3Dプリンティングと積層造形(AM)技術の総合展「TCT Japan 2025」が1月29日(水)~31日(金)の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。3Dプリンタとその周辺機器、樹脂や金属などの材料、評価のための測定機器、造形サービスまで国内外の関連製品・技術が集結。海外からの出展も含めて100以上の企業・大学・公的機関が、製品の高付加価値化や生産性の向上につながる提案を行った。(『機械技術』編集部)
福井県工業技術センター
「金属AM公設試パビリオン」にブースを構えた福井県工業技術センターは、地元の前澤金型(福井県鯖江市)と共同開発したメガネフレーム用射出成形金型を紹介。フレーム形状に合わせた水管を造形することで金型の温度ムラを低減し、約15%のサイクルタイム短縮や80%以上の不良率低減につなげた。課題だった造形時のベースプレートのそりも、スリット構造の付与や余肉の削減で解決。コスト面でも、生産枚数5,000枚で1枚当たりの単価が従来金型より安くなるなど成果が出ている。前澤金型によると、メガネフレームは流行による形や色の変化が頻繁で、そのたびに成形条件を確立する手間や不良率の増加が課題だった。
ソディック
ソディックは、金属3Dプリンタ「OPM250L」で造形した射出成形金型のサンプルを紹介した。材料はSUPERSTAR21(SUS420J2相当材)、造形にかかった時間は焼結や切削などを含めてキャビティで63時間54分、コアで131時間14分。製造コストを抑制するため、共有のモールドベースに入れ子をセットして使うカセット金型の方式を採用。必要な部分のみ造形することでコストを抑え、内部に水管を配して金型としての機能も高めた。造形時のそりや割れを抑える独自のSRT工法も活用している。
金属技研
金属技研は、金属積層造形と接合を組み合わせてクローズドインペラを製造する方法を提案した。クローズドインペラはインペラ(羽根車)の両側をカバーで覆ったもの。提案方法では、まず0.5mmの加工しろを設けて造形した2つの部品を切削で仕上げた後、ろう付けで接合する。接合した部品にHIP(熱間等方圧加圧)処理を施し、ろう材成分を母材に拡散させることで強度を高める。インゴットから削り出した部品をろう付けし、HIP処理を施す従来方法よりコストや納期の面で優位性がある。クローズドインペラの性能に影響する内部の寸法精度や表面粗さも機械加工と同レベルにつくれるという。
オリックス・レンテック
3Dプリンタによる造形サービスを手掛けるオリックス・レンテックは、中国BLT社製の金属3Dプリンタで造形した各種サンプルを展示した。自動車のリアサブフレームはアルミ合金製でサイズは1,230×845×337mm。内部は肉厚2mmのメッシュ構造になっており、重さは約21㎏と従来の中空アルミダイカスト品に比べて20%軽量化した。BLT社の金属3Dプリンタはチタン合金部品の量産にも使われており、1度の造形で54個のバッテリーハウジングを製作した例や、20~30μmの積層厚でスマートフォンのヒンジ機構やフレームを造形した例が紹介されていた。
日本電子
電子ビーム金属3Dプリンタを提供する日本電子は、純タングステンの造形技術をアピール。これまで6㎝の高さまでしか造形できなかったが、予熱温度を1,600℃以上に保つ超高温プロセスの開発と溶融条件の最適化で12㎝の高さを達成した。タングステンは融点が約3,400℃と金属の中で最も高く、クラックや内部の気泡ができやすいため造形が難しい。
NTTデータザムテクノロジーズ
NTTデータザムテクノロジーズのブースで目を引いたのは、金属3Dプリンタで一体造形したロケット燃焼室のサンプル。サイズは800×800×1,000mm。CuCrZr合金を80μmの厚みで積層した。燃焼室は壁の内部に水管が通っているため、従来は分割して製造している。一体化することでコストと納期の面でメリットがあるという。使用した独AMCM社製の金属3Dプリンタ「AMCM M 8K」は最大で800×800×1,600mmの造形が可能で、1kWレーザを8本搭載することによる高速造形も得意。
日本HP
日本HPは、樹脂粉末を独自技術で造形する3Dプリンタ「HP Multi Jet Fusion」を紹介した。敷き詰めた樹脂粉末に「エージェント」と呼ぶ溶融剤をかけ、ハロゲンランプの熱で樹脂を融合。これを繰り返して造形するため、レーザで焼結する従来方法よりも縦方向の引張りに強く、造形時間も約10倍早まるという。造形サンプルとして、細かなシボを造形した自動車のカスタムパーツや、難燃性のナイロン粉末で造形した自動車部品を展示した。