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機械技術

2024.10.07

手づくり&低コストのIoT で機械稼働率アップを実現―ファインタック

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 プラスチック金型メーカーのファインタック(岐阜県中津川市)は1993 年に創業した。金型部品の機械加工からスタートし、金型設計・製作全般に必要な技術・ノウハウを蓄積。現在は成形機の型締め力で50~250t 程度の射出成形金型を主に扱い、スライドやシリンダーを複数組み込んだ複雑形状を成形できる金型や2 材成形用の金型を得意とする。自動車向けの2 材成形用金型では、PP(ポリプロピレン)とエラストマーを組み合わせたエンジン回りの機構部品や、色・テクスチャの異なる2 材を組み合わせて高級感を演出した外装部品などで実績がある。

「組み立てながら微調整できる金型と違い、1つ1 つに厳しい寸法精度を要求される金型部品加工を経験したことが、当社の金型づくりに活きています」(熊谷直樹専務、図1)。近年は新規顧客の掘り起こしに力を入れており、自動車に加えて住宅設備や家電、医療機器などにも取引先を拡大している。

 そんな同社がこだわるのが“機械の稼働率”だ。機械が停止している時間を極力生じさせないようにするため、稼働率重視の工程設計を徹底。顧客の求める納期を前倒しした社内納期を設定し、次々と作業を進める。こうすることで顧客に前倒しでの納期を提案できるほか、内製率の向上を図れ、急な設計変更のような短納期の業務にも対応できる。

 一方、課題となっていたのが決められたスケジュールを乱すような各種のトラブル。夜間・休日の無人加工中にアラームで機械が停止したり、工具破損により予定していた加工ができていなかったりとさまざまなケースがあるが、稼働率アップを目指して業務を詰め込んでいる同社には影響が大きい。また、同社ではオペレータが休日出勤して段取り替えをすることがあり、加工の終了時間が予測できないことも課題だった。「休日に出てきたのに加工が終わっていなくて1 時間以上待たされたり、逆に何時間も前に終わっていたりと無駄が多い。何とかしたいと思っていました」(木下斗来営業技術課長)。
図1  日頃から稼働率アップに取り組むメンバーたちと。最前列左より伊佐次アドバイザー、熊谷専務、木下課長

図1  日頃から稼働率アップに取り組むメンバーたちと。最前列左より伊佐次アドバイザー、熊谷専務、木下課長

NC 機5 台の稼働状況を把握

 その対策として始めたのがIoT の活用である。もともと、IoT 関連機能が付随していた安田工業のマシニングセンタ(MC)に限って稼働状況を「見える化」していたが、メーカーが異なる別の2 台(OKK(現・ニデックオーケーケー)とファナック各1 台)にも横展開したいと考えていた。そこで、プラスチック部品の製造を行う関連会社のワイ・ケー・ピー工業(岐阜県中津川市)でIoT 構築を主導した伊佐次尚之工場企画室アドバイザーの協力を得て、3 台のMC の稼働状況を把握できるIoT を開発。その後、形彫り放電加工機(ソディック)とワイヤ放電加工機(三菱電機)にも活用を広げた。現在は現場に設置した大型モニタ(図2)で、MC3 台、放電加工機2 台の全5台の稼働状況を確認できる。アラーム発生時と加工終了時に担当者へメールで連絡が届く機能も開発済みだ。

 開発にあたってはコストに配慮した。一般的にIoT を構築するには多額のコストがかかるが、同社ではNC 機側に改造を加えずに必要な情報をとれる方法を模索し、操作パネルを市販のWeb カメラで撮影したり、主電源にセンサを後付けしたりする方法でコストを抑えた。「ワイ・ケー・ピー工業では2016 年頃から射出成形機の稼働監視や金型のショット数管理のためのIoT に取り組んでいました。今回、その知見を活かすことができました」(伊佐次アドバイザー)。

 IoT のデータはPLC からExcel に取り込んでおり、時系列でグラフ化することも可能。Excel を使ったのは、「専門人材のいない加工現場で使いこなすには、Excel レベルでないと難しい」(伊佐次アドバイザー)との判断からだという。
図2 大型モニタでNC 機5 台の稼働状況が把握可能

図2 大型モニタでNC 機5 台の稼働状況が把握可能

オペレータの負担が激減

 IoT 導入の効果は大きい。「機械が止まっていないか常に不安だった以前と違い、アラーム発生時はメールも届くので、オペレータの心理的な負担はずいぶん減ったと思います」(熊谷専務)。同社では常日頃から従業員同士で協力し合い、稼働率を下げない・工程設計を崩さないためにはどうしたらいいかを考えてきた。そのツールとしてIoT を活用することで内製率を上げ、かつ無駄な残業を削減することで収益性向上につなげた。

 営業面でも成果が出ている。現場の状況が可視化されていなかった以前と違い、急な仕事を受けられるか・受けられないかの判断がつきやすくなった。「お客様に『対応できます』と返事をしたにも関わらず、忙しさを理由に品質を下げてしまうことが一番良くない。信頼を得て次の受注につながるという意味で、良い循環が生まれています」(木下課長)。

 同社は今後、取引先分野の拡大や社員の多能工化、AI 技術の活用に力を入れる。先端技術を積極的に取り入れ、かつ社員1 人ひとりの力を最大限に活かすことで、会社をさらなる成長軌道に乗せる方針だ。

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