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機械技術 巻頭インタビュー「独自技術で光る日本の機械加工現場」

2026.09.29

情報共有によるスピードを活かすモノづくりで顧客に唯一の価値を提供する―テルミック

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㈱テルミック 代表取締役
田中秀範氏

Interviewer
オーエスジー㈱ 今泉英明

 高機能工作機械や特殊工具を活用した精密加工技術とは違う独自性で存在感を示す機械加工現場がある。各種産業機械や治工具の部品加工を手掛けるテルミック(愛知県刈谷市)はデジタル技術を活用する教育や営業の体制など、仕組みづくりに注力することで、生産性を高めてきた。近年は製造・物流拠点を空港に近い場所に置く事業戦略で素材の仕入れにかかる時間や製品納期を短縮し、顧客に付加価値を提供する。田中秀範社長に現在の取組み、今後の事業展開などを聞いた。
田中秀範代表取締役

田中秀範代表取締役

興味・意欲・収入の好循環

今泉
 御社の工場は、これまで私が見てきた機械部品加工業と違った雰囲気を感じました。

田中
 少量の機械部品加工と検査、梱包、配送がメイン事業なので、一見すると普通の機械部品加工業に見えると思います。他社と少し違うのは、角材や丸棒から自社内で切削や研削などをして形状をつくることが少なく、協力工場で荒加工を終えてある程度の形状になった素材を加工して、仕上げることです。それらの形状・寸法、表面の品質を、測定機を用いて検査したり、組立てが必要なものは組み立てたりして、梱包後、出荷します。検査や組立ての工程が多く、女性社員も多く活躍しており、一般的な機械加工業と少し違うかもしれません。また、社内のエントランスやオフィスのデザイン、椅子や机をカジュアルなものにしていることも一般的な機械部品加工業と違って見える理由かもしれませんね。

今泉
 ご自身と機械部品加工のかかわりは。

田中
 工業高校を卒業後、大手鉄鋼メーカーに入り、ステンレスの部品加工や生産管理の業務を担当しました。早く社会に出て、自立したいと考えており、何かをつくったりすることには興味があったので、実務を学べる工業高校に進学して、その後は就職する進路希望でした。

今泉
 早い時期に将来を考えたきっかけは。

田中
 父が製造業に勤めていたので、モノづくりや製造業を身近に感じていたような気がします。会社に入社して現場に配属されると高校での勉強や実習は本当に基礎的な内容だったと気づかされましたが、業務については理解できていましたし、上司や先輩にも面倒を見ていただきました。一方で働いているうちに現状のままでよいのかという思いをもつようになりました。社会の歯車になっていることにネガティブな感情が湧き上がってきたのです。

今泉
 若いと一時的にそういった感情をもつのかもしれませんね。

田中
 2年くらい勤めたあと、結局、退職しました。その後は音楽活動をしながら、自由な生活を送っていました。そんなとき、大手自動車部品メーカーに就職した高校時代の友人から、シャフト形状の部品の製作の手伝いを依頼されました。前職で旋盤の作業は経験していましたし、形状を聞くと十分に加工が可能でした。旋盤の都合をつけてもらって、2 時間くらい作業して製作した部品を納品すると6,000円くれました。「こんなにくれるの?」と思ってしまいました。時給3,000円です。当時の1990年ごろのアルバイトの時給が600円前後ですよ。時給換算すると破格の金額です。

 その後もたびたび手伝いの依頼があったので、加工業を始めることにしたのです。中古の旋盤を入手して、友人の会社で使用する製造設備の部品の製作も請け負いました。平日に部品の加工をして、休日にその部品の組付けに行く。自分が製作した部品が何に使われるのかがわかり、興味が深まり、意欲もさらに湧いてきました。

海外の協力会社を活用し、品質は維持する

今泉
 創業からしばらくは普通の金属部品加工業だったと思いますが現在の業態になるきっかけは。

田中
 依頼される内容の幅が広がっていったことです。受注する件数が増えて、自分1 人では対応しきれなくなり、従業員も増やしました。さらに旋盤で加工する丸物だけでなく、角物の注文も来るようになりました。知り合いのネットワークを使って、個人の加工業者を探してもらって加工の依頼もしました。さらに、部品を製作するだけでなく、ねじと一緒の納品や複数の部品を組み立てて納品する依頼も増えてきました。旋盤やフライス盤、マシニングセンタ(MC)など徐々に保有する工作機械を増やしていきましたが板金部品や樹脂部品の製作も頼まれるようになりました。

 取引先企業が広がり、事業が成長すると協力会社を活用する必要性が生じ、商流も変わってくるのです。取引先のニーズの変化に対応するためにはプラットフォーム型のビジネスを手掛けることが必要だと考えました。

今泉
 プラットフォーム型のビジネスとは。

田中
 顧客と仕入先である協力会社をつなぐということです。顧客はほしい部品の図面を当社に送れば、それが手に入る仕組みです。小さな物は精密加工が得意な加工業者に、大きな物はそのサイズに対応できる工作機械や設備を保有する加工業者に当社が発注する。商流を構成する要素である製品と人、情報、時間、お金といったあらゆるモノとコトの流れをスムーズにすることで停滞をなくします。他社より品質とコスト、納期に優れた製品を供給する秘訣です。商流をスムーズにするにはそのための仕組みを盤石にしなければいけません。そこを考えて工夫しました。
デジタルサイネージを工場内に設置し、売上げや作業の進捗状況をリアルタイムで可視化する(写真提供:テルミック)

デジタルサイネージを工場内に設置し、売上げや作業の進捗状況をリアルタイムで可視化する(写真提供:テルミック)

今泉
 どんな工夫ですか。

田中
 過去の受注実績や加工履歴など参照できる基幹システムを運用しています。受注の8〜9割は小ロットのオーダーメイド品ですが、過去の実績はすべて登録されているので、過去の履歴や納期、費用など顧客からの問合せに瞬時に回答できます。問合せに瞬時に反応することは顧客を逃さない大きなポイントです。一般的に見積もりや顧客からの問合せは機械加工や熱処理、仕上げなどの工程を経験して初めて対応できるようになりますが、当社はそうしなくてもこなせる仕組みにしているのです。

 極端な例を出せば、入社して1 週間の社員でも顧客からの問合せに対応できます。たとえば、材質や縦、横、高さ、直径、形状などを入力して検索すると関連した情報が出てくるのでそれをもとに対応すればよいのです。本当に新規の形状のものは10〜15%なので、そのときだけベテランの技術者が顧客と打合せすれば、残りの大半は仕組みでカバーできます。

 また、協力会社にも当社製のシステムやアプリを無償で提供し活用してもらっています。そうすれば協力会社も当社の仕様に合わせた情報を入力することになり、当社もその情報を蓄積して活用できます。

今泉
 顧客対応や協力会社との流れの工夫はわかりました。現場での工夫は。

田中
 自動化を進めています。自動化が目的ではなく、自動化することによる作業負荷の軽減や情報の共有、管理業務の削減が目的です。たとえば、工程間の搬送に協働ロボットや無人搬送用ロボットを活用しています。情報の共有は検査数や倉庫の空き具合をリアルタイムで表示するLED デジタルサイネージを取り入れました。また、切削工具を収納・管理するキャビネットも自動販売機型のデバイスを導入することで在庫の把握や発注業務、棚卸作業も簡略化しています。工作機械のオペレーションや検査など人の作業が必要な工程に人を配置して、そのほかの工程は人にさせない。高度技能や経験、知識がなくても、可能な限り素早く戦力にする仕組みを整えています。
工程間の搬送作業は協働ロボットや無人搬送用ロボットを活用する

工程間の搬送作業は協働ロボットや無人搬送用ロボットを活用する

切削工具を収納・管理する自動販売機型キャビネット

切削工具を収納・管理する自動販売機型キャビネット

30年続ければ成果は出る

今泉
 今後の目標は。

田中
 短期的な目標は拠点の増設です。空港の近くに拠点を構えたいと考えています。成田空港や関西国際空港の周辺です。現在、海外に各種機械加工の協力会社が150 社ほどあります。空港の近くに拠点を設けることができれば、海外の協力工場から仕入れた製品をすぐに追加工して検査や組立てを行い、顧客のもとへ出荷できる。幸い、当社にご依頼いただく製品数はどんどん増えています。だから、物流が重要なのです。あらゆることに関する速さと便利さは顧客にとって大きな価値です。加工技術だけでなく物流、人材といった総合的な最適化で事業をさらに成長させていきます。

今泉
 機械加工業の持続可能な経営のために必要なことをどのように考えますか。

田中
 1つ目は、「今できることをヒントに次の行動につなげること」だと思います。仕入先を活用するプラットフォーム型のビジネスへの転換も現状を分析して次の行動を考えて実行した成果だと思います。

 2つ目は1つ目に関連しますが、「素早く行動すること」です。素早く行動すれば失敗も含めて早期に経験を積むことにつながるため、非常に重要だと思います。私も会社・組織の運営側として、新しいことをすぐに導入した際に、社員と目的の共有やコミュニケーションが不足したことによる失敗も経験しました。しかし、素早く行動したことで、失敗の原因を検証して最適な仕組みにするために、社員と目的やその優位点を共有する時間をもつことができました。

 3つ目は「続けること」だと思います。機械加工業界に入って30年以上経過しました。30年経つと周囲の状況や評価が変わります。30年続けてみてください。30年続けようとすればそのために勉強して、よく考えて行動するはずです。多くの人は続けられないのです。続ければ成果は出せます。
たなか ひでのり/1968年、愛知県碧南市生まれ、58歳。工業高校卒業後、鉄鋼メーカーを経て、90年に個人事業主として機械加工を開始。97年に㈲テルミック設立。趣味は釣り。

いまいずみ ひであき/1957 年愛知県出身。1980 年大阪工業大学卒業後、オーエスジー㈱入社。エンドミルやドリルの設計、開発に長年携わる。特殊工具の打合せや使用状況確認のために国内外多数の切削加工現場を訪問した経験をもつ。著書に「目利きが教えるエンドミル使いこなしの基本」(日刊工業新聞社)。

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