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機械設計

2025.02.10

中国ローカルロボットメーカーの躍進

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エム・アイ・アール 高 原

はじめに

 ここ数年、中国のローカルロボットメーカーは国内外で大きな注目を集めている。特に中国政府の「中国製造2025」計画やデジタル経済の進展が後押しし、産業用ロボットやサービスロボットの分野で急速な成長を遂げている。これにより、中国は世界のロボット産業におけるリーダーシップを強化し、従来の海外勢に対して存在感を高めている。MIRは中国製造業に特化したマーケティングリサーチ会社として、中国ロボット市場に関する独自のデータベースを構築している。本記事では、そのデータベースに基づいて、中国ローカルロボットメーカーの快進撃を支える要因や市場のトレンド、競争力の強化に向けた取組みを紹介する。

中国ロボット産業の概況

 中国は近年、急速にロボット市場の拡大を遂げており、2023年における中国の産業用ロボットの設置台数は世界全体の半数以上を占めるまでに成長した。図1に、中国における2017~2024年の産業用ロボットの四半期別市場規模を示す。
図1 2017~2024年(Calendar year)産業用ロボットの四半期別市場規模(出荷台数、前年比成長率/%)

図1 2017~2024年(Calendar year)産業用ロボットの四半期別市場規模(出荷台数、前年比成長率/%)

[国策としてのロボット産業]

 2015年5月に「中国製造2025」が発表された。当時の中国は「世界の工場」と呼ばれ、名実ともに「製造大国」となっていた。しかし、中国製品には「安かろう悪かろう」というイメージが強く、高付加価値商品を生産するために、中国政府は「製造大国」から「製造強国」へと舵を切った。次世代情報技術や新エネルギー車など10 の重点分野を設定し、ロボットは10の重点分野の2番目に位置付けられていた。翌年の2016年に「十三五ロボット産業発展計画」も発表され、ロボット産業の政策支援が本格化し、「第十四次五カ年計画」が開始された翌年、2021年12月「十四五ロボット産業発展計画」が発表され、中国ロボット産業を加速させる狙いである。

中国ローカルロボットメーカーの台頭

 中国ロボットメーカーは、長らく日本や欧米のロボットメーカーに押されていたが、ここ数年で劇的な成長を遂げている。2017年、中国市場においてTOP10 に入ったローカルメーカーは1 社のみ、しかも最下位であった。わずか5 年で、中国メーカーであるESTUN、Inovance、EFORT の3 社がTOP10 に入った。ESTUNの出荷台数は日本最大手のF社に次ぎ2 位となった。さらに、TOP20 社中、中国メーカーは10 社で、半数を占めている。図2に外資系とローカル系の2023・2024年上半期の比較を示す。
図2  外資系VSローカル系「2023・2024年上半期(1~6 月)の比較」

図2  外資系VSローカル系「2023・2024年上半期(1~6 月)の比較」

 また、協働ロボット市場ではJAKA Robotics、遨博(AUBO Robotics)などの企業が市場をリードし、中国ローカル協働ロボット市場はほぼ独占状態となった。

圧倒的な強さを見せる中国協働ロボットメーカー

 中国協働ロボットメーカーの最大の特徴は、コスト競争力にある。多くの中小企業が自動化の導入を模索する中、欧米や日本製の協働ロボットは高価で手が届かない場合がある。これに対し、中国のメーカーは比較的低価格で高機能な協働ロボットを提供しており、中小企業にとって非常に魅力的な選択肢となっている。ローカル系メーカーの多くは、部品調達や生産工程を効率化することで、製造コストを抑え、導入しやすい価格帯を実現している。特に中国国内市場では、コストパフォーマンスの高さが、導入を進めるうえでの大きな推進力となっている。さらに、製品の柔軟性とカスタマイズ性にも長けている。

 図3 に、2019~2026 年中国協働ロボットの販売台数推移および今後の予測を示し、図4 に中国協働ロボットのシェアを示す。
図3 2019~2026年中国協働ロボットの販売台数推移および今後の予測(台)

図3 2019~2026年中国協働ロボットの販売台数推移および今後の予測(台)

図4 中国協働ロボットのシェア

図4 中国協働ロボットのシェア

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