三共製作所(東京都北区)は、主軸30番の小型マシニングセンタ(MC)向けに、片持ち2軸テーブルと自動パレット交換装置(APC)を組み合わせた自動化システム「三共パレットマスター SPM400」を開発した。MCに搭載することで3軸機を5軸機として使え、長時間の無人運転も可能になる。30番MCで加工するワークは小型のものが多く、ワーク交換を自動化する際は多軸ロボットを使うのが一般的だ。一方、今回のシステムは30番MCでの大型ワーク加工を想定し、最大500mmのワーク径に対応する。EV向け大型アルミ部品や5軸機能を用いた複雑形状ワークの工程集約を省スペースかつ無人で実現したいというニーズに応える。
自動化システム「三共パレットマスター SPM400」(三共製作所提供)
高剛性な片持ち2軸テーブルを開発
システムを構成する片持ち2軸テーブル「RT500」とAPC「SRD400」はいずれも新規に開発した。RT500の特徴は両持ち2軸テーブルと比べても遜色のない剛性。ワークを載せて“ゆりかご”のような動作をする2軸テーブルは、両持ち構造で剛性を担保するケースが多く、片持ち構造はワーク搭載時や加工時の変位が課題だ。RT500は同社独自の高剛性ベアリングの採用で、この変位を最小限に抑えた。ワークを載せるゆりかご部分の軽さと剛性を両立するため、CAE解析による最適設計手法も新たに取り入れた。
SRD400には、同社が長年培ったAPC向け機構部品のノウハウを詰め込んだ。1つのモータで上下運動と旋回運動ができるカム式のため、シンプルでコンパクトな構造が特徴。パレットサイズは400mm角で、パレットとワーク合わせて最大荷重200㎏(100㎏×2)に対応する。パレット交換時間は15秒。テーブルとAPCを合わせたシステム全体の定価は約700万円。
開発を主導した安田浩執行役員は、「3軸機を5軸機として使えるので、加工の付加価値を高められ、APCによって稼働率もアップできる。ユーザーにとって設備投資の効果が大きく、その意味で注目されている」と手応えを語る。最近は30番MCでの5軸加工が増えており、加工時間が長くなりがちだ。人手不足が深刻化し、十分な人数の作業者を配置できない現場が増える中、省人化や夜間の無人稼働に役立つツールとして訴求する。1月からユーザーへの提案を始めており、4 月以降の出荷を予定する。
工作機械メーカーにテーブルや機構部品などを提供してきた同社にとって、パレットマスターはエンドユーザーに向けた提案の第一弾だ。今後も、自社製品を組み合わせた周辺機器の開発を推進し、「これまでのような“モノ売り”から、付加価値という“コト売り”へと転換する」(安田氏)。
開発体制も強化する。1月の組織変更で工作機械、産業用機械、溶接の各分野向けに商品を開発する専門部署を設置した。エンドユーザーの課題解決につながる提案に注力していく。