機械設計 特集「生産革新のカギを握るロボットSIer」
2025.11.17
活動内容のレベルアップを図り、 自動化業界全体の発展に貢献―(一社)日本ロボットシステムインテグレータ協会
【インタビュー】一般社団法人 日本ロボットシステムインテグレータ協会 副会長 奥山浩司氏(株式会社HCI 代表取締役社長)
2023 年に日本ロボット工業会の特定事業委員会から新たな団体へ組織変更した「一般社団法人日本ロボットシステムインテグレータ協会」(JARSIA)は、多様な活動を展開し、産業用ロボット業界を牽引してきている。
ここではJARSIA の奥山浩司副会長に最近の取組みのポイントと今後の展望を聞いた。( 『機械設計』編集部 )
活動の活発化を目指し組織体制を見直し
編集部

―協会設立から7 周年を迎え、現在、組織としてどのような取組みをされているのでしょうか。
奥山

当協会は設立から7 年を経ましたが、2023 年に一般社団法人化し、ようやく2 年が経ちました。本年度の総会を機に、組織体制を抜本的に見直しました。これまでは「分科会」形式で事業を進めてきましたが、本年度から委員会制度を採用し「事業企画」「協会業務」「人材育成」「技術・標準化」の4 つの部門に再編成しました。協会では「ロボットSI 検定試験」や「ロボットアイデア甲子園」など、多くの事業を実施してきておりますが、これらをどの部門で運営するかを明確にいたしました。また、各部門の運営に責任をもってあたるために、従来の会長と副会長2 名という体制から、会長と副会長5 名という体制に変更しました。私は副会長として、4 つの部門全体を統括する幹事会議長を務めています。理事・幹事の役員には、各部門の主要委員会の運営に携わってもらっています。さらに委員会やWG には、多くの会員企業の方にご参加いただけるようにし、会員同士のコミュニケーションを活発化していきたいと考えているところです。
加盟企業342 社と大きな規模となりましたが、多くの会員の皆様に協会活動に積極的にご参加いただけるような機運をたかめるためオープンな組織運営を目指しています。具体的には各委員会活動のほか、活動報告の場として「四半期説明会」を東京、大阪、名古屋で開催するなど、各地域の会員が参加しやすいさまざまな場を提供していきます。
検定制度を全面的にリニューアル

―2020 年度から実施しているロボットSI 検定をリニューアルするとのことですが、その狙いを教えてください。

従来の教育プログラムを見直し、検定制度を整備しました。まず工業高校の生徒など、ロボットシステムインテグレーションの初学者が受験可能な入門者用の新3 級検定を新設しました。実技試験では、ピックアンドプレースが扱えるレベルです。これに伴い、基本的な操作スキルを身につけている実務経験者を対象に実施している旧3 級は新2 級に変更しました。
実技試験では、ツール座標や外部入出力に対応できることが求められます。今後、新2 級の上級にあたる、制御装置のPLC との外部接続や配線なども対象とした新1級検定を新設します。また、提示された要求仕様を理解し、ロボットシステム全体を構築できる技術者を対象とした最上位の旧2 級はロボットSI エキスパートに変更となりました。新1~3 級検定は、将来的に厚生労働省認定の取得を目指します。現在、新3 級の正式開始に向け、工業高校と連携してプレ試験を実施しています。
これとは別に、教育・人材育成プログラムとして、初心者向けの「ロボットSI 基礎講座」や専門性の高い「自動化技術講座」を開催し、技術者のレベルアップを支援しています。
積極的な参加者が増えてきた「ロボットアイデア甲子園」

―業界の認知度向上に一役買っている「ロボットアイデア甲子園」では、全国の高校生や高専生が新しいロボットの使い方を提案しています。年々規模が拡大していると聞いています。

全国各地で行われる地方大会では、企業の工場やロボットセンターなどに設置されている産業用ロボットシステムの見学会とロボットセミナーを実施し、参加者は見学した体験から得た着想で、産業用ロボットの新しい使い方を考えて発表します。その中から選ばれた代表が全国大会に出場します。2024 年度は21 カ所、2025 年度は23 カ所で地方大会が開催され、参加者は1,500 名を超える規模となりました。昨年の全国大会の前日には、生徒や教師の皆さんと審査・選考委員の大学の先生方や企業の方々との交流会を開き、大会に参加するモチベーションを高めてもらう機会になりました。このイベントを通じて、ロボットSIer を知り、実際に就職した生徒や学生もいます。
地域のネットワークづくりを推進

―地域のネットワークづくりを推進するための事業として、全国各地で「SIer’s Day」を開催していますね。

全国各地の会員が、各地域における企業同士のネットワーク構築やロボット導入促進を目的に、地域連携委員会を中心に行っている催しです。専門性の高い基調講演や行政の施策、地域の取組み、導入事例に加え、工場見学会など、さまざまなプログラムを企画し、SIer やロボット導入検討中のユーザー企業などが参加し交流を深めています。全国10 カ所で実施しており、協会のすそ野拡大につながっています。産官学連携で地域密着型のビジネスが芽生える機会にもなるのではないかと期待しています。
また、全国の自治体をはじめとする、公的機関の担当者とともに、各地のロボット産業支援に関する取組みの紹介や情報交換を行う地域政策研究会を、今年度は国際ロボット展の開期中に開催する予定です。
リアル展示会のメリットを体験

―「ロボットFA 関連商品説明会」も盛り上がりを見せています。

このイベントはロボットSIer や関連企業を対象としたロボットシステムインテグレーションに有効な製品や新技術を紹介する展示会で、年2 回開催しています。徐々に規模大きくし、前回は48 社が出展いたしました。来場者は目的をもって来場し、実際にブースで出展者に直接詳しい話が聞け、リアルな小規模展示会ならではの、商談に発展しやすいことも魅力の1 つです。会員をはじめとする来場者も回を追うごとに増えており、出展者もリピーターが多くなっています。今後もさまざまな取組みを通じて協会の認知度を高め、新たな企業に会員となっていただき、業界の発展につなげていきたいと考えています。