機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2025.07.15
第14回 機械設計者でも知っておきたい! CAMを使った加工プログラムの作成方法
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
モノづくりに欠かせない、さまざまな加工方法の中でも、特に「切削加工」は非常によく用いられている。同時に切削加工を行う工作機械を動かすための加工プログラムを作成する「CAM(キャム)」も多くの場面で使用されている。
機械設計者が自らCAMを使用して切削加工をすることはあまりないかもしれないが、その概要について理解を深めておくことで、加工しやすい設計、コストを意識した設計が行えるようになる。今回は、比較的安価に使用できる「Fusion 360」を例に、CAMの操作手順を紹介する。
CAMとは
CAMとは“Computer Aided Manufacturing”の略で、直訳すると「コンピュータによる製造支援」となる。具体的に説明すると、CNC工作機械を動かすための加工プログラムを作成するものである。この加工プログラムのことを「NCプログラム」や「NCデータ」と呼ぶ。
NCとは“Numerical Contro(l 数値制御)”の略で、NCデータの中には制御するコードがあり、指令するコードの頭文字に“G”が付くため「Gコード」とも呼ばれる。また、CNCとは“Computer NumericalContro(l コンピュータ数値制御)”の略で、工具の移動量や移動速度を数値制御することである。CNC工作機械は入力された指令に基づいて、X軸/Y 軸/Z 軸の各軸がモータで制御されて動作するため、NCプログラムを入力することにより自動で加工を行うことができる。現在、CNCとNCの厳密な呼び分けはされておらず、CNC工作機械のことをNC工作機械と呼んでいる。工作機械は、主に材料を削ったり、穴をあけたりする除去加工に用いられる機械のことである。
NCプログラムは、加工オペレーターが制御装置で直接入力することもあるが、複雑な形状や3次元形状を加工する場合には、便利なCAMが用いられている。CAMには「2 次元CAM」と「3 次元CAM」がある。2 次元 CAMは、DXFやDWGなどの2次元CADデータを読み込んで、線データを基にNCプログラムを作成する。一方、3次元CAMは3 次元モデルデータを読み込んで、立体形状を基にNC プログラムを作成する。今回は3 次元CAMについて、Fusion 360を例に説明していく。
CAMの作業フロー
CAMの作業フロー(図1)は、3次元モデルデータを読み込んできた後、セットアップで加工原点とストック(素材)の設定を行う。次に加工指示を行い、ツールパス(工具経路)を生成し、シミュレーションで切削状態を確認しながら修正を行い、最後にポスト処理でNCデータに変換する。場合によって、加工指示書を作成したり、工具登録を行ったりなどの事前準備が必要になる。
図1 CAMの作業フロー(Fusion 360 の例)