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2026.03.30

ヒューマノイドとフィジカルAI、 国内スタートアップが挑戦 モジュール型開発のO-ID、来年にも生産開始

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現実世界をAI(人工知能)が認識しながら自律的に動作するフィジカルAI と人型ロボットのヒューマノイドが脚光を浴びている。とりわけヒューマノイドの開発・実用化では中国、米国が先行、かつてホンダ「ASIMO」で一世を風靡した日本は後れをとっているものの、国内の大企業や研究機関、スタートアップで参入の動きが目立ってきた。

日本の自動車サプライヤーと連携 独自機構のヒューマノイドを国内で

25 年12 月の米ヒューマノイドサミットでピ ッチするO-ID のヤコブセンCEO

25 年12 月の米ヒューマノイドサミットでピ ッチするO-ID のヤコブセンCEO

 そうした中、ユニークなモジュール方式のヒューマノイド開発に取り組むスタートアップがO-ID(東京都千代田区)だ。2025 年5 月に設立され、登記上の親会社は米デラウェア州にあるが、事業全般は日本法人が担う。それどころか日本の製造業のサプライチェーンを活用することで、ヒューマノイドを国内で生産する方針を打ち出し、タマチ工業(同品川区)をはじめ、完成車メーカーおよび自動車サプライヤーなどと連携に向けた協議を加速させている。

 同社のロボットの特徴は、モジュール接続部に高い剛性を持たせながら、電力とデータを供給するケーブルを含めモジュール同士を簡単に接続・分離できるようにしたこと。複数の特許を出願中で、一部は特許取得済みだ。

 通常は数カ月かかるロボットの修理期間が、保守サービスの専門家に頼らずわずか数分で済み、工場などでの運用休止期間(ダウンタイム)を最小限に抑えられる利点があるという。さらに、モジュール方式であれば、二足歩行や車輪型など、ユーザー側の用途に応じた構成にカスタマイズしやすくなる。

 産業用途に応じて複数の接続・分離方式を用意し、特に最上位機種には「クイックリリースコネクター」機構を採用。これは、災害対応や捜索救助といった野外でのロボットの運用中に損傷した部位のモジュールに対し、工具を一切使わずボタン操作だけで素早く切り離せるようにするもの。安全性を考慮し、ロボット稼働時にはモジュールが分離できず、不用意に触れると停止する仕組みも取り入れる。

 一方で、ロボットが実世界で自律的にタスクを実行するための基盤モデルの自社開発も計画中だ。ただ自社製に固執することなく、「他社やAI ロボット協会(AIRoA)が開発するロボット基盤モデルも含め、ユーザー側で自由に選べるようにしたい」と最高技術責任者(CTO)のサイモン・ゴルムゾフ氏は話す。
O-ID のヤコブセンCEO(左)とゴルムゾフ CTO

O-ID のヤコブセンCEO(左)とゴルムゾフ CTO

「日本クオリティー」に着目

 そもそも同社は、ノルウェー出身で最高経営責任者(CEO)のスティアン・ヤコブセン氏と、オランダ出身のゴルムゾフ氏が留学先の早稲田大学で出会い、その後、共同創業した。ヤコブセン氏はノルウェー政府でサイバーセキュリティーの仕事に関わった経験があり、東京工業大学(現東京科学大学)との共同研究に参画。ゴルムゾフ氏はファナック・ベネルクスのルクセンブルク拠点を経て、早大発スタートアップの東京ロボティクス(東京都文京区)でヒューマノイド開発に携わった。

 実際、ゴルムゾフ氏が東京ロボティクスに採用された経緯が、「ヒューマノイドを開発したい一心から、関心のあるすべての日本企業に1000 通にも上る求職メールを送った」というのには驚かされた。ちなみに、同氏の早大の修士課程での指導教官で、人間共存型ロボット「TWENDY-ONE」の開発などで知られる菅野重樹教授がO-ID の顧問を務める。

 外国人の学生起業家だったため日本での会社設立が難しく、親会社を米国に設立する選択をした2 人だが、事業面では日本国内での開発と製造にこだわる。「日本製品のクオリティーは世界でも最高水準で、製造のサプライチェーンが国内に確立されている。それをロボットに活用すれば、100年近く前に日本で自動車産業への新規参入が相次いだのと同じようなことが、ヒューマノイド分野でも起こるだろう」

 ヤコブセン氏はこう強調し、「捜索救助活動を含め、ヒューマノイドを通して日本のさまざまな産業が直面する労働力不足の解消に貢献したい」と語る。2027 年には自社内での組立およびソフトウェアのインテグレーション作業を含めたヒューマノイドの量産に着手する計画だ。

すり合わせ技術、カイゼン力に活路

Refined robotics のニック・ハ フナーCEO(左)と鴻唯CTO

Refined robotics のニック・ハ フナーCEO(左)と鴻唯CTO

 東京都が実施する「グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業( 略称TIBCATAPULT)」。そのうち、モノづくりやハードウェアのスタートアップを支援する「Forge(フォージ)」のデモデイが2 月26 日に都内で開催され、自律型ロボットなどを手がけるEcoro(横浜市西区)、Xela robotics( 東京都新宿区)、Refinedrobotics(同渋谷区)、Guide robotics(同千代田区)、ハイボット(同品川区)の5 社が、独自技術や現在の開発状況、応用事例などを説明した。
Forge プログラムディレクターの 熊谷孝幸氏(ティーエスアイ社長)

Forge プログラムディレクターの 熊谷孝幸氏(ティーエスアイ社長)

 Forge のプログラムディレクターを務めるティーエスアイ(京都市中京区)の熊谷孝幸社長に話を聞くと、世界で参入や開発、投資に拍車がかかるヒューマノイドやフィジカルAI について「日本にも勝ち目がある」と見る。

 「実際にヒューマノイドをつくるための開発力や製造力を持つ国は少なく、日本が培ってきた製造力や、細かいすり合わせ技術が必要になる。ソフトウェア分野でも、ロボット基盤モデルを製造業などの現実世界につなぎ込むためのミドルレイヤーが絶対出てくるはずで、この部分はまさに日本が得意とするカイゼンの世界。ソフトウェアでもまだまだ活路がある」

(ライター:藤元 正)

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