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工場管理 連載「闘う!カイゼン戦士」

2026.10.30

「丁寧・しなやか」をモットーに全社一丸の改善活動を推進ー阿部製作所

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 配管支持金具を主力に手掛ける阿部製作所は、全社一丸となった改善活動に取り組み、製造現場から営業、管理部門が連携したモノづくりを推進している。5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を基本に継続的に改善を行える組織づくりに着手。5S点検や5S月次計画の策定などを通じて、1人ひとりが役割を認識し、自発的に取り組むボトムアップ型の活動へと発展してきた。生産計画や作業計画、その進捗を一目で認識できるボードの活用で、情報を共有し、各人が目標達成への意欲を高めることにも寄与しており、品質、納期の改善も大幅に進みつつある。従業員全員が参加する活動が企業体質の強靭化へと導いている。

配管支持金具を主力に展開

 阿部製作所の創業は1967 年、金属プレス加工業として発足した。その後、支持金具、鋼管・鋼材加工に進出し、プレス/ 板金をコア技術にウレタン、樹脂成形、転造へと加工領域を広げ、多品種少量から量産までの一貫生産体制を整える。

 主力製品の配管支持金具は住宅、商業施設、工場、倉庫などの各種建築物や設備機器に使用する配管を支持するための器具。防振・耐熱・帯電性など幅広く製品を提供。また、空調衛生、電気、土木工事における配管などの支持金具となる鋼材加工品や屋内消火栓配管、スプリンクラー配管などに使われるプレファブ加工管など金属加工の強みを活かした分野に進出し、顧客に密着したモノづくりで事業規模を拡大してきた。

 受注増から2007 年にはベトナムに現地子会社を設立。量産品の生産を手掛けるようになる一方、22 年には長岡市内に長岡北スマート工場を新設したほか、めっき加工の内製化に乗り出すなど国内外での安定生産に向けた体制強化を進めている。

デジタル化に向け5S に着手

 同社が改善活動に乗り出したのが2018 年。きっかけは阿部修靖社長の「うちもDX に乗り出してはどうか」の一言だった。「DX が話題になってきた時期で、当社は東京オリンピックなどの建設需要を受けて業績が伸びている半面、人手不足を背景に将来を見据えた自動化への取組みも必要との考えからでした」(阿部社長)。ところが、現場から返ってきたのは「まだとてもその段階ではありません」との予想外の反応だった。

 当時製造部長だった佐藤秀明取締役統括本部本部長は、「工場内は整理整頓とは程遠い状態で、デジタル化どころの話ではありませんでした。製造業の基本は5S だとの認識はあって以前からいろいろと試みてはいたのですが、旧態依然とした現場では定着は難しく、どうすれば生産性を上げられるかとずっと悩んでいました」というタイミングだった。

 佐藤部長は第1 歩として製造部門で5S を導入しようと検討してみた。しかし、受注は右肩上がりで現場からは「業績もよく、何の問題もないのになぜやらなきゃいけないんですか」という疑問の声もあがってきた。他社の取組みを勉強しようと足利5S などの見学にいく中で、1 人で進めるのはハードルが高く、コンサルタントの力を借りるしかないと判断。阿部社長と相談のうえ、中部産業連盟の指導を仰ぐことを決めた。
改善前

改善前

改善後

改善後

          改善例:治具の定位置化を図り、探す時間を半減
5S活動管理板 各部所にボードを設置し、活動計画、進捗 (阿部社長) 状況を全員で共有

5S活動管理板 各部所にボードを設置し、活動計画、進捗 (阿部社長) 状況を全員で共有

全員参加とボトムアップ

 5S 活動は各エリア推進委員を決め、キックオフ大会を開催。5S 計画作成、5S 活動管理板を設置し、整理・整頓・清掃の3S を中心に不用品処理、3 定(定位置・定品・定量)の徹底、全員清掃を実施。年間のエリア活動報告を行い5S の定着化を図っていった。本格始動するうえでこだわったのが全員参加だった。「1 部署だけでは他部署は『うちは関係ない』となります。意識のバラツキをなくし、全社一丸となるためには全員参加は不可欠でした」(阿部社長)

 活動スローガン「5S でみんなに広がるいいねの輪」を掲げ、製造、営業、管理の各部署で5S 活動が始まると予想以上の効果が表れてきた。各部署の不要品・スクラップが2t トラック5 台分発生、不要な書類は積み重ねると東京お台場のフジテレビ本社ビルに匹敵する123m にも及んだ。

 不要品の有価物は数百万円にもなり、廃棄物の処理代を引いた分は従業員に還元した。

 「事務用品でもボールペンを1 人で20 本も持つ人もいて手持ち基準を設けることで購入金額を17年度比で半分以下にすることにも成功しました」(佐藤部長)と従業員のムダに対する意識も徐々に変わってきた。

 不要品が整理された部署では整頓に取り組み、生産現場では工具台車や工具板を設置して使った工具をもとに戻す3 定を実施。倉庫は材料や製品の置場、置き方にこだわり入出庫作業を大幅に改善した。事務職場でも事務用品の姿置き、実務の進捗状況がわかる棚を設置するなど5S による改善が全社的に広まってきた。

 とはいえ、2 年目に入ると行き詰まりがでてきた。「立上げ当初は推進委員をこちらで決めて効果も出たのですが、やらされ感があり、停滞気味になってきました」(同)。そこで推進委員を部署からの推薦に変更し、任期2 年で交代する制度を導入した。「最初はトップダウンも必要ですが、ボトムアップでなければ継続はできず活動は定着しません。自主的に課題解決に取り組むことが大切です。その一環としてやる気のある若手を中心に部署ごとに推薦する方式に変えました。すでに3 期目でリーダー育成の登竜門的な位置づけとなっています」(阿部社長)

 以降はリーダーが中心になり5S 点検、5S 月次計画を作成し、1 人1 役の全員参加型の活動を展開。生産日程計画、作業計画、進度管理とも連動し、品質管理システムの改善などにも結びつけ24 年度の不良率は20 年比97%減とするなど著しい成果を上げている。
改善前

改善前

改善後

改善後

   改善事例:金型メンテナンスの整頓。道具の3定を行い、作業スペースを確保、作業手順もスムーズに
配管支持金具の製造工程。祖業のプレス技術を中心に金属の加工 領域を広げ、事業を伸ばしてきた

配管支持金具の製造工程。祖業のプレス技術を中心に金属の加工 領域を広げ、事業を伸ばしてきた

目標管理制度を導入24 年度はテーマの7 割を達成

 22 年からは新たに営業利益率を柱にした目標管理制度を導入した。目標達成に向けて在庫削減、不良削減、従業員の意識改革、管理監督者の管理・マネジメントスキル向上に取り組み始めた。「これまでも人事評価制度で数値目標は設定していましたが、収益管理という目標管理によって数字を達成するために部門、個人で行動目標を立て、1人ひとりが何をすべきかを考え、目標達成にこだわる組織にしていくことが目的です」(同)

 中産連が提唱するビジュアルマネジメント(VM)による見える方針・目標管理を実施し、24年度は目標テーマの7 割を達成した。部署ごとの目標や進捗状況をVM ボードに掲示し、情報共有を図りながら、コスト削減に向けて減価償却や外注費など数字でとらえる習慣がつき、従業員の意識、業務への対し方も変わってきた。

 たとえば重点テーマである内製化推進は、付加価値向上が目的であるが、取引先が人手不足で受託できなくなるといった事情もあり、喫緊の課題でもあった。会社全体の内製化目標を定め、各製造課が目標管理でターゲット管理を展開。さらに品質保証部や物流管理とも連携し、部品長尺接続金具、溶接接続金具、部品ねじ、ねじめっきなどの内製化を実施。24 年度は金額換算で数千万円の内製化を実現した。

 また、在庫削減も長年の課題だった。大ロット生産で余裕在庫を持つことが慣例で、生産指示方もバラツキがあった。生販管連携によって大ロット生産から小ロット多回生産計画に切り替え、製品保管用コンテナ箱を1,700 個以上整理し、倉庫スペースを確保。治具の調整レスなど段取り作業の短縮などで必要に応じた柔軟な生産への移行で、在庫を減らしつつ欠品率も大幅に低下させた。
収益管理ボード。月2回事業管理者が集まり、進捗状況を 確認する。管理者の経営意識とスキル向上も狙う

収益管理ボード。月2回事業管理者が集まり、進捗状況を 確認する。管理者の経営意識とスキル向上も狙う

デジタル化にも着手

 こうした取組みからコロナ禍やウクライナ情勢などの影響で低迷していた営業利益率は24 年度にオリンピック需要時の水準まで回復した。阿部社長は「本格始動から7 期目を迎えましたがまだ道半ばです。ただ、あのタイミングで改善活動に取り組んでいなければ今頃どうなっていたか」と活動による企業体質の改善は着実に進んできたと確信する。26 年度からさらに労働生産性を高めることに取り組む。また、デジタル化にも着手し、動画を使った作業標準の作成などを進め、DX への道筋を整えていく考えだ。

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