんどん追求して、Tier2 はTier1 にどんどん変わっていく。そうしたビジネスモデルの転換を支援することで、自動車メーカーやTier1 が自社のリソースを従来と異なる部分に割けるようになり、結果として日本の自動車産業の競争力の向上に寄与できると思っています。

画期的であり、大切な仕事ですね。まさに新日本工機にしかできないことだと思います。本日は興味深いお話をいただき、ありがとうございました。
中西 章(なかにし あきら)
2004 年 慶應義塾大学 経済学部 卒業
2016 年 新日本工機㈱ 入社
同 年 同社 取締役
2019 年 同社 専務取締役
2020 年 同社 代表取締役社長
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